騎士団

第14話 受付

 アメリアが警備騎士団の門をくぐると、分かりやすいところに受付が設置されていた。名前と年齢など簡単な事を伝え、数字の書かれた布を受け取って胸につける。


 受付を終えてグラウンドに出ると、年齢も様々な男たちが多勢待っていた。引き締まった騎士らしい体型の人間もいれば、ひょろっとした者もいる。入隊試験を受ける者もそれぞれ様々な理由があって参加しているのだろう。20日間に分かれているはずなのに、これだけの人数がいるならば、宿が取りにくいのも肯ける。


 やがて、試験官らしき騎士がやってきて、説明をはじめる。最初は走り込みのようだ。それはアメリアがジェラルドに聞いていた通りで、試験が始まった頃と変わっていないようで安心した。



『根性見せないと走りきれない距離にして、ふるい落とすんだ。やっぱり、精神面も大切だからな』


 幼い頃のジェラルドの言葉がよみがえる。


『あれ? ジェラルド。この距離だと根性見せる前に走り終わっちゃうわよ。倍にした方がいいんじゃない?』


 ジェラルドの役に立ちたくてアメリアがせっかく言ったのに聞き入れてはもらえなかった。



『部下に走らせるんだから俺も一応な』


 正式に試験内容が決まった頃、ジェラルドが走っているのをアメリアが見つけたときにはそんな事を言っていた。ジェラルドはなんだか気不味そうな顔をしていたが、あれは何だったのだろう。もしかしたら、距離が短すぎないか確認していたのかもしれない。




 騎士の説明によると、入隊試験の走り込みは、ジェラルドが最初に決めた距離のまま、現在も変わらず続けているようだ。アメリアにとっては毎日走っていた距離より短い。領地を出てからは走れていなかったので気分転換にもなりそうだ。


 アメリアは怪我をしないように準備運動を念入りにしてから走り始めた。






 アメリアが脱落して歩きはじめてしまっている人を避けながら走って行くと、高い塀が見えてくる。そこから先は王宮の敷地になっていて、近衛騎士の練習施設がある区画だ。


 今日は警備騎士団の敷地にアメリアのような一般人が入っているからだろう。近衛騎士の施設に行くための入口には、記憶にあるその場所よりたくさんの騎士が立っていた。


 顔見知りの信頼できる近衛騎士が入れば、ジェラルドに会わせてもらえるかもしれない。期待して怪しまれないように姿を確認していく。制服の違いから皇帝陛下や皇后陛下の近衛はいるが、ジェラルドの近衛が一人もいない事が分かった。ジェラルドが王宮の中にいるのであれば、こんなことはまずない。使用人の寮で門番が言っていた『ジェラルドは不在』というのは追い払うための嘘ではないようだ。


 王宮入口の近くまで来ると、中の様子も少しだけ見えてきた。アメリアは、初めて王宮を訪れた日の事を思い出して、懐かしさに浸ってしまった。

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