第13話 暗号
翌朝、アメリアが目を覚まして2人を探すと、机の上に新聞を広げて何やら話し合っているところだった。
「どうしたの?」
「お嬢様、これを見てください」
アメリアが2人に近づくと、クロが新聞をアメリアの方に向けてくれた。手近な椅子を引き寄せて座り新聞を見てみると、それはゴシップを中心に扱う、半分は嘘と分かっていて楽しむタイプのものだった。
『ペンブローク辺境伯の元腹心が赤裸々に語る! アメリア辺境伯令嬢の皇太子への想い!!』
アメリアは見出しを見て顔をしかめる。
「腹心が内部情報漏らしちゃ駄目だよな」
トビは楽しそうに笑っている。
アメリアは見たくもなかったが、仕方なく新聞記事を読んだ。内容はアメリアが泣き崩れて領地で静養しているということを中心にアメリアに同情するような内容だった。
大切なのはその内容そのものではない。クロが持ってきたという事はこの文章の中に父、辺境伯からの伝言が入っているという事だ。アメリアも辺境伯領が戦火になり、一人はぐれてしまったときのために辺境伯軍独自の暗号については教えられている。
『キケンツヅクアンゼンカクホセヨ』
「『危険続く、安全確保せよ』特別な指示はないのね。お父様にはどこまで報告してあったの?」
2人はアメリアの護衛だが雇っているのはもちろん辺境伯だ。普段はアメリアの意思を優先するにしても、さすがに何も報告していないとはアメリアも思っていなかった。
「王都に入ったときに連絡を入れました。詳細な居場所については伝えていません。王宮の警備状況を知ってからは誰も探し出せないよう細心の注意を払っています」
クロが少し申し訳なさそうに言った。トビには伝えていなかったのか、トビは少し不服そうだ。
「報告は当然の事だから気にしなくていいわ。ただ王都にいると分かっていて避難場所の支持がないということは、やっぱり軍内に何かあるのかしら?」
アメリアは眉を寄せる。
「俺達の護衛能力を信じてくれているだけだと思いたいところだけどね」
トビが苦笑している。こちらから、辺境伯に連絡を取る気がない現状、考えてもこれ以上の事は分からない。アメリアは悩んでもしょうがないので気持ちを切り替えることにした。
「とにかく、試験頑張ってくるわ!」
アメリアは気合を入れて立ち上がる。外で走り込みをするわけにはいかないので、身体をほぐそうとその場で肩をグルングルンと回した。
「お嬢様、やりすぎないようにお願いします。即戦力を探しているとはいえ、あくまで新兵ですから忘れないようにして下さい」
クロは不安そうな顔をしている。アメリアが首を傾げるとトビがケタケタと笑いだしてしまった。
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