第19話「エルフ耳を触るためにダークエルフを追い詰める最強魔導剣士」

「ますます、わけがわからぬ。おまえは、本当にいったい何者なのだ」

「だから、言ったじゃないか。救世主だよ。百回ほど世界を救ってきた。つまり百回魔王を倒してきたってことだ。で、転生を繰り返してもチート魔法でステータスを引き継いだ上に急速成長で最も体力と気力が充実した十七歳になっている」


 俺は懇切丁寧に、説明してやった。


「し、信じられぬ……そのような魔法があるとは……」

「知らないのは当然だよな。俺が創ったオリジナル魔法なんだから」

「魔法を創造だと……? いったい、どこまで規格外なのだ……」


 もはやメサは呆気にとられたように、俺を見てくるばかりだった。

 あまりにも俺が格上だということに、気がついたのだろう。


「ま、そういうわけで侵攻は諦めろ。朝駆けだろうと夜討ちだろうと、俺の張り巡らせた結界に引っかかれば瞬時に対応するからな。寝ていても、瞬時に起きれるようにタイマー魔法なんてものもあるから」


 この魔法さえあれば、目覚まし時計いらずだ。

 惰眠を貪りたいので、あまり使いたくはないのだが。


「でも、安心しろ。今回、俺は積極的に攻勢には出ない。あくまでも生徒たちの育成をメインに考えている。いずれ俺の生徒たちがおまえら魔族や魔王を倒すから、それまで首を長くして待っていろ。あ、おまえだったら降参するなら仲間にしてやっていいぞ。エルフ好きだし」


「誇り高き魔族であり魔王様の信任厚い我が、おまえに降参して仲間になるだと!? 冗談も、たいがいにしろ!」

「冗談じゃないんだがなぁ。エルフ好きだし」


 これは嘘偽りのない本音だ。

 百回転生する中で、俺は必ずエルフと仲よくなってきた。

 ついでに言うと亜人とかのモフモフした耳も大好物だ。特にネコ耳。


「というわけで、おまえのエルフ耳を触らせてもらうか」


 俺は両手を開いてワキワキさせながら、メサへ近づいていく。


「くっ!? くるなぁっ!」


 メサは魔法矢を具現化すると、超高速で放ちまくってきた。


「おぉおっ!?」


 ひとつひとつの威力は弱いが、あまりにも数が多い。

 ある意味、さっきの多重属性の魔法矢よりも厄介だ。


 こちらも魔剣を神速で動かして、矢をすべて弾いていく。

 ついでに、軽く体全体にバリアを張ることで、かすり傷ができることも防いだ。


「我の奥の手『千本矢』まで通じぬとはっ……! ……はぁ、はあっ……!」


 魔力だけでなく体力も消費が激しいらしく、メサは肩を上下させて荒い息を吐く。


 千本の矢も炎・雷・毒の属性に分けて、それぞれ四百・三百・三百と付与していたから大変だったろう。俺には無駄だが。


「俺は魔導騎士だが、そっちは魔導弓手といったところか。ダークエルフは普通弓矢を使わないから珍しいよな。ますます気に入った」

「我がどんな武器を使おうと勝手であろうが!」

「いいな、そのツンツン具合。こういう気高いエルフをデレさせるのもありか。今回の俺は戦闘以外も楽しむ方針だからな」


 俺は魔剣を霧消させると、再び両手をワキワキさせながらメサに近づいていった。

 ますますメサのエルフ耳を触りたい欲求が強まったのだ。


「くっ、くるなっ! ……くっ、うっ!? 矢がっ……」


 再び強弓を構えて魔法矢を具現化させようとするが、矢の形になる前に魔力は霧消していった。


「さすがに魔力欠乏か。千本も一気に放っちゃあなぁ……くく……まぁ、なにも命を獲ろうってわけじゃないからな。大人しく俺にエルフ耳を触られればいいんだ」


 邪悪な笑みを漏らしながら、ゆっくりとメサとの距離を詰めていく。

 もう世界のどこにも俺のことを止められる奴はいない。


「くっ、皆の者、かかれっ!」


 追い詰められたメサは、部下たちに命令をする。

 一斉に、魔族の軍団が押し寄せてくるが――。


「邪魔だ。寝てろ」


 俺は、広範囲睡眠魔法を使って、メサ以外の魔族たちを悉く眠らせた。

 やろうと思えば命を刈り取ることもできたが、エルフ耳を楽しむ前に血なまぐさいのは興醒めなのでやめておいた。


「お、おのれっ!」


 ついに戦闘距離に入ったところで――メサは、強弓で殴りかかってくる。


「弓で攻撃するなんてナンセンスだな」


 それを軽く片手で受け止める。

 まぁ、矢を具現化できないとこうするしかないか。素手よりはリーチがあるし。


「エルフにとって大事な弓を壊すのはかわいそうだからな、穏便に手放してもらおうか。……ほいっ、催眠魔法」


「なっ……!? う、あっ……?」


 俺は両目から怪光線じみた魔法を放って、メサを催眠にかけた。

 これなら仮に両手が塞がったとしても使えるのだ。


 目や口から魔法を使う化物がいたので、マネして習得してみたのだ。

 俺の辞書に不可能という文字はない。

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