04話.[ハイテンション]

「健人くん、起きていますか?」


 現在の時間は午前1時24分。

 こんな時間に帰ってくるなんてとんだ不良娘だ。


「起きてるぞ」


 ちなみに、元基はあの後すぐに帰った。

 大晦日だけじゃなくその前にも集まりたいとか欲張りなところを出しつつ。


「友達と集まれて嬉しかったのかもしれないけど、流石にこんな時間に帰宅するのは駄目だろ」

「……思いの外、お喋りが止まらなくなってしまって」

「楽しめたのなら結構、なんて言えないぞ、自分の性別を考えろ」


 いや、男だろうが女だろうがこのことに関しては関係ない。

 しかも高校生だ、警察に見つかったらまず間違いなく補導される。

 まあ、変な人間に見つかるよりかはいいがな。


「もう寝ろ」


 別にひとりにされたからと言っているわけじゃないんだ。

 時間を考えたら寝ることが1番だ。

 姉はとぼとぼと部屋から歩いて出ていった。


「まあ、元基だって同じように言うさ」


 こっちがさっさと寝て忘れてしまおう。




「健人ー」

「こっちは掃除終わったぞ」

「ならこっちを手伝って」

「あいよー」


 掃除というのはあまり嫌いじゃない。

 流石にこういうときは俺だって動くものだ。


「明後日まで休みなんだっけ?」

「ん? うん、そうだねー」


 それなら逆に明後日まで働いてその後休みの方がいいと思うが。

 まあ社会人っていうのはそう上手くいくようにはなっていないのだろう。


「真里那はー?」

「まだ寝ているようだな、部屋から出てこねえ」


 俺と母だけが掃除などをしているなんて明日は間違いなく雨が降るぞ。

 しかも今日は俺も母もやる気があるというか、姉がいなくても事足りるというか。

 昨日――今日のことを気にしているのだろうか。

 言い方に棘があったのかもしれないが、家族だからって甘くすればいいわけじゃないからな。


「しゃあないから後で買い物に付き合ってー」

「おう」


 昨日の調理時にそこそこ食材を使用してしまっていたから買い物に行かなければならないのは確か。

 家事などはやると口にしたんだから動いてやらないと駄目だな。


「よーしよし、掃除はこれぐらいでいいっしょ」

「だな、0より1だ」

「真里那だったら不満を言うかな?」

「そうなったらそうなったで俺が追加でやるからいい、買い物に行こう」

「あーい」


 年末特有の雰囲気に包まれている――とはならず。

 冬休みに入っているからなのか若い人間が結構いた。

 中には家族で仲良さそうに行動している人達もいるから、例外もいるようだが。


「うへぇ、混んでるね~」

「おせちとかどうするんだ?」

「え、面倒くさいからいいでしょ、正月は雑煮を食べておけばいいんだよ、あとはみかんね」


 一理ある。

 小洒落ていなくてもいい、終わってしまえばただの変わらない1日だ。


「はい、全部持ってー」

「おう」


 こんな母でも働いてくれているわけだからな、なにかしてやらないと駄目だ。

 不安になるとすれば適当なところが多いところか。

 仕事場でも同じようにしているんじゃないかって気になる。


「また失礼なことを考えているな?」

「いつもそんな適当なのか?」

「なわけないじゃん、切り替えが上手いんだよー」


 そうか、適当にやっていたらいま頃クビになっているか。


「あ、真里那だ」


 どうやらひとりのようだ。

 学校の方へ歩いて行こうとしている。

 俺達は脇道を利用して帰ってきているからすれ違うことはない。


「別に俯いているわけじゃないし気にせず帰ろう」

「だね、まだ昼前だし」


 部屋に引きこもっているよりかは遥かに健全だ。

 冬でも関係なく劣化するものだから冷蔵庫にさっさとしまわないと。


「なんだこれ……」


 しまって部屋に戻ったらぐしゃぐしゃだった。

 物が散乱している、もちろん、全て俺の物だ。

 もしかしてイライラゲージが溜まりに溜まって発散、……という感じか?


「片付けるか」


 時間つぶしになるから助かる。

 物が壊れているわけではないから、まあそこも真里那らしさが出ている。

 ひとつひとつ出しては優しく置いていくところを想像したら笑いそうになった。

 こんなことで晴らすことができるということならそれで結構。


「健人、ご飯出来たー」

「おう、食べさせてもらうわ」


 珍しいな、たまの休日なのに家事ばっかりして。

 洗濯を干したのだって母だぞ、いつもなら俺か真里那に任せているところなのに。


「美味しいぞ」

「ま、私も一応主婦だから」

「で、その主婦がどうしていきなり動き出してんだ?」

「真里那に負担をかけすぎてしまったからねー」


 それは俺も同じこと。

 しゃあないから頑張らないとな。

 やり方を忘れてしまうぐらい姉にはなにもさせないぞ。


「はは、なんか母親みたいだ」

「母親ですよー」

「はは、だな」


 とりあえずいまは19時までには帰ってきてほしい。

 これでも不安になる、夜遅くに帰宅なんてことはやめてほしい。


「ただいまです」

「ありゃ、意外と早い帰宅だねー」

「はい、少しお散歩に行っていただけだったので」


 たまにすると発散になっていい。

 同じ空間にずっといることよりもいいだろう。

 ただ、姉の表情的には発散させられたような感じには見られなかった。




 浴室の床をごしごしと擦っていたときのこと。


「健人くん、この後、行きませんか?」


 唐突にやって来た姉がそんなことを言ってきた。

 普段であれば「どこに?」と馬鹿みたいに聞き返していただろうが、今日なら分かる。


「いいぞ、行くか」

「はい」


 その後は適当に年越し蕎麦を食べて、本来であれば風呂に~となっているところではあるが冷えることが分かっているから後回しにした。


「着物、着ていくんだな?」

「はい」

「暖かくしろよ」


 少し離れた神社に向かって歩いていた。

 もちろん、姉に歩幅を合わせてではあるが。


「あ、真里那さんっ」

「あ、鈴木さんっ」


 当たり前ののようにこちらの存在は見えていないようだった。

 ひとつ気になるのは元基がいないということだろう。

 約束をしたんだと嬉しそうに話をしていたあいつはどこに?


「もう、ひとりじゃ危ないですよ?」

「あはは、元基くんとは現地で集合ということにしているんです」


 お、こちらも名前呼びになっている。

 それと、結局一緒には行けませんでした、という展開にはならないようで一安心。

 それでもひとりで歩かせるのはやっぱりな、そこが失点だ。


「なんでそんなことを?」

「で、デートみたいでいいかなーって、夜中にそうやって会うなんてドキドキできるかなーって思いまして」

「う……」

「真里那さん?」


 姉だって以前、同じようなことをしたから強くは言えないわな。


「それでも危ねえから元基と一緒に行けよ、それなら一緒にいられる時間も増えるだろ」

「確かにっ、あー、でも、こういう集まり方をしてみたかったんだよー……」

「昼の街中とかでしろ」

「だねっ、心配してくれてありがとう!」


 無事、元基のところに送り届けたら別れて、適当に時間つぶしをすることにした。

 結局、0時になるのを待つだけだよな? 俺の考えがおかしいだけか?


「甘酒、飲みますか?」

「いや、俺苦手なんだよ、真里那だけ飲んでおけ」

「貰ってきます」


 そこまで人気な場所というわけでもないが、ここにはそこそこの人間がいる。

 着物を着ているような人間は少ないが、中には着ている人間だってちゃんといた。

 他の誰かといることで楽しそうにしている人間を見ていると不思議な気分になる。


「元基が綺麗だって褒めてたな」

「少し、恥ずかしかったです、それに鈴木さんも側にいたというのに……」

「思わず出してしまうぐらいのレベルだったってことだろ」


 鈴木は滅茶苦茶着込んで普通に暖かそうだった。

 脱ぐときにばちばち静電気が凄くなりそうなレベルだったが。


「け、健人くんは絶対にそんなことを言ってくれませんよねっ」

「俺からそんなこと聞けても嬉しくねえだろ」

「……勝手に決めつけないでくださいよ、私は私、あなたはあなたなんですから」

「綺麗だ」

「この流れで言われても、私が無理やり言わせたみたいじゃないですかっ」


 どうすればいいんだよ。

 俺には無理だ、乙女心を1ミリでも理解できる日は延々にこない。


「明けましておめでとう、もう帰ろうぜ」

「ま、まだいいじゃないですか」

「と言ってもどうするよ?」

「ここではなくても公園とかで過ごすのも……、ほ、ほら、せっかくこれを着てきたんですからすぐに帰るのは味気ないかなと……」

「まあいいけどよ、行くか」


 元基達の邪魔を率先してやるのも違うし、たまには付き合ってやるか。

 もう本番は目の前だからな、それはつまり姉の卒業も近づいているわけだが。

 元基が鈴木と上手くいって付き合った際には来なくなることだろう。

 そうしたら俺は……ひとりか。

 仮にあのふたりが付き合えても嬉しい、とはなれねえな。


「寒くないですか?」

「真里那こそ寒くないのかよ?」

「私は大丈夫です、ある程度は耐性があるので」


 待て、もうすぐ姉の誕生日でもあるのか。

 色々なことがあるな、うかうかしているとあっという間に俺も2年生になってしまいそうだ。


「あ、そうだ、忘れてたんだけどさ」

「はい?」

「これやるよ、大晦日にクリスマスプレゼントというのもおかしいけどな」


 意味もなくリュックを背負っていたのはそういうことだ。

 ま、俺からのお年玉という風に扱ってくれればいい、現金というわけではないけどな。


「これは……」

「ヘアゴムだ、本当にやっっすいやつだけど」

 

 元基と遊びに行った際に見つけて買ってきた物だ。

 しょぼいやつで申し訳ないが我慢してほしい。

 

「複数あっても困るような物じゃないだろ? 別に使いたくなかったら使わきゃいいんだし」


 姉は自分の頬を引っ張って「痛いっ」と声を漏らしていた。

 なんだという視線を向けてみたら、「健人くんがくれるなんて思わなくて」と失礼なことを言ってくれた。


「酷え姉だな」

「ごめんなさい……」


 俺のイメージが悪いことは以前から分かっていたが。

 まあほぼ事実なんだから言い返すことは本来できない。

 だが、言われっぱなしというのも嫌だということだ。


「なあ」

「な、なんですか?」

「真里那もなんかくれよ」

「え、急に言われても……」

「早く」


 どんどんと距離を詰めていく。

 姉は固まったままなのであっという間に距離がなくなった。

 伸ばした人差し指分ぐらいの距離だけが空いている。


「なあ」

「ち、近いですよ……」


 問題にしかならなさそうだったからやめた。


「ふっ、帰るか」

「は、はい」


 女子はずるいな。

 男があんなところを見せてもしゃっきりしろで終わる話なのに。

 俺はひとり寂しいクリスマスだったわけなんだからなにかくれてもいいと思うけどな。

 だって母とふたりだったらどうなるのか、なんてことは姉だって理解しているからだ。


「お? どうした?」

「……なにが欲しいんですか?」


 なにが欲しいか、か。

 あれは言われっぱなしなのが嫌だったから少し仕返しをして姉の慌てているところを見たかっただけだけだ。

 改めて聞かれてもなにも出てこない。


「勉強を頑張って合格してくれたらそれで十分だ」


 そうじゃないと快く高校から送り出すことができない。

 流石に悲しそうにしている姉を見るのは嫌だからな。


「帰るぞ」


 長居すると風邪を引く。

 風邪を引かせるわけにもいかないからこれが1番だった。




「来たよっ」

「はい、飲み物」

「ありがとう!」


 単独で鈴木が家に乗り込んできた。

 多分、ではなく、ほとんどの確率で真里那に会いに来たんだと思う。

 知らない間に仲良くなっていたからな、よくそんなに短期間で仲良くなれるものだと思う。


「あのね、元基くんのことなんだけどさ」

「おう」

「私たち、もしかしたら相性がいいかもしれない! だっていればいるほど楽しいもん!」

「良かったな、そう言ってもらえたら元基も嬉しいだろ」


 そのまま教えたらまた「やばいやばいやばいやばいっ」とハイテンションになるに違いない。

 この様子ならふたりが付き合い始めるのもそう遠い話ではなくなってきたな。

 姉の受験、誕生日、卒業式、その全てが終わるまでには付き合い始めると思う。


「でね、今日来た理由なんだけど」


 彼女は両目を閉じて数秒の間を作った。

 どうせ元基のことが知りたいとか、真里那のことが知りたいとかそういうのだろ、とか考えていた自分。


「神埼くんの相手もしてあげないといけないなって思って!」

「俺の?」

「うんっ、だって私たちしか神埼くんにはお友達がいないわけだし!」


 随分と楽しそうに言ってくれるものだ。

 ただ、それは事実だから否定もできない。

 真里那が卒業したらほぼひとりになってしまう。

 ……これは拒まない方が良さそうだ。

 ひとりで過ごす学校生活なんてつまらないからな。

 そんなの社会に出てからすればいいのだ。


「じゃ、なにするか」

「し、しりとり?」

「はぁ、元基を呼んでくる、その方が鈴木も嬉しいだろ」


 俺がひとりで鈴木の相手をしたくなかった。

 電話をかけて鈴木がいると言っただけで「いまから行くよっ」と魚が食いついてくれた。

 待て、これだと俺がまるで鈴木を連れ込んでいたみたいじゃねえかよ、失敗だったとしか言いようがないな。


「はいはい」

「来たよっ、千佳ちかちゃんはどこっ!?」

「分かってる、鈴木ならリビングだ」

「いま行くからねっ」


 なんか別人のように見えた。

 とりあえずは飲み物を渡して一旦離脱。


「賑やかですね」

「悪いな、うるさくして」

「構いませんよ、休憩にしようとしていましたから」

「じゃ、1階に来てくれ、真里那がいてくれればあのふたりも喜ぶだろ」

「わかりました」


 ひとりがふたりになっただけでここまでやかましくなるのかと頭を抱えたくなった。

 真里那がいなかったらまず間違いなく家から追い出しているところだ。


「やっぱり健人と違って真里那さんはいいですね」

「一応、私が姉ですからね」


 否定はしてくれなかった。

 別にそういう意味ではなくても違う女子がいいなんて口にしていいのだろうか、横には好きな人間がいるというのに。


「安心して話すことができます、健人の場合はそうとはいきませんから」

「でも、あまり言わないであげてくださいね」

「真里那さんがそう言うならやめます」


 帰ろう、ここに俺の居場所はないようだから。

 止めるのだとしても1番最初にそうしてほしい。

 後から一応言っておくか的な言い方をされると逆にダメージが大きいというやつ。


「あ~」


 もう冬休みが終わってしまう。

 学校が始まったらあっという間に2月になって、3月になってと変わっていくだろう。


「健人くん」

「おう」


 多分、あのふたりはふたりだけでいたいように感じる。

 それを感じとったから姉はここにいるのだろうか?


「おふたりが帰ってしまったのでここに来ました」

「そうか」

「座ってもいいですか?」

「床じゃなくてあの椅子に座れよ」

「はい、借りさせてもらいますね」


 でも、なにかを喋ろうとはしなかった。

 そうなると同じ空間にいられることがただただ圧になってくるというか、少し微妙なのは確かだった。


「あ……」

「どうしたよ?」

「健人くんさえ良ければどこかに行きたいな、と」

「ま、高校最後の冬休みだからな。でも、友達に頼めばいいんじゃないのか? 夜中まで盛り上がれる仲間がいるんだろ?」


 俺と行っても小言をぶつける回数が増えるだけだとこれまでのことで分かっているはずなのになんでだろうか。

 それともあれだろうか、鈴木と同じで相手をしてあげないとひとりぼっちになってしまうからと考えているからだろうか。

 もうすぐ高校を卒業してしまうからというのもあるのかもしれない。


「健人くんがいいならいいじゃないですか」

「いや別に嫌だとは言っていないだろ、俺なんかより友達と行った方が――分かったよ、じゃあいまから行こうぜ」


 俺はいつだって付いていくだけだ。

 誰かを楽しませようとなんて考えたところで無意味なものにしかならない。

 それなら相手のしたいことをさせておくのが1番だろう。


「どこか行きたいところってありますか?」

「真里那に合わせる」

「少しは考えてくださいよ」

「真里那が息抜きをするために出てきたんだろ? 俺は合わせるから行きたいところに行ってくれればいい」


 姉が最初に選んだ店はコーヒーショップだった。

 こういうところに来たことがない自分としては、なんとなくどころかかなり居づらい。

 次に選んだ店はどちらかと言えば女子向きな雑貨店。

 真里那がいなければまず間違いなく睨まれているような場所なので、これまた居づらかった。

 その次は、


「待て、さっきから意地悪してないか?」


 下着が売っているそんな場所。

 性行為をする男女でもないと男女で来るような場所ではない気がする。

 偏見か? でも、彼女の下着をそれ以外の理由で選ぶなんて意味分からないからな。

 これだから童貞はと笑われても構わない、所詮俺はこれぐらいしか考えれないものだから。


「あなたが私に行きたいところに行ってくれと言ったんじゃないですか」

「だからってここにふたりで入る必要はあるか?」

「ふふ、健人くんも男の子なんですね、緊張しちゃうんですかー?」

「よし、真里那に似合うやつでも選ぶか」

「え」


 派手な物ではなくシンプルで真っ白な物を持ってきた。


「ほい、買え」

「え、ちょ」

「適当じゃないぞ、ちゃんと考えてどれがいいのか選んだ」


 サイズも多分、同じぐらいだと思う。

 でも、俺にはあくまで表面しか分からないから買う際には試着してからにしてほしいと思う。

 姉の胸のサイズを詳細まで知っているような変態野郎ではないんでね。


「ま、つまり俺の好みってことだな」

「む、無理ですよっ」

「そうか、ならしょうがないな」


 慣れないことをするからだ。

 調子になんて乗るべきではない。

 

「ちょっと選んできますね、新しい物が欲しかったんです」

「おう、俺は外で待っているから」


 商業施設なんかとは違ってソファなどがないから困る。

 だって女性用下着専門店の店の近くで突っ立っていたら怪しいだろ? だからわざわざ歩くことになった。

 出てきてきょろきょろしていた姉と合流し、また次の姉の望む場所へと歩いて。


「お昼にしましょうか」

「あんまりないから真里那が作ってくれたやつでいい」

「たまにはお外で食べたいですよ」

「しゃあねえな……」


 で、姉が選んだ店はがっつり系のところだった。

 昼からとは勝負師だ、あんまり大食というわけでもないのに。


「サラダもお肉もいっぱい食べられていいですからね、それに健人くんもどちらかと言えばお肉が好きですよね?」

「自分が行きたい店を選べよ」

「だから行きたかったんですよ、サラダがいっぱい食べたかったんです。ほらほら、選んでくださいっ」


 姉はハイテンションだった。

 まあ自分といるときに楽しそうにしてくれているのは悪い気はしないから水を差すようなことはしないでおいた。

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