第37話「魔剣奥義と虚実幻影」
★ ☆ ★
「くっ、魔王軍だと!? これが狙いだったのか?」
校庭に乱入してきた魔王軍を見て、俺は呻いた。
大規模空間転移魔法なんてメサには使えないと思っていたのだが。
それとも、なにかアイテムか?
「くはは、なんだかメサがあなたへの怒りを募(つの)らせていたようなので軍事用のレア魔道具を拠点に置いておいたのですよ。あなたの迂闊な行動により、この学園は滅びを迎えるわけです!」
「ちっ! ほんとにおまえはロクなことしやがらねぇな! もういい! おまえをぶっ倒してメサの奴も止めれば無問題だ!」
次から次へと俺が撒いた種が悪い芽吹き方をしている。
だが、それは全部刈り取る!
滅んだ九十九回の世界も、超高難易度だが、時間を巻き戻す魔法を使ってもう一度救い直す! そして、もう二度と世界を滅ぼされないためにノワを抹殺する!
「魔剣奥義……無限無双」
俺は、自らの分身を百体ほど作り出した。
ソード・アローの自分バージョンといったところだ。
これで、相手が分身魔法を使っても相殺できる。
そして、なによりも相手の逃亡を防げる。もう二度とこいつを逃がしはしない。
「ふふふ、最初からそれを使えばよかったんじゃないですかねぇ? あなたは詰めが甘い。だからわたしに九十九回も世界を滅ぼされることになる」
「その減らず口も、おしまいだ! おまえは俺を本気で怒らせた!」
こいつだけは絶対に許せない。
「百回も魔族を滅ぼしておいて勝手な言い草ですねぇ! 我々魔族にも親があり子もいる。根絶やしにされた魔族たちの恨み、思い知るがいい!」
ノワの目がカッと見開かれるとともに――背中から黒い翼が左右に広がり始めた。
その場にいるノワの分身たちも含めてだ。
「いちいち変身しきるまで待つかよ!」
俺は自らと分身を突撃させる。そして、変身途中の分身を次々と切り伏せていく、が――それでも、数十体が完全体となって、こちらに反撃してきた。
両手の短剣にはありとあらゆる負の属性を帯びている。
「らあああああああああ!」
だが、いつだって先手必勝。臆(おく)したほうが負けだ。
俺は魔剣を繰り出して、次々と分身を両断し――最も魔力が強い本体と思われるノワに肉薄する。
「ふはは、わたしを斬れますかねぇ?」
「斬れるに決まってるだろうが! 逃げられると思うな! 『瞬速突』」
加速魔法・肉体強化魔法を瞬時に使いつつ、爆発的なスピードで相手を貫く魔剣奥義。
これで仕留められなかった奴はいない。かつて魔王ですら瞬殺した技だ。
「――なっ!?」
俺の魔剣は、確かにノワを貫いたのだが――手応えが全くない。
黒い光の粒子となって、霧消していく。
つまり――幻影だ。
「くっ……どこにいきやがったっ」
俺が本体と分身を見抜けないなんて、ありえない。
ありえないのだが――。
「ははははは! 百回世界を救ったといっても、魔法に関してはわたしのほうが上のようですねぇ。そりゃそうだ。魔族が使うから魔法なのですから! 人間風情が魔法を使うというのが、そもそも矛盾しているのですよ!」
まだ数十体残っているノワたちが、一斉に哄笑する。
「なら、全員倒せばいいだけじゃねえか! 魔剣奥義・剣閃修羅!」
俺の分身たちは、それぞれ奥義を繰り出してノワたちに襲いかかる。
俺自身は、あえて攻撃をせずに状況を観察することに努めた。
そして、俺の分身たちはすべてのノワを葬り去ったのだが――。
「っ!? しまった!」
精密探査魔法を使って、ようやくわかった。
ここにいる全員が――分身(フェイク)だ。
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