東日本大震災があった日~東京在住のある家族の話~ 2

 無事に子供たちと再会した私は、ニュースで福島が津波で大変なことになっていることを知る。


 旦那とは地震直後に一回連絡が付き無事を確認できたが、その後は一切連絡が付かない状態になっていた。

(とりあえず一度ついていたのでよかった、最初のタイミングを逃していたら、不安な時間を過ごすことになっただろう)


 その夜、ようやくまた電話が繋がる。

 電車が止まってるので帰れないかもしれないという話だった。

 だが運のよいことに地下鉄が動いたらしく、それで私の実家のある駅までは行けることがわかった。

 なので旦那は私の実家に一泊することになり、次の日無事うちに帰ってきた。


 旦那は14階で働いていたのだが、地震がおさまってから非常階段に行くと(もちろんエレベーターは止まっている)上から水が流れてきたらしい。

 あとから聞いた話だと、15階より上はスプリンクラーが誤作動を起こし水を噴射したらしい。

 もしそんなものを浴びてしまったら、着替えなど会社に置いていない旦那は3月のまだ寒い時期風邪を引いていただろう。

 上の階の人は本当にご愁傷様としかいえない、服はどこかで買えたのか。そこまでひどく水は浴びてないのか私が知る術はない。


 それからすぐに旦那は近くのコンビニに行き食べ物などを購入したらしい。その時はまだ普通にコンビニにも沢山のものが売っていたらしい。だが二回目に再びコンビニに行ったときにはすべての食べ物や飲み物が売り切れていたらしいので、素早い判断だったと思う。

 それから会社に泊まることも覚悟したが、ベッドなどないし(まだ濡れてないだけましだが)トイレは違う階にいかないといけないし、タバコを吸いに一階に下りたらまた14階に上がらないといけないしどうしたものかと思っていたら地下鉄が動いてくれて助かった。


 私立に通う友達は娘を車で迎えに行ったのだが、いつもなら20分の道のりが2時間以上かかったらしい。

 遊歩道は歩いて帰宅する人たちがずっと続き異様な光景だったという。


 パン屋をやっていた友達の店にも、携帯は通じないし公衆電話も見当たらないから電話を貸して欲しいという人が来たらしい。

 あの時は電波が混雑して携帯より、公衆電話や家電だと通じたみたいだ。


 いまでこそある程度会社側も社員の飲食や毛布なども災害用に用意するようになったようだが、当時はみな会社に残っても食べ物も寝る場所もないし、歩いて帰るしかないような状態だったのだろう。

 家族の安否や家に残されているのが子供だけという家もあるから、どうしても帰らないといけない家もあっただろう。


 あれから子供には学校に残る選択ができたが、非常事態が学校がある日に来るとは限らない。

 もし学校がない日、またはすでに学校が終わって家に一人でいる時にそういった非常事態が起こったら、また家にいられる状態でなくなった場合、どこに避難するべきかどう行動するべきか、今一度家族でよく話し合って欲しい。


 小さかった子供は今は中学生と高校生になった。

 二人とも徒歩で帰って来れる距離の学校に通っているが、余震が続く中帰ってくるのもなにがあるかわからない、だからとりあえず学校に泊まれるのなら、迎えに行くまでは学校で待機するように言っている。

 うちの長男の通う高校は1年生の時、災害時を想定して体育館に泊まり、避難食を食べて過ごすという大規模な訓練も1日するようになっていた。(今はコロナだからお泊まり訓練はしてないかもだが)


 それと今はリモートで会社に行っている人は少ないかもしれないが、もし会社に行っていて、ロッカーなど自分の持ち物をしまっておけるところがある人にはぜひ飲み水食べ物はもちろん、帰宅用に運動靴を一足用意することをお勧めする。

 ヒールや革靴で長時間足場の悪くなった道を歩くのは危険だからだ。


 あれから10年。保存食の賞味期限も切れているものもあるだろう、非常用に持っていきたいものも子供の成長、自分の年齢とともに変わっているだろう。

 これを読んでる方は今一度、昔詰めた非常袋の中身を広げて見直しをしてくれたら嬉しいと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る