7.謎の怪盗
食事を終えた後、小さなテントの中、シンバは髪をアンバーにして、仮面を付ける。
キツネの尻尾のアクセサリーも腰に付け、フォックステイルになる。
テントの外でリブレを撫でながら、
「怪盗フルムーン? 聞いた事ねぇな」
ツナが言う。
「フルムーン・・・・・・満月の他に何か意味があるのかな?」
シカが言う。
「怪盗ってくらいだ、フォックステイルみたいに、見た者が見たままに付けた仇名かも」
カモメが言う。
「真ん丸で美味しそうなのかなぁ」
パンダが言う。それはないだろと、ツナが突っ込んだ後、
「ラビの狂言じゃねぇのか?」
そう言った。
「狂言っぽくはなかったけど、嘘かもしれない。でも真実かもしれない。何を考えてるかわからない女だから。兎に角、ラビが言うには王家の宝を狙う怪盗だって――」
仮面がいまいちだなぁと、付け直しながら、外にいるメンバーに受け答えするシンバ。そしてブルーのコンタクトを入れて、外に出ると、ツナは一瞬、驚いた表情をした。思っていた以上に、フックスなのだろう。目の前に、フックスが現れたようで、ツナは胸が熱くなり、少し俯いた後、直ぐに顔を上げて、微笑みながら、
「・・・・・・やぁ、フックス」
そう言った。シンバは笑いながら、やぁと、手をあげてみる。
「夜の警備で騎士達が配置するポイントを記しといた。1階2階3階と上がるにつれ、警備は薄くなるが、どの階も見つからずに、突破できる道はない。騎士が余所見をしてるか、居眠りでもしててくれるのを願い、または気絶させると言う手段で行くならばと言う意味での、なるべく騎士に会わないで済むルートってのを、線で引いてある」
ツナはそう言いながら、適当に描いた城の見取り図の紙切れを渡す。
シンバはソレを見ながら、確かに騎士達の配置が半端ないと、
「見つからないって無理そうだ」
そう呟く。ツナは頷き、
「とりあえず、ソレは緊急の時のルートとして頭に入れといて、警備のない庭から行けよ。塀を登るのが一番いい。庭にライトはないから真っ暗だが、絶対に花を踏むな、柔らかい土に足跡を残すな。置き石の上を飛びながら進むしかない。真っ暗な夜の庭で、それができるのは、庭師のお前だけ」
そう言った。庭師の手伝いの時は、長靴を履くから、フォックステイルの時に履いている靴とは足跡が違ってくるけど、サイズの事も考えると、やっぱり残せないなと、
「折角ボクが丁寧に植えた可愛い花を踏んだりするもんか」
と、シンバは、笑いながら言う。
カモメは無線装置を何度も確かめ、シンバにイヤフォンを渡し、いつもの如く、シンバの服にマイクを付ける。
シンバに起こる出来事は、マイクから聴こえる音で、みんなにわかり、みんなの声は、イヤフォンから聴こえる。勿論、みんなイヤフォンもマイクも付けるので、みんなに聴こえ、みんなと繋がっている。
トラブルが起きれば、どう対処するかは、わからないが、とりあえず何か起きた事は、みんなに伝わる。
「俺は正面門で、パンダは裏門で、シカは東の塀の向こうで待機してる。カモメは、マイク? イヤフォン? その調子が悪いから、残るって――」
そう言ったツナに、カモメが、
「無線は問題なく使えるんだけど、只、時々、音が遮られるような強い雑音が流れるのが気になってね。他に電波はない筈だし、マイクもイヤフォンも壊れてる感じはないんだよねぇ。だとしたら、発信機かなって――」
そう言ったカモメを見ながら、ツナは、イヤフォンを耳に入れて、
「すげぇな、シンバに何かあれば、俺達にも聞こえるって訳だ」
と、カモメに感心する。
「距離にも寄るけどね。まぁ、城のてっぺんに、電波のアンテナこっそり取り付けたから、あの高さからなら、ジェイドエリア全般までの距離なら、無線は繋がってる筈。只、ホント、妙な雑音が、凄く気になる。こんな事、今までなかったから。だから、オイラは残って、テントで、発信機の調子をみてるよ。みんなは、気をつけて行動してね。シンバは、姫に夜這いなんてしないようにね? 無線の調子がおかしくても、ちゃんと聴こえてるからね、姫を襲ったら、一発でわかちゃうからね」
そう言いながら、カモメは、テントの中に入って行くから、シンバは、何言ってんだよ!と、怒るが、既にカモメはテントの中。
「なんだ、姫ってブスだって聞いたけど、その慌てようはどういう意味だ?」
ツナがそう言うと、シンバは慌ててないと首を振るが、
「ブスじゃないらしい。超キュートだって、既にリーダーがチェック済み」
と、シカが言い出し、シンバは、そんなんじゃないと更に慌てる感じが、挙動不審。
「超キュート? オラも見たい見たい! ラビよりキュート!?」
あの女のどこがキュート!?と、シンバとツナは、パンダを睨む。
「僕もまだ姫を拝めてないんだよね、王に全く似てないって噂は聞いたけど」
シカがそう言って、どうなの?と、シンバを見るが、シンバは首を傾げる。
「王を見てないからわからないけど・・・・・・普通に話しやすくて、気さくで、笑顔が凄く可愛い子だった。髪はブロンドで、長くはない。この辺くらい?」
と、自分の頬辺りを指差し、次に、
「目は優しい色だったな、そう、ライトグリーン」
と、ネイン姫を思い出しながら言う。
「ティアラもメイクもしてなくて、最初に会った時は普通にメイドが着てるような型のクリーム色のワンピースを着てて、2度目に会った時は、やっぱりシンプルな型のチョコ色のワンピースを着てた。派手さは何もなくて、ナチュラルで、王族のオーラもない・・・・・・でもホント笑った顔は目が細くなって、えくぼが出て、急に凄く可愛くなる。不思議だけど、どこかで会った事あるような気にさせられるくらい、親しみ易い子だよ・・・・・・。なんていうか、あんまり笑顔が可愛いからさぁ、ずっと笑っててほしくなって、面白い事、言いたくなるって言うか・・・・・・でも、彼女の話がもっと聞きたくて――」
と、そこまで話し、自分にハッとして、話がもっと聞きたいってなんだよと、そうじゃなくて、もっと言い方があるだろと思いながら、ツナとシカとパンダを見ると、3人はニヤニヤしてるから、何だよ!?と、怒った顔になる。
「なんとかしてあげたいけど、初恋は実らないって言うしねぇ」
と、シカ。
「オラに、黄色い花畑の絵をポストカードに描かせて、何のメッセージを残すのかなぁって思ったけど、黄色じゃなくて、赤とかピンクが良かったんじゃないの?」
と、パンダ。
「シンバ、俺は親友が泣くのを見たくない。諦めろ。こういうのは早い方がいい」
と、ツナ。
「何の話!?」
イラッとして怒鳴るシンバに、
「身分違いの恋は無理だって話だ。あちら様は大国の姫、こっちは最近、ちょっと有名になっただけの身元不明の怪盗。存在するかもわからない」
ツナが笑いながら言う。
「恋!? 何言ってんだよ、そんなんじゃない!」
そう言ったシンバに、パンダがポストカードを見せ、
「じゃぁ、これはどう説明するのかなぁ?」
と、ニヤニヤ。
「・・・・・・姫はボク等の同志なんだよ」
シンバがそう言うが、3人はボク等?と、言い訳してるんだなと、ニヤっけっぱなし。その表情にイライラするシンバ。
「ちゃんと聞けよ! フォックステイルが姫にメッセージを残してんだよ!」
「だからシンバが残すんでしょ?」
パンダがそう言って、ポストカードをシカに渡して見せる。
「流石パンダ。まるで有名な絵画そのもの」
と、シカがそう言った時、カモメが、テントの中から、手を出して、
「ちょっと、誰か、動線持っててほしいんだけど、手伝って」
そう言うので、シカは、ポストカードを、ツナに渡して、カモメの手伝いに、テントの中に入っていく。ツナは、ポストカードを見ながら、
「でもなんで黄色い花畑? ロマンス的な要素はないだろ。パンダの言う通り、せめて赤とかピンクの花にしたらどうだ? 俺でさえ、それくらいわかる」
と――。
「うん、しかもね、実は2枚描いたんだよ。黄色の花畑と、黄色の花畑の中に一本の白い花の絵。ていうか、なんで白い花? やっぱり赤とかピンクにするべきだよ」
と、パンダの意見に、だよなと、ツナは頷く。
「だから!! 黄色い花は平和を意味する。黄色い花が沢山集まれば、世界の平和を意味する。ボクじゃない、姫はフックスからメッセージをもらってるんだ」
そう言ったシンバに、ツナもパンダも、フックスから?と、真顔になる。
「フックスは、姫の部屋にあるガラスのミリアム様の置き物に奇跡を起こしてたんだ。でも、ボク達は、姫の部屋にミリアム様がいるなんて、知らなかったし、フックスが、ジェイドで、奇跡を起こしてる事も知らなかったから、もうずっと奇跡は起こってないんだ。姫は、ずっと奇跡が起きてないから、フックスに、見放されたと思ってる。フックスはね、姫に願ってるんだ。どうかジェイドの大きな力で、世界を平和へと導いてほしいと。そして姫は、それに応えようと頑張ってる。全く王に相手にされてないけど、奇跡が起こらなくなってからも、1人で頑張ってたんだ――」
そうだったのかと、ツナもパンダも、黙り込んだ。
「フックスは、姫にポストカードを残してるんだ。だから、ボクも、フックスと同じ黄色の花畑のポストカードで、奇跡を起こして来れなかったけど、願いは変わってないって、姫にメッセージを残したいだけ。願いは変わらずだと、そう伝えたいだけだよ。白い花のカードは、約束を意味する。これからも見放さないと、約束するって、そう伝えたい。でも、どっちのカードを置いて来るかは、まだ迷ってる」
それは両方のカードを置いて来るべきだと、パンダ。
フックスのカードが黄色の花畑なら、シンバは、白い花のカードだけを置いてくればいいだろと、ツナ。
2人意見が分かれ、2人が言い合いを始める。だが、シンバは、そんな2人を無視して、話し続ける。
「後、ボクが考えてる事なんだけど、ボク達が頂く船を、姫に渡したいと思っている。ジェイドエリアの港町に現れた大きな無人の船を世界中の貧しい国への資金にしてほしいって。多分、姫の意見は聞き入れられないと思う。船はジェイドで回収され、ジェイドへ金が戻るだけ。でも姫の力を信じたい。フックスがなんであの姫に、自分の意思を託したか、姫と話をしたボクにはわかるから――」
船を渡す事には、2人は直ぐに頷き、そして、ツナが、
「でも何故、その話を今するんだ? 今でなくても話す機会はあったろう?」
そう言って、シンバは、そうだなと頷きながら、首を傾げ、
「なんでかな、でも今が話す機会だったような・・・・・・」
小さい声でそう言うから、ツナはハッと笑い、
「実は、俺達に言いたくなかったんじゃないのか? 姫とフックスと自分だけの秘密にしようとしたんだろ? 姫が好きだから」
からかうように、そう言うから、違うと、シンバは、首を振る。
「確かに! 眠ってる姫の部屋で、姫のスカイピースを手に入れたら、ポストカードを置いてくるだけだもんな、別にオラ達に話さなくても、シンバと姫の秘密にできるよね。だから話さなかったんだ?」
と、パンダが言うから、
「だから違うって! ちゃんと話そうとは思ってたよ」
と、シンバが、そう言った時、カモメの手伝いが終わったのか、テントから出てきたシカが、
「あのさ、姫に恋をするのはいいけど、盲目になってない? 話し、全部は聴こえなかったけど、シンバくんは、フックスがなんであの姫に、自分の意思を託したか、わかるって言ってたよね?」
そう言って、コクンと頷くシンバに、
「どうしてわかるの? ジェイドの姫は、他の大国の姫より、何か特別? 僕はそうは思わないけど?」
シカがそう言って、ツナもパンダも、シンバをからかうのをやめて、シンバが話し出すのを待つ。シンバは、みんなを見回し、
「うん、特別だよ」
と、
「別に盲目になってない。それは、直ぐに証明されるよ。キミ達が、ここで滞在してる間に、姫と話す機会があれば、キミ達も、きっとわかる。彼女は、特別だ。だから、フックスは、彼女に会いに行ったんだ」
そう言った。そして、
「ボクやツナは、偶然、フックスと会って、それを奇跡だと思ってる。でも、彼女は違う。彼女は、偶然でも、奇跡でもない。フックス自身が彼女に会いに行ったんだよ。そして、願いを彼女に託してる。ボク等とは違う。彼女はフックスに選ばれた特別な人で、ボク等と同じ、世界を変えようと、頑張ってる同志なんだよ」
と、彼女は、フォックステイルの精神を持った王族なんだと、それは、とことん表も裏も、光属性なんだと、シンバは思う。きっと、ツナも、カモメも、パンダも、シカも、彼女を知れば、光を感じて、彼女を、同志だと思うだろうと――。
シカは、納得したのか、しないのか、小さな溜息を吐くと、そろそろフォックステイルが現れる時刻だねと――。
さぁ、夜も深まり、子供達は深い深い夢の中へ彷徨う時間。
静かな闇が全てを覆うと、空で瞬く小さな光だけが頼り。
時刻は今日と明日の間辺り。
すると怪盗の出番。
月が雲に見え隠れし、怪しい雰囲気を漂わす。
こんな夜は、気が付けば、何か盗まれてますよと、ご用心して下さいなと、軽快に独り言を呟きながら、塀を飛び越え、庭から入り込んで、城の外壁をカモメの発明したワイヤーで、ゆっくり登って行くフォックステイル。
3階のバルコニーで、一旦、休憩。
天辺まで、まだ遠いと、見上げながら、ワイヤーを更に上へ繋げて、強く引っ張って安全性を確認すると、またゆっくりと外壁を登って行く。
高くなるにつれて風が強くなり、ちょっとだけ下を見てみる。だが、暗くて何も見えないのが救い。こういう場合、下を見ると、ちょっとしたパニックを起こす。
やっと5階のバルコニーに着くと、フォックステイルはワイヤーを巻いてポケットに仕舞う。
天辺は、この上の6階になるが、6階にバルコニーはなく、窓の鍵を閉めてるだろうと、フォックステイルは5階のフロアを通って、6階へ行き、扉の鍵を針金で開けて、姫の部屋に侵入しようと考えていた。
下の階に比べると、6階は手薄だが、やはり騎士は配置されてるので、フォックステイルはコソコソと壁にへばりつくようにして進む。
「ラビさんが!?」
その大きな声にビクッとして、直ぐに柱の影に隠れて、声のする方を見ると、騎士が2人、無駄話をしている。
「声がデカイ! 静かにしろよ! また隊長に怒られるぞ!」
「すまん。ラビさんの大ファンだったから」
「俺もだよ、物凄く残念だ」
――ラビの事を言っているようだが、何が残念なんだ?
――あの女の本性を知って残念って事だったら納得してやる。
「あんな美人、そうはいない」
「確かに。ラビさんが来てから、仕事も楽しかった」
「あぁ、偶然、ローカで擦れ違ったり、お疲れ様とか声をかけてくれるだけで」
「そう! ハッピーだったよな!」
「それが辞めちゃったなんて」
――辞めた!? ラビが!?
「なんで辞めたんだろう、急だったみたいだ」
「王も残念がってた」
「そりゃそうだろう、あんな美しい教育係、もう二度と現れないぞ」
「もうすぐパーティーも控えてるのに、姫の教育係どうするんだろう」
「ラビさん、まだ部屋にいるのかな? 辞表を出したのは、夕方くらいだって聞いた」
「そうだな、荷物でもまとめてるかも」
「会いに行きたいなぁ・・・・・・仕事さぼっちゃうか」
「やめとけ、所詮、相手にゃされねぇよ。あの手の高嶺の花は遠くから眺めて妄想するのがいい。想像の中じゃ恋人にも奴隷にもできるからな、現実は名前も知られちゃいねぇ」
――夕方くらいに辞表をを出した?
――ボクがラビのスカイピースを奪って直ぐだ。
――なんで?
――どういうつもりだ? ラビ?
――まさか!? ボクにスカイピースを奪われ、強行突破に出た!?
フォックステイルは、ネイン姫が身につけているスカイピースが奪われたのではないかと焦る。
ラビの部屋だった場所は、この5階。
ラビの部屋に行くか、このまま姫の部屋に向かうか。
ラビの部屋に行った所で、もう既に蛻の殻かもと、姫の部屋に急ぐ事にする。
騎士達の視界に入りながらも、振り向いたら、そこには誰もいないと言うパターンでうまく駆け抜けていくフォックステイル。
飾り物の鎧の陰に、通路の脇に、騎士の真後ろに、そして天井にぶら下がって、騎士達にあれ?と首を傾げられながらも、只の気のせいに思わせ、何も気付かれないように進む。
6階、姫の部屋の前、フォックステイルは周囲を気にしながら、鍵穴に針金を差し込む。
ちょっと複雑な鍵だなと、暫く苦戦した後、カチャンッと鍵が開く音。
フォックステイルはまた周囲を確認すると、ソッと音を出さずにドアを開け、音もなく中に滑るように入ると、音が出ないようにドアを閉める。
シンとした暗い部屋と甘いニオイが思考を惑わせる。
「ヤバイ」
小さな声で呟くフォックステイルの声をマイクが拾い、
〝――ヤバイ?〟
聞き返したのはツナ。
「女の子の部屋だ」
囁くように言うフォックステイルに、
〝当たり前だよ、姫は女の子だ〟
と、今更、何言ってるんだとシカが返す。
「緊張する」
〝ラビの部屋に入った時はどうだったんだよ?〟
と、カモメが呆れたように言う。
「あそこは殆ど用意されてる家具ばかりで私物も余りなかったし」
〝ラビだって着替えはしてたんだ、パンツくらいあったんじゃないの?〟
と、パンダが言うが、笑えないとフォックステイルは無言。
とりあえずスカイピースを確認しようと、プリンセスベッドへと近付く。
天井から落ちたレースのカーテンで包まれているようなベッドに、ゴクリと唾を飲み、その音もマイクが拾って、
〝リーダー、本気で夜這いしないでね? オイラが言ったのは冗談だから〟
と、カモメ。
〝一応僕からのアドバイス。初体験はロマンチックにした方がいいよ。女がそう望んでるからって事じゃなく、何気に男もそれを望む。じゃないと後から僕みたいに後悔する〟
と、シカ。
〝その前に強姦だと教えてやれ〟
と、ツナ。
〝リーダーが犯罪者になったら、オラ達も犯罪者になっちゃうんじゃない!?〟
と、パンダに、〝充分、フォックステイルも犯罪だ〟と、突っ込む3人。
「ウルサイよ!!!!」
小さな声で、フォックステイルは4人に怒鳴る。
「緊張してるって言ってるだろ、少しは静かにしてろ!」
〝緊張をほぐしてやろうとしてるオラ達の気持ちを察してはくれないの?〟
それはパンダだけで、後の3人は本気で言ってたと思うが?と、フォックステイルは思う。
フォックステイルはレースのカーテンにソッと手を伸ばす。
ふと、ベッド脇にあるテーブルの上に飾られた写真立てが目に入る。
黄色い花畑のポストカード。
この部屋にフックスも来たんだなと、少し周囲を見回した後、目を閉じて、落ち着けと自分に言い聞かし、更に、〝ボクはフォックステイルのフックス〟と繰り返す。
目を開けた時、落ち着きを取り戻し、レースのカーテンを開けていた。
そこにスヤスヤと眠るネイン姫。
横向きになっていて、モフモフの何かを抱えているので、首が見えない。
なんだ、そのモフモフはと、そっと布団を動かして見ると、キツネのヌイグルミの、大きな尻尾だ。
大きなモフモフの尻尾を抱き締めて、スヤスヤ寝ているネイン姫に、
「かわいい」
思わず、口吐いてしまい、
〝おい!?〟
と、4人の怒った声が、イヤフォンから聴こえ、
「違う違う違う違う」
と、慌てて言うが、何が違うんだとか、いい加減にしろ!とか、本気で夜這いする気じゃないだろうな!?とか、イヤフォンから聴こえて来るから、
「ヌイグルミだよ!! 可愛いヌイグルミを見て言ったんだ!!」
そう言い返すが、それは、本当の事であって、嘘でもあるなと、シンバは自分に苦笑い。とりあえず、ネックレスを確認しないとだなと、もっと覗き込もうと、一歩、近付いて、足を踏み出した瞬間――・・・・・・
「わぁ!!!!?」
フォックステイルのその悲鳴に、
〝どうした!?〟
と、イヤフォンから4人の声。
そして、そのフォックステイルの声に、勿論、ネイン姫も目を覚まし、目を擦りながら、ムクッと起き上がり、そこにいるフォックステイルを見る。
「やぁ」
と、笑顔で言ってみるフォックステイル。
「・・・・・・」
「こ、これは何の罠かなぁ?」
足首を縄で絞められて、逆さ吊りになったフォックステイルが聞く。
「・・・・・・ミリアム様の奇跡が起きなくなった時から、キツネがいつ来てもいいように、ずっと罠を仕掛けておいたの」
と、ニッコリ笑って言うネイン姫に、それは御大層にどうもとフォックステイル。
ネイン姫は、逆さになったフォックステイルをジーッと見つめ、フォックステイルもネイン姫の首元を確認する為、ジーッとお互いを見合い、フォックステイルは安堵の溜息。
――良かった、ちゃんと姫が首からしてるし、ホンモノだ。
「ねぇ、アナタ誰?」
「誰って?」
「私が罠にかかるのを待ってたのはフォックステイル。魔法使いの怪盗さんなの。アナタは誰?」
「・・・・・・フォックステイル」
「嘘」
「どうして嘘だと?」
「だって、アナタは私と同じくらい若く見える。私が彼に会った時、やっぱり若かった。薄暗かったけど、若かったわ。あれから月日は流れて、私は大人になった。なら、アナタも――」
「それより解いてくれないかな? ボクはいつまで逆さ吊り?」
「アナタの正体がわかるまでよ」
と、ネイン姫はベッドを抜け出して、スタンドの灯りを点けようとして、
「点けないで」
そう言われ、振り向いた。だが、その一瞬の出来事で、そこに罠にかかったキツネがいなくなっている。逆さ吊りになっていたキツネが姿を消して、まるで化かされた気分。解かれた縄だけが床にあり、ネイン姫はその縄を拾おうとした時、
「灯りを点けないでくれてありがとう、心優しき姫に感謝」
そう言われ、振り向くと、フォックステイルが立っている。
「・・・・・・嘘。どうやって罠を抜け出せたの!?」
さぁ?と、フォックステイルは首を傾げ、
「もう子供じゃないけど、それでもキミが王に意見するのは難しいかもしれない。でもキミが頑張る限り、ミリアム様の奇跡の魔法は続く。素敵な世界になるよう、キミが、踏み出してくれた事を、ちゃんと知ってるから――」
と、出窓に置いてあるガラスのミリアム様の置き物を指差した。
そこには光る金貨――。
そして、フォックステルが述べた台詞は、黄色い花畑のポストカードに書かれている、あの時のフォックステイルからのメッセージが、今のフォックステイルからのメッセージになったもの――。
「本当にフォックステイルなの?」
そう言って、ネイン姫はフォックステイルを見つめる。
「あの時の魔法使いさんなの? 魔法使いさんだから、年もとらないの?」
そう問うネイン姫に、フォックステイルは無垢だなぁと微笑む。
「姫、もうすぐパーティーがあるよね」
「・・・・・・私のお見合いなの」
「そのパーティーが終わったら、ジェイドの港町に、一艘の無人船が現れる」
「船?」
「その船をキミに託したい」
「・・・・・・私に?」
「貧しい国への資金に」
そう言ったフォックステイルから目を逸らし、姫は俯いた。
「ごめんなさい、アナタとそう約束して、あれから長い月日が流れたのに、現状は何も変わってなくて、私は役立たずで・・・・・・」
「いや、そうでもない」
「そうでもない?」
顔を上げる姫に、フォックステイルは、ニッコリ笑う。
「貧しい国々へ態々、出向いてくれたりしたみたいだね」
「どうして知ってるの?」
それは庭師のバイト中に姫から聞いた話でもあったが、ツナが、地下で見た書物の中で、何枚かを写真を撮った。その何枚かの写真に写っていた内容は、姫が遠くの国に出向いた事があると言う記録だった。
ツナはろくなものはなかったと言っていたが、念の為、一通り、目を通すと、ネイン姫の名で、遥々遠い国での活動内容が記されていた。
それはボランティアとも言える活動で、ネイン姫の無償の慈悲深い行いは、多くの人から感謝の言葉があったとも記されていた。
「キミこそ、どうして? 奇跡の金貨を支援として使えばいいだけなのに、態々、貧しい国へ行って、見て回るだけじゃなく、活動までしてる。それって姫という立場で、やる事じゃない」
「知りたかったから。貧しい国では民達がどういう風に暮らしてるのか。自分の目で確かめて、感じて、それでリアルなものを父に伝えたかった。そうすれば、父も、もっと考えてくれると思ったから・・・・・・でも伝わらなかった――」
「伝わったよ」
「え?」
「多くの貧しい民達はキミを知ってる。キミの頑張りは、皆が支持してくれる筈。多くの裕福な国の民達にも声をかけるんだ。こんな賊時代、誰がいつ全てを奪われるか、わからない。だけど、こうして手を差し伸べる人もいるから、皆で支え合って生きて行く事で、平和への大きな一歩を踏み出せるんだと、人々に伝えるんだ。他の国の王にも、聞いてもらえるようにするといい。王族のキミなら、それができる!」
「待って、無理よ、自分の父親にも聞いてもらえないのに、他の国の王が、私の話なんて聞いてくれる訳ないわ。それに、そんな事したら、父も兄も、凄く怒ると思うし、私には王族としてのオーラもないし、誰も私を支持しないと思うわ・・・・・・」
「いらないんだよ、民達に王族としてのオーラなんて! キミをトップに持ち上げて、何かを蹴落として、ピラミッドみたいな縦の関係をつくりたい訳じゃない。キミと、同等に同じ目線で、真っ直ぐに伸びる光みたいな横の関係をつくれるのは、キミしかいない。世界中、探しても、キミみたいな王族らしくない王族はいないよ。キミこそが、本当に、この世界を変えれるキーパーソンなんだから!!」
「キーパーソン?」
「キミにしかできないから。王族なのに、キミになら、民は心を開く。キミだから多くの支持を得られる。だからキミには多くの味方がいる」
「味方?」
「民達はみんなキミの味方になる」
「ブスで取り得もないと言われてるのに?」
「それだけ民に近い存在。ある意味、褒め言葉だ」
そう言ったフォックステイルに、ネイン姫はクスクス笑い、
「ポジティブなのね」
と、冗談っぽくなってしまった雰囲気に、
「そうだな、民達が味方だと言っても信じられないなら、ボクがキミの味方だ」
と、フォックステイルは一枚のポストカードを取り出した。瞬間、イヤフォンから、変な雑音がして、音が途切れたが、それでも微かに、風のような音はしたので、完全に切れた訳じゃないと、シンバは、気にせずに、フォックステイルを続ける。
パンダが描いた、その黄色の花畑のポストカードを、シンバはネイン姫に見せ、
「知ってる? 黄色の花は平和を意味する。黄色い花が一杯集まると世界の平和を意味する。じゃあ、白い花は?」
と、ポストカードに手を翳し、その手をどけると、黄色い花畑の中に一本だけ白い花が現れた。ネイン姫は目を丸くし、ポストカードをジッと見ているので、そのポストカードを差し出すと、受け取った後も、ジッと見つめている。
「白い花は約束と言う意味。約束しよう、ボクはキミの味方だ。何があっても――」
今、ネイン姫が顔を上げ、フォックステイルを見つめ、本当?と囁く。頷くフォックステイルに、ネイン姫も微笑み返し、
「私もポジティブに考えてる事があるの。お見合いの事」
と、話し出した。
「お見合いの話が出た時、凄く嫌だった。知りもしない人と結婚して、ここを離れて、愛せるかもわからない人に付いて行き、共に一生を過ごす契約をする。それを望む父に、私はジェイドでは必要のない厄介者なんだと悟ったわ。父に反抗ばかりして、貧しい国への資金も無理に押し通して来たけど、それも私が結婚してしまえば終わり。そう思ってたけど、前向きに考えれば、もっとアナタとの約束を守れる結果になるかもって」
「――どういう事?」
「見合い相手はジェイドと交友関係を結びたいだけの国が集まってると思うの。でもそれは私と結婚しなければ成り立たない。だから、生涯、私と共にボランティアをしていくって人と結婚しようかと――」
「それは駄目だよ!!」
感情露わにそう叫んだフォックステイルは、シンバだ。
それを察知したツナとカモメとパンダが、
〝リーダー、落ち着けよ、深呼吸しろ〟
〝大丈夫だよ、何も今直ぐどうこうって訳じゃない〟
〝でも駄目って言っちゃったから、その理由を言わないと! こういうのはどう?〟
そう言って、ツナとカモメが、却下!と、言い出し、パンダが、まだ何も言ってないと、イヤフォンを通して、いつもの賑やか声が聴こえ、シンバは、直ぐに落ち着きを戻す。そして、深呼吸をして、溜息のように息を吐き出した後、笑顔でネイン姫を見る姿は、
「ごめん、大きな声を出してしまった。驚かせたね」
と、フォックステイルに戻っている。
「いいの、でも、どうして駄目なの?」
「ボクはキミを犠牲にして、世界に平和を願っている訳じゃない。嫌な結婚ならしなくていい。きっといつかキミが納得する相手が現れると思うし、何かと引き換えではなく、世界平和を心から願い、キミと一緒に動いてくれる王族も、きっといると思う。そして何よりもキミを愛する人がね」
「いないわ、見てわかるでしょ? 私は王子様に無益で選んでもらえるような姫じゃないの。万が一、こんな私が、アナタの言う通り、民達に支持をしてもらえたとしても、どこかの王子様が、ジェイドと言う大国関係なく、私自身を好きになってくれるなんて、絶対にないから」
「知らないの? 世界は広いんだよ。1人のお姫様がどんなに頑張っても全然、平和にならないくらい世界は広い。だから広い世界のどこかにいる。絶対に」
「そんな奇特な人が実際にいたとしても、世界はアナタの言う通り、広すぎて出会えないわ」
「出会えるよ、ボク等は出会えた。広い世界で、ボクは・・・・・・キミを見つけた」
言いながら、フックスの意思を受け継いでいるキミに会えたんだと心の奥で囁く。
この奇跡は何億分の1だろう?
フックスが起こす奇跡の1つならば、奇跡は何度でも起きるが、その魔法が解けない事程、気が遠くなるくらいの数字が弾き出されそうだ。
「ボクがキミの味方であるように、キミが大国ジェイドの姫だからじゃなく、キミの純粋な優しい気持ちを大事にしたいと思う、キミの味方になってくれる人がいるよ、キミと一緒に世界を平和にしたいと、その意思を受け継いでくれる人が絶対にいる」
「純粋で優しい? 私が? 見合い相手に、ジェイドと交友関係を築きたいなら、ボランティアに一緒に参加してと、脅迫しようとしたのに? 強情で意地悪で泣き虫でうっとうしい奴なのに?」
「それはまた酷い一面を隠してたね」
態と驚いた風にして、そう言ったフォックステイルに、ネイン姫はクスクス笑う。
「ところで、キミに教育係がついてたよね?」
「ラビさん? なぁに? アナタもやっぱりラビさんがお好み?」
悪戯っぽい顔を少し前に突き出して、拗ねるような口調で言うネイン姫に、ハハッと笑いながら、
「夜はどこに?」
とりあえず、そう聞いた。
「寝込みを襲う気!?」
「まさか。ここに現れやしないかと思って」
と、ネイン姫が寝込みと言った事で、部屋で寝てるのか、それとも姫は辞めた事を知らないのか?と、思っていると・・・・・・
「今日の夕刻に辞めちゃったの。私があんまり言う事を聞かないから、御手上げだったのかも。とってもいい人だったのにって、こんな事なら大人しく言う事を聞いて、勉強するんだったって後悔してる。次に来る教育係は、きっと重荷ね、だってラビさんと比べられちゃう。あんな知的な美人、絶対にいないわ」
やっぱり辞めたんだと、しかしネイン姫の首にはスカイピースがあるから、不思議に思う。
「彼女、どこへ行くとか聞いてない?」
「・・・・・・わからない。彼女、自分の事、何も話さないから――」
その時、ツナが、何かのノイズを拾った。
〝おい、リーダー、さっきから、イヤフォンがおかしい。電波妨害にあってるのか? シカの声も全然拾えてない。他に誰かいるのか?〟
イヤフォンから、ツナの声で、そう聞こえ、フォックステイルは咳払いを2つ。
YESの場合は咳払い1つ。
NOの場合は2つ。
〝発信機は特に問題なかった。後、考えられる事と言ったら、この通信機は無線だから至る所で電波を拾いやすい。近場で同じような無線を持っている奴がいたら、それもノイズとして聴こえる場合があるんだよね〟
カモメがそう説明し、
〝それで、思ったんだけど、もしかしたら、ソルジャー達は無線を持ってるから、ソレで、雑音が入るんじゃないかな〟
そう言った。
〝でもソルジャーは町中をウロウロしてて、事件の時に無線の電源を入れるんだろう? 城内で無線の電源を入れてる奴は、オラ達以外いないのに、そんな遠くまで音を拾える? 性能良すぎじゃない? そこまでするには、オラ達に金はないよ?〟
パンダが疑問を口にする。
「どうかしたの?」
「え? あ、いや、今夜は話せて良かった。本当はポストカードにメッセージだけを残すつもりだったんだけど、キミの話を聞けて良かったよ。ひとつ、お願いがあるんだ」
「なぁに?」
「ボクは怪盗なんだ、一応、怪盗としての仕事しなきゃ」
「あ、そうね、そうだった、えっと、何がいいかしら? 私の持ち物はどれも高級品じゃないから、ドレスもアクセサリーも売り物にもならないと思うの。何かお金になるようなものって言ったら・・・・・・」
と、何かないかと、ネイン姫はクローゼットを開けた。
その時フォックステイルは突然バッと後ろを振り向いて、何かを探すようにキョロキョロ。
右の視界に何かがキラッと光る。
直ぐに振り向いて見るが、何もない・・・・・・ように見える。だが――、
「・・・・・・何かいる」
フォックステイルは何かの気配を察して、そう囁く。
ツナもカモメもパンダも、
〝何かって!?〟
同時に聞いた。そしてフワッと風が頬を通り抜け、見ると、本の少し窓が開いている。
開いていたのだろうか、いや、ここは高い位置の部屋で風は常に吹いている場所にある。もし最初から本の少し窓が開いていたら、風は既に通っていた筈。
誰かが開けたとしよう、だが、バルコニーもない窓をどうやって?
有り得ないが、カモメが発明したようなワイヤーを持ってして、この階の窓辺にやって来たとしよう。
だとしたら、いつ窓を開けた?
音がしなかった。
そして入って来た瞬間の気配さえ薄く、今も何かいるのか、いないのか、何とも言えない。
一番理屈が通るのは、窓が自然に少し開いた・・・・・・そして気配は気のせい――。
だが、その理屈が納得いく筈でも、納得できない勘が働く。
ずっと誰かの視線を感じてならない――。
〝おい、リーダー!? 何かってなんだよ!?〟
「わからない、この部屋に何かいる気配がするけど、灯りは点けれないから――」
この際、点けた方がいいかと思うが、カモメが、
〝サッサともらうものもらって、ずらかろう、もし誰かそこにいるなら、闇に紛れて姿も見えない奴なんて、データーがなさすぎる得体の知れない者だ。関わるのは危険だよ〟
そう言うから、そうだなと、
「キミがしているペンダントをもらえないだろうか?」
クローゼットを漁っているネイン姫に言う。ネイン姫は振り向き、ペンダントトップを持って、コレ?と首を傾ける。
「ソレ」
「でもコレ、地下のいらないモノが置いてある倉庫の中にあって、価値はないけど」
「・・・・・・ソレ、気に入ってる?」
「ちょっと」
「そっか。でもソレ、賊達が狙ってるモノなんだ。手放した方がいい」
フォックステイルがそう言うと、ネイン姫はそうなの?と目をパチクリさせた後、首から外して、
「怪盗さん、何か盗むなんて言いながら、私を助けてくれるの?」
と、笑う。フォックステイルも笑いながら、
「あれ? 信じた?」
と、賊が狙ってるなんて嘘だよと言う風に、笑ってジョークっぽくする。
今、ネイン姫が手を伸ばし、フォックステイルに向けて、スカイピースを渡そうとする。
今、フォックステイルが手を伸ばし、ネイン姫からスカイピースを受け取ろうとする。
ネイン姫の指先とフォックステイルの手の平が軽く触れて、今、フォックステイルの手の平にスカイピースが置かれようとした時、突然、飛び出してきた黒い影――。
キラッと光る丸いモノがフォックステイルの目に映る。
疾風の如く、フォックステイルとネイン姫の間を駆け抜けていく黒い影。
2人の間を、まるで何の障害もないかのように、擦り抜けて、今、気が付けば、姫の手の中にもフォックステイルの手の中にもスカイピースはない。
直ぐに影を目で追い、振り向くフォックステイル。
影はソコに立っていて、真っ黒の衣装を身に纏った何者かだとわかる。
頭の先から爪先まで、黒装束を身に纏い、しかし左耳からピアスだろうか、イヤリングだろうか、キラキラ光る丸いモノが出ている。
今、その黒い塊が、黒い手袋をした手の中にあるスカイピースを見せて、まるで〝ありがとう〟とでも言うような仕草。いや、バカにしてるような仕草にも思え、
「返せ!!」
フォックステイルは大声を出した。
だが、影はドアを開けて、部屋を去っていく。待てと追うフォックステイル。
ローカは真っ暗ではなく、灯りがあちこちに付いている。
影ではなく、完全に黒装束を着た者だと、わかると、逆に真っ黒な姿は目立つ。
階段を滑るように下りて、広いフロアに出て、西の通路へ向かうローカの前、何者かは立ち止まり、振り向いた。
「・・・・・・そっちの通路は行けないだろう、王の間があり、王の寝室がある」
そう言いながら、フォックステイルがゆっくりと迫るように、何者かに近付いていく。
そして、ある程度、距離を開けた位置で、フォックステイルは立ち止まり、
「お前、何者だ?」
そう聞いた。黙っているので、ラビの言っていた怪盗だろうなと、
「怪盗フルムーンって奴か? その耳から下げてる奴が、満月っぽくて付けられた仇名か? ソレ通信機だろ? 耳にイヤフォンが入ってる、その丸いのはマイクだ、違うか?」
そう聞くが、やはり黙っているので、
「通信機をしてるって事は仲間がいるんだろ? 何人いるんだ?」
更にそう尋ねる。だが、言う訳ないかと、
「まぁいい。大人しくスカイピースを返せば見逃してやる。いいか、お前はここまで来るのに見境なく走って来た、直ぐに騎士達が駆け付けて来る」
と、言いながら、左右の通路を見て、フォックステイルは驚愕の表情になる。そして、
「お前がやったのか!? まさかフロア全部に配置されてる騎士達を倒したのか!?」
左右の通路で騎士が倒れているのを目にして、驚きの声を上げた。
さぁ?と言う風に首を傾げて見せる黒装束の何者かに、フォックステイルはバカな!?と驚きを隠せない。
――いつ、どうやって、全員を倒せた!?
――ガスか何かで眠らせたなら、その空気が残ってる筈。
――通常の空気しか感じない。
――悲鳴も音も何も聞こえなかった。
――幾らネイン姫との会話に夢中になってたとしてもだ、何か聴こえた筈だ!
よく見れば、何者かの背に、黒い布で包んである剣がある。
「・・・・・・銃が主流になって来てる世で、剣を使うのか? ボクもだ、奇遇だな」
フォックステイルは、コイツは倒さなきゃヤバイと短剣を抜いた。
すると、何者かも背中の剣を抜き、構えた。
フォックステイルのイヤフォンから、仲間の声が聴こえているが、今は目の前の敵に集中しなければならない状態。
一瞬の隙でやられると、フォックステイルの手の平が汗ばむ。
こっちから仕掛けるかと、フォックステイルが踏み込み、何者かは、その攻撃を身軽に宙返りで避ける。着地と同時に仕掛けられ、フォックステイルは短剣で剣を受け止めた瞬間、イヤフォンから大きな雑音な鳴り、耳を押さえ、少し前屈みになると、何者かも耳を押さえ、苦しそうに前屈みになった。
どうやら、お互いの通信機は、近寄ると電波障害でもあったかのように大きな乱れた雑音が流れ出し、耳が痛くなったようだ。
「カモメ!? 聴こえるか!? ボクの声が届いてないのか!? ツナ!? シカ!? パンダ!?」
独り言のようにブツブツそう言っているフォックステイルの背後を、何者かは剣を振り上げて狙い、咄嗟に避けて、またお互いが近付いた途端、大きな雑音が耳に入る。
――なんだ? コイツに近付くと電波障害のようなものが起きるのか?
――奴が付けてる通信機のせいか?
今、イヤフォンから微かに聞こえるカモメの悲鳴。
「カモメ!? どうしたんだ!? おい!?」
カモメの心配をしてる暇はなかった、直ぐにまた剣で襲い掛かって来る何者かに、
「マジかよ!? 懲りない奴だな!! バカなのか!? 気付けよ!! ボク等が接近すると電波が――ッ!!」
身を翻し、避けながら、そう吠えて、そして気付いた。
「・・・・・・違う、電波障害を起こしてるのは通信機のせいじゃない。スカイピースだ」
フォックステイルの首から下げられている2つのスカイピース。
太陽とフェニックス、雪とフェンリルのスカイピースが熱を帯びている。
――スカイピースが・・・・・・共鳴している?
――コイツが姫から奪ったスカイピースに?
しかし太陽とフェニックスと雪とフェンリルのスカイピースが揃った時には何の反応もなかったのに、何故、ネイン姫からのスカイピースが近づくと共鳴するんだ?と、思った瞬間、何故、コイツの動きをギリギリながら避けきれるんだ?と、
「・・・・・・お前、バニか?」
フォックステイルは、そう聞いた。
「お前は2つのスカイピースを持ってるのか? ボクの2つのスカイピースで、全部のスカイピースが揃ってる。だからボク等が近付けば、スカイピースが共鳴する」
正体がバレたと思ったのか、それとも只単に相手にしてられないと思ったのか、まだバニかもわからない何者かは剣を仕舞うと、西の通路へ向かって走り出す。
「バカ! そっちには王がいるんだって! そこ等の騎士と違い、強豪の騎士が配置されてんだぞ! それに王の間で完全な行き止まりで、袋の鼠だ!」
言いながらも、フォックステイルも西の通路を何者かを追う為に走っている。
迷いなく王の間へ向かっている何者かに、仲間が待ってるのか?と思う。
だから、フォックステイルも仲間に告げる。
「西通路、王の間へ行く! 逃走ルートはわからない」
だが、無線は壊れてしまったのだろうか、全く反応しなくなった。
舌打ちしながら走っていると、何者かの目の前に大きな騎士が立ちはだかる。
そらみろと思った瞬間、何者かは剣を抜いた一瞬、騎士の横を通り過ぎた。
騎士はそのままズターンと倒れる。
何!?と、フォックステイルは倒れた騎士を横目で確認しながら、何者かを追い駆け続ける。
次から次へ現れる騎士を、意図も簡単に一振りで倒していく何者かに、走るスピードにパワーを兼ね備え、攻撃力を上げて、完全に急所をズレもなく狙ってるんだと、
――あの攻撃を交わせるのは、アイツの動きを読める奴しかいない。
――だとしたら、間違いない、アイツはバニだ。
――構えが少し荒いが、母の剣術にも似ている。
――更に加わっているアレンジはサソリ団の戦闘法か?
――完全に殺しの戦闘法じゃないか!!
――クソッ!! これが賊か!!!!!
王の間に辿り着き、何者かは振り向いて、フォックステイルを見ているようだ。
フォックステイルも足を止め、真っ黒な影のような者を、真っ直ぐ見据え、
「・・・・・・顔を見せろ」
そう言った。
「行き止まりだ、ボクを倒すか? 無理だ、お前の動きはわかる」
フォックステイルがそう言うと、バイバイと言う風に手を振り、大きなステンドガラスに向かって走り出す。
3階だぞと、思うが、何者かはステンドガラスに突っ込んだ。
ガシャーンと割れる大きな音と、キラキラと光るガラスの破片の中、何者かは飛び降りる。
急いで下を覗くと、設置されてあったのか、ワイヤーがあり、それを使って、下へうまく着地しているから、そのワイヤーを使おうとするが、どこからか銃音が鳴り、ワイヤーは切られてしまう。仲間か?と、直ぐに壁に身を隠すが、
「こっちで音がした!」
と、騎士達の声が聞こえ、逃げなきゃと、だが、追わなきゃと、焦る。
「クソッ! 急がば回れ!!」
自分にそう言い聞かし、東通路へ向けて、天井にへばりついて、騎士達の真上を通り抜けると、隠れながら走り出す。
――王の間の真下は薔薇園になっている。
――あそこを通り抜けるには少々、時間がかかる。
――薔薇の塀でつくった迷宮のガーデンだからだ。
――夜と言う闇が、更に時間をかけさせるだろう。
――今なら、まだ追いつける!!
「ボクは正面門の方へ向かってる、誰か裏へと回ってくれ、奴を挟み撃ちしたい」
どうかコチラの声は聞こえてますようにと願いながら、仲間に伝えるフォックステイル。
だが、門へ辿り着く前に、またも驚く事が起こる。
ドゥルンドゥルンと大きな音を鳴らしながら、あの大きなバイクが現れた。
ライダースーツを着て、ヘルメットを被ってるが、体のラインを見ると女だとわかる。
フォックステイルの目の前でバイクが止まると同時に、あの黒装束を身に纏った者が、バイクの後ろへ飛び乗った。嘘だろ!?と、思った瞬間、バイクは走り出すから、
「そっちは中庭だぞ!!!?」
そう吠える。すると、またバイク音が近寄って来るから、直ぐに振り向くと、
「リーダー! 乗れ!」
ツナが、ソルジャーのバイクに乗って現れた。
「ボクが作ったガーデンに行きやがった!!」
「追うぞ」
「ボクの作ったガーデンが!!」
「今はガーデンよりスカイピースだろ!」
その通りと、バイクの後ろに飛び乗るフォックステイル。
「悪いがメットはない、運転もした事がない」
エンジン音を上げながら言うツナに、頷くしか選択はない。
「リーダー!」
と、シカの声に振り向くと、銃が投げられ、キャッチする。
「照明弾が入ってる! バイクのライトは全部壊されてるから光が必要になったら空に向かって撃つんだ」
「わかった! カモメは!? 無線で悲鳴が聞こえた」
シカの返事を待たず、バイクは走り出し、だが、シカの変わりに、ツナが、
「パンダがカモメのいるテントへ向かった。心配ない」
そう言った。フォックステイル、いや、もう、フォックステイルになりきれてない。
姿はフォックステイルでも、シンバだ。シンバは、バイクのスピードにツナにしがみ付いたが、直ぐに身を乗り出すようにして、正面を見る。
真っ暗で向かい風が強すぎて、何もわからないが、何か白い影が見える。
「ジェイドのバイクは全てライトが壊されてた。追って来れないようにだろう、だが、こっちには暗闇でも目が見える仲間がいる。鼻も効く。奴等の誤算はリブレの存在だ」
ツナがそう言っているが、シンバの耳には風の音しか聞こえず、
「ねぇ? あれリブレじゃない? リブレ、もしかして追ってるの!?」
と、ツナに聞く。ツナもシンバの声が、余り聞こえず、だが、
「あぁ」
と、リブレが追っていると言う言葉が聞こえたので頷いた。
「そうか、リブレは白い毛並みだから、闇に白は見えるもんね」
中庭をグルグル回った後、一気にスピードを上げて、高い高い塀をバイクで越えるリブレにツナは冗談はよせと思うが、やるしかない。
「まさか後ろに人を乗せて、しかもあの大きなバイクを持ち上げてジャンプしたってのか!? 女だったぞ!?」
そう言ったシンバに、黙ってろと、ツナはもう一周多めに庭を回り、スピードを付けて、ジャンプのタイミングを計る。
パワーじゃない、これはテクニックだ。
ツナはそんな器用ではない。
だが、決めた事は絶対にやり通す男だ。
――俺はフォックステイルの為に!
――フックスのチカラになる為に!
――存在しているんだ!
高い塀を飛び越えるバイク。
飛び越えて、城外の広い敷地に出ると、ヤッタと少し浮かれるが、既に追っ手を見失っている。エンジンをかけたまま、バイクは拍動し続けて、一旦停止。
「ツナ、照明弾を使おうか?」
「いや、ソレを使うのは最終手段だ、照明が空に上がれば、ここにいると言う目印にもなる。城内にはまだ騎士は一杯いて、多分、俺達は追われる事になる」
「じゃあ、どうするの!?」
「静かにしろ」
ツナはそう言うと、辺りを見回し、耳を澄ませながら、
「リブレ! どこだ!?」
そう叫ぶ。すると、遠くで犬のような鳴き声が微かに聞こえ、
「あっちだ、町中に出たか!?」
と、リブレの声のする方へとツナはバイクを走らせた。
町中なら外灯があると思ったが、そうもいかないらしい。
町中をバイクを走らせていると、いつの間にか、リブレが隣を走っていて、そして誘導するように、前を走り出すが、城下町を出る道へと向かう。
しかもソッチは、まだ道さえできてない只の荒野が広がる場所。
その先を行けば、林になり、大きな川が流れている。
暗闇で林の中を走るのは木々が目の前を邪魔して、危険だ。
でも追うしかない。
「奴等、もう追ってこないと思って、スピードを落としてるに違いない。リブレが奴等がいる場所の近道を教えてくれるから、うまくいけば追いつく!」
ツナはそう言った後、
「俺が入ってフォックステイルの仕事が失敗したなんて言わせねぇぞ! クソッタレ!」
そう呟き、舌打ち。
ツナにしがみ付いている事で精一杯のシンバは、ツナの台詞など、何も聞こえない。
物凄いスピードで走るバイクに、シンバは何もできない状態だ。
やがて林の中を走るが、木にぶつかってしまっては事故になり、ヘルメットを被ってないので、止むを得ないと、
「照明弾を撃て!」
ツナは、そう吠えた。しかしシンバは聞こえてない。
「おい! おい! 聞こえねぇのか!? リーダー!?」
「え? 何? 何か言ってる?」
「照明弾だ、照明弾を撃て!」
サッと素早く振り向いて、そう言うと、直ぐに前を向くツナに、シンバは頷いて、懐へ入れた銃を何とか片手で取り出す。
そして空に向かって光が放たれた。辺りが明るくなり、闇が照らされていく。
「騎士達も気付くだろうが、俺達が追ってる奴等も気付いただろう。だが、もう直ぐそこまで来てる筈だ。川は大きくて流れも速い。バイクで渡れる訳ない。幾らなんでも――」
願うように言うツナ。その願いが叶うように、目の前に浮かび上がるデカいバイク。
ニヤッと笑うツナと、追跡を続けるリブレ。
障害になる木々を左右にうまく避けながらスピードを上げていくバイク。
木々など障害にもならなくて、真っ直ぐに駆け抜けるように走るリブレ。
スピードを落とさずにギリギリだが木々を避けていくツナ。
そして、水のニオイと音に川だとツナは気付き、追い詰めたと思ったのに、デカいバイクは、川を走り出す。嘘だろと、ツナはバイクを停止させる。
リブレが川に入って行くが、
「やめろ、リブレ! 流れが速い! 戻って来い!」
ツナのその命令に、リブレは忠実だ。
大きなバイクは、川を渡り切った。ツナもシンバも、ソレを見送るしかできない。
幾らなんでも、ソルジャーのバイクで、この川を渡るのは危険すぎるし、大きな壁を越える事ができても、大自然の流れに反発できる程のテクニックはない。
大きなバイクは、向こう岸で止まり、そして、コチラを見ているようだ。
シンバはバイクから下りると、自らの足で川を渡ろうとするが、
「無駄な事はやめたら?」
その声に、バシャバシャと川に入って行く足を止めた。
今、ヘルメットを脱ぎ、長い髪を振りながら、ニッコリ微笑む女。
「ラビ!?」
同時にシンバとツナがそう言った。
そして、ラビの後ろに乗っている者は、頭から顔までターバンのように巻いた黒い布を取って、シンバとツナを見る。
「バニ!?」
と、声を上げたのはツナだけ。予想していたシンバは、険しい表情をしている。
「ツナ、バニはアナタの仲間だって言ってたわね? でも残念。バニは昔からアタシの味方なの」
と、勝ち誇るように言うラビ。更に、
「ツナが乗せて来た人・・・・・・もしかしてシンバ?」
今は髪の色も違うし、一応、仮面も付けているので、シンバかどうか定かではないから、聞いて来たのだろうが、もうラビは確信しているから、にこやかに笑っているのだろう。
「アナタ達の正体って、そういう事?」
と、クスクス笑っている。何も言えないで、只、突っ立っているシンバと、バイクに跨ったままのツナに、フフフッと笑いながら、
「シンバ、教えてあげた筈よ、怪盗フルムーンの存在を。それにアタシの手の中には、もう1つスカイピースがあるって事も教えてあげたわ」
まるでハンデをくれてやったのに、負けるの?と言わんばかりの勝利宣言。そして、
「奪ったのはスカイピースだけじゃないのよ」
などと言い出し、腰に付けられたポーチから出したモノに、
「カモメに何かしたのか!?」
シンバが吠えた。
「何も」
「ならなんでカモメの発明品を持ってるんだ!?」
「アタシはカモメに会いに行っただけよ」
「嘘だ、カモメが悲鳴を上げたのをボクは無線を通して聞いてるんだ」
「あぁ・・・・・・悲鳴って言うか・・・・・・カモメの隣でライダースーツに着替えただけ」
と、ラビは首の所のファスナーを胸の辺り迄下ろすと、
「アタシの裸を見て、声をあげたの」
と、嘘じゃないとばかりに、白い胸の膨らみを見せて、スーツの下は裸だと主張。
唖然とするシンバ。ツナが、
「カモメが目を閉じた隙に、発明品を奪ったのか」
そう言って、ラビを睨んでいる。ラビは笑いながら、
「アナタ達が何者なのか、謎が解けて、思った以上の収益だわ」
と、シンバをジッと見つめ、険しい表情のシンバを嘲笑うように、
「謎の怪盗フォックステイルの正体を知りたい人は一杯いるのよ。ご愁傷様」
バラすとでも言うのか、そう言った後、
「悪いけど、フォックステイルの噂は知ってるわ。アナタ達にこれ以上関わるのは利口とは言えないわね。ここでサヨナラといきましょ」
と、バイクにエンジンをかける。
「スカイピースを4つ揃えなくていいのか!?」
眉間に皺を寄せて、そう聞いたシンバだが、ラビは何も答えないまま、勝ち誇った笑みを浮かべて、ヘルメットを被ってしまった。そして、バニが、
「後始末、頑張ってね、フォックステイル」
と、バイッと手を上げたのが合図かのように、バイクは大きな音を出して去っていく。
だが、バイクが見えなくなっても、暫くの間、シンバもツナも、そのままの状態で、動けなかった・・・・・・。
リブレが鼻を鳴らしながら、動かない二人の周りをウロウロと、不安げに歩き続ける――。
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