第38話「絶体絶命の危機」
★ ☆ ★
「よぉし! 快調ー!」
あたしは魔王軍の魔族とモンスターを的確に減らしていた。
魔力が減ってきてるけど――なら、闘い方を変えればいい。
あたしは拳に魔力を纏わせてモンスターたちを殴りまくっていた!
これなら、魔力は最低限で済む! 我ながらナイスアイディア!
ちょっと難しかったけど!
「やっぱりセンセーの教えって実戦向きだよね!」
以前のあたしだったら、魔力が枯渇してきた時点で諦めていたかも。
だけど、これならいくらでも闘える!
戦う意思さえあれば、いくらでも工夫ができる!
そして、あたしだけでなくトヨハ姫様もすごかった。
「やああああああ!」
裂帛の気合とともに敵のダークエルフと渡り合い続けている。
相手も体勢を立て直して魔力をこめた矢を放って反撃してるけど、トヨハ姫様はそのすべてをかわしていた。
「くっ、見た目からは考えられぬ凶暴な剣であるな!? 我が押されっぱなしとは……!」
トヨハ姫様がダークエルフと互角の戦いをしてくれているおかげで、あたしたちは魔王軍に集中できる。
ミナミちゃんと残ったみんなも適確に敵の数を減らしてるし、校長先生もなんだかんだで力を発揮している。
回復魔法で戦線に復帰したカスカセンセーも手裏剣?とかいう変な武器を使って、適確な援護をしてくれてる。いい感じ!
「へへっ、やっぱりセンセーの授業は最高だったよね! 実戦に強くなれる!」
センセーが来る前は、いつモンスターたちが襲来してくるか怖くてたまらなかった。でも、今は――戦うことがこんなにも楽しい!
「よーし、このまま一気に敵を壊滅させちゃおう!」
あたしは巨大なオークを右ストレートで粉砕する。
よーし、楽勝! 次!
と、思ったあたしだったけど――。
「……勇ましいことですねぇ。気に入りましたよ、その元気のよさ」
背後にゾッとするような凶悪な気配がした。
あたしは反射的に、魔力を纏わせた回し蹴りを放つ。
「おっと! とんだじゃじゃ馬ですねぇ」
あたしの蹴りは相手の右手で防がれる。
というか、爪先を右手で掴まれちゃった!
「くっ、放せぇ!」
「はは、こういうお転婆娘にはお仕置きが必要ですねぇ」
この人はダーノの引率教師ノワ! というか魔皇子だっけ?
校庭でセンセーと戦ってたはずなのに!
「いきなり蹴りを放ってくるようなお行儀の悪い生徒は、わたしの学園にはいませんよ? まぁ、全員、わたしの言うことしか聞かないようになってもらったたわけですが……ククク」
気持ち悪い笑みを浮かべながら、こっちをヘビのような目で見てくる。
もう本っ当に、無理! この人、気持ち悪すぎ!
「放しなさいよ! この変態教師!」
「くふふ、これぐらい口の悪い生徒のほうが操りがいがあるというものですねぇ……それでは、存分に楽しませていただきましょうか! 魔霊傀儡(まりょうくぐつ)!」
細かった目がカッと開かれて――邪悪な眼光が向けられる。
その瞬間――全身に異物が入ってくるような気味の悪い感触に襲われた。
「な、なに……これ」
「あなたは……わたしの操り人形になるのですよ……死とともに、ね?」
う。
「あぁあああああああああ――!?」
まるで心臓が握り潰されるかのような激痛が起こる。
死ぬ。あたし、このままじゃ本当に死んじゃう。
「ははは! 死ね! そして、わたしの眷属となれ!」
死んで、こいつの操り人形に……なる?
そんなの、嫌だ……やだやだやだ!
「サキ!」
「サキさん!」
ミナミちゃんとトヨハ姫様が、駆けつけようとするも――。
「わたしの邪魔をしないでくれますかねぇ」
ノワの身体から分身が複数生まれて、助けに来てくれたサキちゃんとトヨハ姫様の前に立ちふさがる。そして、手を向けて衝撃波を放った。
「きゃあぁ!?」
「くぅうっ!?」
ふたりはそのまま後方に激しく吹き飛ばされてしまった。
「邪魔者はいなくなりましたね。さっさと死んでわたしの人形となってください」
「……い、や……あんたなんかの操り人形になんかぁ……ぐふっ……絶対に、なら、ないんだからっ……ぁ……」
だんだん気が遠くなってくる。
……って、本当に、あたし……このまま死んじゃうの?
そんな、まだ……やり残したこと、いっぱいあるのに……。
いやだ……助けて……センセー……助けてっ!
「……センセ……助けてっ……」
叫びたいのに、もうあたしの口からはかすれた声しか出なかった。
「ははは、がんばりますねぇ! でも、これで最後だっ!」
魔力がこめられて、全身がバラバラになりそうな衝撃が走る。
も……これ……本当に……む、り……かも……。
センセー、ごめんなさい、あたし、負けちゃう……。
「ぬ――っ!?」
諦めかけたとき、目の前のノワは慌ててあたしの足から手を離して後退する。
一瞬後には――ノワのいた場所に向かって凄まじい斬撃が放たれて地面が真っ二つに裂けた。
「すまん、遅くなった」
あたしの前に現れた頼もしい背中は――もちろん、センセーのものだった。
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