第36話「襲来するメサ軍を迎え撃つトヨハ・サキ・ミナミたち」
「なっ!? どういうことですか!?」
訊ねるトヨハ姫様に、カスカセンセーは説明していく。
ところどころ怪我をしていて、血が出ていた。
「忽然(こつぜん)と魔物の軍隊が現れたでござる! 拙者ひとりで食い止めようとしたでござるが多勢に無勢……深手を負ってしまい、面目次第もござらん……うぐっ」
傷がだいぶ深いようで、カスカセンセーはその場に崩れるようにして倒れた。
「しっかりしてください、カスカ先生! 今、わたしが回復いたしますから!」
ミナミちゃんが回復魔法を使ってカスカ先生の傷を癒していく。
と、そこで――。
――ウォオオオオオオウ……!
モンスターたちの雄叫びが聞こえてきた。
続いて、地響きとともに学園に向かって魔物・魔族の大軍が押し寄せてくる。
「くっ、まさかこのタイミングで魔族の軍勢が攻めてくるなんて……! かくなる上は、わたくしひとりでも戦います!」
トヨハ姫様は腰に佩いていた剣を抜き放つ。
「トヨハ姫様、あたしも戦います!」
「わたしも、戦わせてください!」
クラスメイトのみんなはヘロヘロだけど、あたしとミナミちゃんにはまだ余裕があった。センセーに加勢したいけど、今は魔族を食い止めないと!
「ありがとうございます。でも、無理は禁物です、あれだけ戦ったあとなのですから。ここは任せてください。わたくしもナサト様に鍛練をしてもらった身。その力を今こそ発揮いたします」
トヨハ姫様と話しているうちに、校庭に魔物の軍勢が侵入してきた。
先頭にいるのは……ダークエルフ?
「許さん、許さん、許さんぞぉおーーーー! お兄ちゃん……いや、ナサトとかいう奴を出せ! 絶対に我が天誅を下してやる! あいつを亡き者にして忌々しい記録を永遠に削除してくれる!」
なんだかすごく怒ってるっぽい!
「センセー、なにやったんだろ?」
「なんだかわかりませんが、すごい剣幕ですわね」
あたしもサキちゃんも、頭に?を浮かべる。
「ナサト様を悪く言う者は誰であろうと許しません!」
一方でトヨハ姫様は剣を構えてダークエルフに言い返した。
「ええい! あんな魔族以上の極悪人を我は見たことない! 与えられた恥辱、必ずや晴らしてくれる!」
ほんと、センセーなにしたんだろ?
ま、いいや、話せばわかる……とは思わないけど、言葉が喋れるみたいだから話してみよう。こんな状態で戦うのは不利だし。
「あたしはセンセーの……えっと、ナサトセンセーの教え子のサキ。ねえ、センセーなにしたの? あたしからするとセンセーは悪いことするような人には見えないんだけど」
続いて、ミナミちゃんも擁護する。
「そうですわ! 先生が極悪人だなんて聞き捨てなりません!」
だが、ダークエルフは褐色の肌を赤くして怒っていた。
「お、おまえらに説明する義理はない! ともかくナサトを出せ!」
「出せっていうか、センセー、思いっきり戦ってる最中だよ?」
「なに?」
そこでようやく目の前のダークエルフは、センセーが魔皇子と校舎の上で戦っていることに気がついたようだった。
「なっ!? 魔皇子様っ!?」
驚いたように目を見開く。
と、なると――この襲撃は示しあわせたものじゃないってこと?
「というかさ、なんで魔皇子がダーノ側の講師をやってたのか意味わかんないんだけど! こんな人間の若い子を操って戦わせるとか、そちらのほうが極悪人だよ!」
「なに……? 魔皇子さまがそんなことを……? い、いや、まさか行方不明になっていた魔皇子さまがこんなところにいるはずが……」
ダークエルフが迷っているおかげで、こちらの時間も稼げている。
この間に少しでも魔力を回復させておきたい。
そして、この騒動を聞きつけて兵士の人たちも校庭に集まってきた。
クラスメイトのみんなも、何人かは戦闘可能状態に戻ってきたみたいだ。
「ぬう、かくなる上は、魔皇子さまと協力してこのままこの国を滅亡させてくれるわ! そして、あのナサトとかいうロクデナシを八つ裂きにしてくれる!」
すごい場当たり的なダークエルフだった!
「こんなことであたしたちの学園も街もセンセーもメチャクチャになんてさせないんだから! あたしたちが相手になるよ!」
あまり会話を引っ張れなかったので、あまり回復できなかったけど。
どうにか持ちこたえてみせる!
「ええい、ものどもかかれ! 汚れきった人間どもを粛清するのだ!」
ダークエルフが号令をかけると背後に控えていたオークやリザードマン、鳥型のモンスターたちが一斉にこちらに向けて攻めてきた。
「ナサトさまに鍛えていただいた剣技、見せてさしあげます!」
トヨハ姫様は剣を手にモンスターたちに臆することなく立ち向かう。
目にも止まらぬ速さでオークやリザードマン型の魔物を斬り刻んでいった。
「すごい、トヨハ姫様!」
「トヨハ姫様、援護いたしますわ! サキ、わたしたちも戦いますわよ!」
センセーに稽古をつけてもらっていただけあってトヨハ姫様の剣技はすごかった。 こんなモンスターの大群が来たらピンチだと思ったけど、これなら乗り切れそう。
「うん、学園はあたしたちが守るんだから!」
あたしとミナミちゃんは魔力球を作り出すとトヨハ姫様に向かってくるモンスターに次々とヒットさせていく。
「ありがとうございます! おふたりとも! 心強いです!」
トヨハ姫様は、あたしたちが弱らせたモンスターたちをバンバン仕留めていった。
そして、魔力が回復してきたクラスメイトたちも魔法で援護をしていく。
センセーのおかげで、あたしたちはだいぶ集団戦というものに慣れていた。
これなら、もうモンスターたちの相手も怖くない!
「ええい、小癪な! こうなったら我の魔法矢の餌食にしてくれるわ!」
ダークエルフが矢を番えるも――。
「させません!」
トヨハ姫様が、一気に間合いを詰めてダークエルフに斬りかかる。
「ぬうっ!?」
「わたくしはこの学園を! 生徒たちを絶対に守ります!」
トヨハ姫様はダークエルフに矢を放つ隙を与えることなく、次々と剣を振るう。
「くっ、このっ、人間風情がっ!」
ダークエルフは矢を放つことができずに、後退していった。
やっぱりトヨハ姫様強いしカッコいい!
あとやっぱりおっぱいデカい! すっごい揺れてる!
「みんなー! トヨハ姫様がダークエルフを足止めしているうちに、モンスターたちを減らしちゃおう! ほら、校長先生もボサッとしてないで戦う!」
「むお? お、おうっ!」
ボーッとしていた校長先生も、ようやく戦闘体勢に入った。
これでも貴重な戦力なんだから、しっかりしてもらわないとね!
「みんな、がんばろう!」
あたしはみんなを鼓舞しながら、再び魔力を手に宿らせていった――。
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