100話 集合



☆前回までのあらすじ☆



水族館デートに来た学と歌弥。


ワクワクドキドキな展開をよそに、土門浩一郎が現れる。


水族館は浩一郎に乗っ取られ、2人は危機的状況。そんな中、こっそり後を付けていた珠李と十文字、それに舞桜が参戦し、学と歌弥を逃がす。


2人は歌弥の昔の家に隠れるが、そこで彼女の過去と学に近づいた目的が明かされた。学と歌弥の関係が進展したところで、インターホンが鳴る。


学が玄関に向かうと、そこには珠李、舞桜、十文字ではなく、浩一郎の仲間であるはずのイーシェが学の前に立ちふさがっていた。



☆本編☆




「お前ッ!」


 目の前に立ち塞がる大男を前にして、怒りの感情が身体の内側から爆発する。


「お前が冠城学だな」


「珠李を……! どうしたッ!」


 俺は感情のままに拳を向ける。男は少し驚いただけで、僕の手を軽々と止めた。その姿はまるで、腕に停まった蚊を潰すように雑作も無い仕草だった。


「――——ぁ」


 これが、この男と俺の力量だ。最初からやり合えるはずもなかった。


「そう慌てるなよ坊ちゃん。オレはアンタをぶちのめしに来たわけじゃねえ」


「それはどういう……」


 俺は彼の真意を汲み取ろうとしていると、見慣れたメイド服が男の後ろで見え隠れしていることに気付いた。


「あのぉ、そのぉ、学様…………」


「珠李!」


 男の後ろで出たり消えたりを繰り返す彼女を、思わず引き寄せて抱きしめた。


「ちょっ! 学様!」


「無事で良かった!」


「い、いたいですぅ」


「ごめん」


 彼女の柔らかい身体の感触を惜しみつつ、そっと離れる。 


「それで、これは一体どういう状況なんだよ。どうして敵が味方になっている?」


「敵の敵は味方ってヤツさ。よろしくな、坊ちゃん」


「……冠城学です」


「オーケー、ガク。オレはイーシェだ。よろしくな」


 イーシェは綺麗な白い歯を輝かせると、握手を求めてきた。俺は恐る恐る手を伸ばすと、イーシェから手を引っ張られ大きな手で腕を上下に振ることになった。


「さて、こんなところで突っ立てても変な目で見られそうだし、中に入れて貰えねえか」


「どうぞ」


 後ろで俺たちのやり取りを警戒しながら見ていた歌弥は、以外にもすんなりと玄関を通した。だが、彼が廊下を進むイーシェを怪訝そうな目で追っている。完璧に信じているというわけではなさそうだ。


「舞桜と十文字さんは?」


「あの2人は紆余曲折あって土門浩一郎の後を追っています」


「そういうことか。怪我はないんだな?」


「ええ、全員かすり傷程度です」


「逆にどういう身体してるんだよ」


「鍛えていますので」


 珠李は無表情で答えた。真面目に答えたのかボケたのかはあえて問わないことにする。


「そんじゃあ、少しお話でもしようか」


 イーシェは何もないリビングの床にドスンと座り込んだ。


「浩一郎だが、あの男は頭が冴えている馬鹿ってことを最初に伝えておこう」


「どういうことです?」


「ただの操り人形さ。操られてることもわかっていないがな」


「黒幕がいるってことですか」


 俺の問いにイーシェは深く頷いてから言葉を続ける。


「プロジェクトアダム、その元凶の1人。志水隆。アイツが今回の黒幕だ!……たぶん」





<あとがき>


 わ~

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