計画の軌道修正
89話 白衣の先輩(夜の部)
「到着いたしました、お嬢様方」
北川さんの華麗なドリフト停車で辿り着いたのは、生徒の気配が消え去った夜の頴川学園だった。
「京子先輩、どうしてこんなところに!?」
「説明、後で。翔和運ぶ」
「ちょっとお嬢様方、私が運ぶわ」
一番後ろの席でパソコンを操作していた栞が名乗りをあげた。
「データ担当さんは引っ込んでてください」
「言うわねぇ。でも、私に任せておきなさい」
栞はノートパソコンとぱたんと閉じると、翔和を軽々しく背中に担いだ。容姿からは想像がつかない光景に2人が唖然としていると「こう見えても、元バスケ選手なのよ、お嬢様方!」と言ってウインクを見せた。
校門前に駐在している警備員に京子が何かを伝えると、すんなり中へ通された。
京子が先導する形で学園の中を走っていく。
「どういう魔法で入れたわけ?」
「いまから会う人の権力」
「その権力者さんは翔和先輩をどうにかしてくれるんですか?」
「昔にも助けてもらった」
「前にも似たようなことがあったと?」
「そう。そのお陰で私救われた。同時に土門は失墜。翔和は1カ月意識不明」
「……京子先輩、翔和先輩の暗殺の背後に何があるってんですか!?」
「そう難しい話じゃない。けど、また後で――着いた」
階段を上がり、3人と1人の病人が辿り着いたのは理科室だった。中は電気も付いておらず、明らかに無人だった。
「誰もいませんけど」
「いる」
京子は黒板の横にある準備室の扉を開けた。しかし、その中も真っ暗で人がいるとは思えない。
「いた」
「幽霊でも見てます?」
「ここ」
京子は準備室の中に入ると、その場に座り込んで床に置いていた段ボールを剥がした。すると、そこには白衣を着た女子生徒がスヤスヤと寝ていた。
「むにゃ……? 誰だいこんな時間に」
「助けて欲しい。10年前と同じ方法で」
「ん……誰かと思いきや土門の御令嬢か。で、そこのスタイルいい子に背負われているのが例の子か。随分と大きくなったもんだ~」
「急いで!」
「そう慌てないでよ~。こっちは寝起きだよ~」
白衣の女子生徒はゆっくり、ふらふらと立ち上がる。
「京子ちゃん、この子何者?」
「先輩、申し訳ないんですけど、私も同じ疑問を浮かべてます」
「……彼女は3年生の結賀崎紡。いま翔和を救えるのは彼女だけ」
<あとがき>
気が付けば90話ほどになってます。100話ぐらいには区切りを付けたいなぁなんて。
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