第2話 告白①
「小百合と私は恋人関係でした」
「ブフォー!」
噴いた。コーヒー噴いた。
「ゲフッゲフォッ!」激しく咽る俺に、柊さんが慌ててハンカチをさしだしてくる。
「す、すいません」
「い、いえ! ごめんなさい。驚かせてしまいましたよね」
「ま、まあ。そうですね」
え? え? 全然、理解が出来ない。柊さんと小百合が恋人? あれ? 浮気? でも、女だから浮気なのか? 待て待て未だ、あわわあわあわてる時間じゃない。
「私と小百合は高校が同じだったんです。小百合が亡くなった事も当時のグループから聞きました。と、言っても知ったのは通夜も葬式も終わった後だったんで参列は出来なかったんですけど…」
柊さんは顔を伏せると目元を両手で隠した。それを見て、俺は柊さんを信用してみようかと思った。ほんの少しだけ。
暫しの沈黙の後に、柊さんは顔を上げる。目は潤んではいたが、どうやら落涙は耐え切ったようだ。
「小百合とは高校の時にはお互いに面識がある程度でした。あの子は孤高というか、誰かに合わせるとか女子特有のグループ付き合いを敬遠して…寧ろ嫌悪してたので」
柊さんの話は頷けるものであった。小百合からも散々、女子の付き合いは面倒くさいと聞かされていたから。
「高校を卒業して、バイト先で再会してから小百合とそういう関係になりました。一応、言っておきますけど私達は最初から、百合だった訳じゃないです。何かそんな気分になってから、後はなし崩し的な感じです」
「ちょっと待って。高校卒業後からって」
「付き合ってからだと三年ぐらいですかね」
「……俺より付き合い歴は長いのか」
「小百合は裕也さんの事を大事にしてましたよ。一番は裕也さんだ。ってハッキリ言われましたし。そこは安心して下さい」
俺と小百合が付き合う前からの関係だと聞いて微妙な気分になったが、柊さんの安心して、との言葉にホッとする自分に我ながら単純だなと苦笑する。
「あの…まだ、どうも小百合と柊さんが…その…そういう関係だと俄に信じ難いというか何というか」
「そうですよね。突然、言われても困りますよね」
柊さんは顎に手を当てて「ん〜」と思案気になると、何かに思い当たったのか「いや…でも」一人逡巡していた。
「あの…何でもいいから話してもらえたら助かりますが」
俺がそう言うと柊さんは首肯した。
「そうですよね。今日は覚悟して私は来てるんで、話さないとですね」
覚悟。決意した柊さんの言葉に、胸中に不安が宿る。どんな事実が語られるのか。
「ちょっと言い難いんですけど」
そう前置きした上で柊さんが続ける。
「小百合はパイパンでしたよね」
ブフォーッ!!
俺は二度目のコーヒーを噴出した。
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