魔王「くくく……、勇者一行の様子はどうだ?」 側近「カジノに入り浸たっています」

魔王「は? カジノ? あいつら勇者からギャンブラーに転職したの?」


側近「実際に見てもらった方が早いですね。今から映像魔法でお見せします」




勇者『テメェら! 今日こそ当てるぞ!!』


僧侶『でも勇者様、軍資金は大丈夫なんですか?』


武闘家『安心しな! 昨日の深夜俺と一緒に近くの街襲ったからな! たんまりあるぜ!』


魔法使い『ほっほっほ、外道じゃの〜。しかし、大丈夫かの? 人類を救うはずの勇者が人類を襲うとは、バレたら後が酷いぞ?』


勇者『問題ない! ちゃんと俺と武闘家に変装魔法をかけといたからな! しかも化けたのは魔王軍の四天王だ! 万が一姿を見られたとしても魔王軍の襲撃と勘違いしてるに違いないぜ!』


僧侶『ひど〜w さすが勇者様w』




側近「というわけです」


魔王「何あいつら、ギャンブル中毒?」


側近「そうです。ただ運が悪すぎてほとんどスカらしいです」


魔王「ってか何勝手に四天王に変装して街襲ってんの。魔王軍のイメージ最悪じゃん」


側近「奴は四天王の中でも最弱。なんら問題ありません」


魔王「あるわボケ!」


側近「まあ金は手に入るし、魔王軍に襲われた被害〜みたいな感じで、人類の士気も上げれますから一石二鳥なわけです。まぁどうせ戦争してる仲ですから」


魔王「いやワシは戦争に勝った後統治しやすいように、できる限り向こうの被害を出さないようにしてるんだけど。そのためにワシはこうして勇者のみを倒すために魔王城で待っているんだけど」


側近「さすが魔王様。それなら尚更効果は倍増ですね」


魔王「褒めてねぇだろ。てかなんであいつらは中毒になったの?」


側近「どうやら景品目当てみたいです。大目玉のまぐれメタルキングの剣とか、まぐれメタルキングの鎧とか。勇者の剣や鎧より何倍も強いみたいで」


魔王「ええ……、あれって確か国王から貰った伝説の装備じゃないの? あれワシ特攻で普通に強いんだけど」


側近「どうやら満足できなかったようで。既に商人に売り飛ばして軍資金にしたみたいです」


魔王「……なんか国王に同情するわ」


側近「まだまだ序の口ですよ。ほら続きを」




武闘家『クソっ!! まただ! なんで当たらねぇんだよ!!』


僧侶『あいつら絶対イカサマしてやがるわ! 罰あたれ!』


魔法使い『仕方ないのぉ〜、勇者どのいつもの頼むわ』


勇者『チッ、テメェらいくぞ! 自爆魔法!!』


チュドーン!!




魔王「なんか死んだんだけどあいつら」


側近「まだまだ続きがありますよ」




国王『おお勇者よ! 死んでしまうとは情けな……』


勇者『黙れジジィ。さっさと金よこせ』


国王『フゴッ! 金ならついこの前渡したばかりじゃろ!』


武闘家『冒険ってのは金のかかるもんなんだ! さっさと渡しやがれ!』


国王『もうないわ! ワシの私有地も財宝も城も全部売り払ったわ!』


魔法使い『カカカ! ワシは知っとるぞ、お主年金貰っとるじゃろ』


国王『お主……! あれはワシの生活費なんじゃ! 頼むそれだけは!』


僧侶『あらあら、それじゃあ国家予算から頂くしかありませんね国王陛下』


国王『ぐぬぬ……民の税金は……! わかった……、年金渡すからそれで勘弁してくれ!』


勇者『もちろん全額だろ? 老いぼれは未来ある若者のために死ねww』




魔王「……なんかもう見てられないんだけど。私財から払うとか名君すぎん?」


側近「どうやら勇者の親代わりとして小さい頃から育ててきたらしいです。一応家族はいたらしいですけど、人が良すぎて昔詐欺で破産しかけてて実の家族に愛想尽かされて離婚して……。今は行方知らずらしいです。この勇者を育てたのもたぶん寂しさを紛らわすためでしょう」


魔王「だとしても恩を倍の仇で返すか普通。てか国王の国って確か大陸で一番の大国だったっけ。どうギャンブルしたら私財全部溶かすことになんのよ」


側近「そりゃあ運も頭も悪すぎて凄いですよ。勇者はずっとスロットにつぎ込んで一回も当たってないですし。武闘家はルーレットで最高倍率にこだわる脳筋野郎で、こちらも全く当たらず。僧侶はそもそもルールを分かっていなくて、ひたすらカード引きまくって必然的に負けてますし。魔法使いに関しては丁半で常に外れを引いてて界隈でハズレ王って呼ばれてます」


魔王「まだスライムにやらせた方が儲かるぞ。コイツらやめなよ」


側近「冒険に集中してもらわないと魔王様の計画パーですもんね」


魔王「そうじゃそうじゃ。にしても親代わりに育てたのに金はたかるわ、勇者の使命は果たさんバカ息子に退化したのは同情するわ。娘があんな不良になっていたら……、感情移入しすぎて疲れたわ。もう寝る」


側近「あ! あの国王どうします? 年金全額取られたらどっかで野垂れ死ぬかと思われますけど」


魔王「……わかった、ワシが老後に入る予定だった高級老人ホームに招待してやれ」


側近「さすが魔王様。国王に劣らぬ名君ですなぁ」


魔王「うるせぇ」






ズバーーーーン!!!!!


魔王「ぐへぇ!? なんじゃなんじゃ!?」


勇者「ハッハッハ!! 貴様はもう終わりだ!!」


魔王「お主は……勇者!? なぜここに!?」


武闘家「この装備が見えねぇのか?」


魔王「それは……まぐれメタルキングの装備!? しかも全員!?」


魔法使い「カッカッカ! ちょいとズルをして手に入れたんじゃ!」


僧侶「鎧に兜に法衣に剣、爪、杖! 今の私たちは最強よ!」


魔王「おのれ……! 貴様らの所業を知ってるぞ! 世界を守るためにワシは貴様らを倒す!!」


勇者「やれるもんならやってみな!! くそジジイ!!!」


ドーーン!!!!!



魔王(痛みがない……ワシは一撃でやられたのか……、アレ?)


黒服「すみませんねぇ魔王さん。うちの客が迷惑かけてしまいまして」


武闘家「テメェは……!」


僧侶「カジノの支配人!?」


魔王「と側近!?」


側近「おはようございます魔王様」


黒服「こちらの方から連絡がありましてねぇ。……お客さんイカサマしたでしょう?」


魔法使い「ふぁ!? お主なぜそれを!?」


黒服「【リセマラ】はうちの店ではご法度だって最初に伝えましたよねぇ? あれやられると商売上がったりなんですわ」


勇者「テメェ……! 今まで散々ぼったくってきたじゃねぇか! それにこの魔王は人類の敵だぞ!!」


黒服「ワシら商売人の敵はアンタらなんですわこのペテン師が!」


ドォーーーーン!!!!!





黒服「すみませんねぇ夜分遅くに。これ迷惑料です」


魔王「はあどうも。てか側近逃げたのかテメェ」


側近「いやだなぁ魔王様。こちらの支配人に連絡しにいっただけですよ」


黒服「ほんと助かりました。私の親父も助けていただいて」


魔王「へ?」


黒服「ではこれで。転移魔法!」


ピコーン


魔王「側近、あの人って……」


側近「……私も今知りましたよ。世の中意外と狭いんですね。」


「……」


側近「……あの黒服に勇者連れ去られましたけど、どうします? 一応勇者はここまで来ましたけど」


魔王「戦争は中止にしよう。そもそもその勇者は持ってかれたし。それにいくらギャンブル中毒とはいえ、最強装備を揃えた勇者たちを片手で倒したあの男には勝てぬ」


側近「ですよね〜」


ー完ー

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勇者魔王小話 @hoshineko777

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