第32話 もう一人の大龍龍祐


向こうから琴音を連れ羽奈が

やってくる。


羽奈は、二人に気ずいて驚き、

「エッ」

と言って、引いたが、気を取り直し

たように


「お二人共、お久しぶり。」


そう言って御曹司殺しの微笑みを

投げた。

甘いまろやかな毒がまわる。


亭主でさえ、よだれがでそうなのに


二人が何も感じ無いわけが無い。


「龍祐、子供達を見ててくれない?

ちょっと、厨房を手伝いたいの?」


「ああ、分かったよ。」


羽奈は奏と陽太に


「ごゆっくりね。」


とニッコリとして愛くるしく言った。


「じゃあ私も行くわ。」


桃乃を龍祐の右腕に琴音を

左腕に預け姉妹は、

小走りで走って行った。



奏と陽太と俺で、去る妻と里奈を

見送りながら


「ああ、綺麗だ。」

3人でハモったのには笑った。


陽太も奏も

「イヤミなぐらい子供産ませや

がってよけい、諦められない!」



そう冗談とも本気とも取れる口調

で言った。



奏はあの日、自分の結婚式の日から

妻を愛そうと努力していた。

しかし羽奈をどうしても諦め

られずにいた。



結婚しても羽奈を求め、

狂おしくなるのがつらかった。

御宮司とも別れていたなんて‥


そして夫に選んだ奴は、

先輩の中でも、

男連中の中で恐れられてた


大龍龍祐‥とは。

それに彼は羽奈の前では猫

のようだ。

大龍家の虎と噂高い男のはず

なのに。


「あのねパパー」


琴音が龍祐に言った。


「何だ、お姫様、おねだりか?」


龍祐と羽奈の子供を羨ましそうに

見っめる2人に優越感を覚えながら、

愛する2人の我が子を抱きしめる。


「桃乃とお昼寝してたらね~んとね

 お地蔵様がね~出て来てね龍?

 わかんないけど、龍が起きるんだって」


桃乃が言うには


「パパー早くDVDママと見ないとね

かなで?か、陽太に、家族変わるよって言われた。」


耳に小さな両手で口を挟んで桃乃は

ハッキリ二人の名前を言った。


龍祐は青くなり


「まさか‥あの龍?‥か?」


独身の時、北海道で出合った宝石商から半ば無理やり購入した、金の龍だ。


女の子に12月25日に渡すはずが取りに来ないので、渋る店主に無理やり買い付けた


見た途端、買わなきゃ後悔すると思った。


別に欲しかった訳じゃない。

なぜか、指輪の方が、俺を呼んだ

気がした。


「分かったよ。琴音、桃乃、

明日みんな で見ような。

 お家のパーティーのとき・・・な!!」


「うん。

うん。パパー約束だよ。チュー。

           チュー。」


愛する娘からキスをもらってしばし

でれーっとなったが隣の元彼達は

凄く羨ましそうにしていた。

がニヤリと笑った気がした。


子供を産ませたからといっても

まだ羽奈の争奪戦は、終わって

いない。

まさに今からが始まりなのか?



華やかなパーティーが終わる頃

子供達はぐっすりと眠っていた。



マンションに帰ると、子供達を

ベッドに運び夫婦の時間になり


珈琲を入れる羽奈に子供から聞いた

夢の話をした。


「あれ、桃乃だけじゃなく

琴音も言ってるの?

少し前に本屋さんで買った

“嫁探し地蔵と龍”って言うのよ。」


羽奈はクッキーをパクリと口に入れて本棚から抜き取り差し出した。


 龍祐はDVDをセットし羽奈と並んで

ソファに座りリモコンを操作した。


嫁探し地蔵と龍


昔々

ある人たちには最近かもしれない。

赤いよだれ掛けを掛けて丸い顔


白いよだれ掛けを掛けて三角の顔


黄色よだれ掛けを掛けて四角い顔


お地蔵様は若者達の仲を取り持つ

有り難い存在でした。 

このお地蔵様は、一生に1度

一回きりの、お願い事しかできません。


赤、白、黄、一人一体の、

お地蔵様を選びます。

心から御願いしたい人との縁を結び

たいと思ったときに祈れば、

願は叶うと言われていた。


ただ嫁がほしいだけなら 

お地蔵様が、探してきた娘と 

縁を結んでくれるのです。


ある日、


ひとりの若者が赤いお地蔵様に

祈りました若者の名前は、

奏( ⊙⊙)!!( ⊙⊙)!!

あの子を、どうしても嫁に欲しい。


またある日


ひとりの若者が黄色い地蔵様に、

祈りました、若者の名前は、


陽太Σ(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー!! (`・д´・ ;)


あの子と、どうしても、

結婚したいと・・・

 

そして叉ある日、白いお地蔵様に

祈りました。

あの子とどうしても、

添い遂げたいと、若者の名前は

龍祐(⦿{}⦿)(`⊙д๏)!!



三体のお地蔵様は丸い頭、三角の頭

そして四角いあたまを

なで上げて悩みました。



お地蔵様が悩むのは、三人の若者達

が選んだむすめは、同じ人物だった

のです。


お地蔵様はとりあえず

女好きの男にはそれなりの



寂しがり屋の男にも、それなりの



俺様気質の男にもそれなりの


女性を選んでためしました。


女好きな男は直ぐ駄目になり

寂しがりの男も、然り

俺様気質の男だけは真面目に娘を

求めました


娘の婿も決まりヤレヤレと

安心な笑顔をみせました。。


何故なら若者達がほしがった娘は

お地蔵様の世話をしていてくれて

本当に優しい娘でした。


お地蔵様は100組を結と

叉違う時代へ遡ったり未来へ

飛んだり新しい100組を結ぶため

飛び回ります。


しかし普通はそのまま

時代、時代を飛び越えて未来へ

行く事もありました。


そこへドラゴンが降りてきて、

《《《俺は、お前たちの世話に

ならず、愛する妻を娶った

ぞ》》》》


龍はドグロを巻くように天に

急上昇して雨を降らした。


ふーっと雨に息をかけると

たちまち金の指輪になった。



メスの一回り小さな龍が現れ

メスの龍も一回り小さな

指輪になった。


いいかあ、俺達は生き過ぎた。

しばらく寝る事にする。



龍の名前の付く男に指輪を預けよ!


俺が目覚めるのは

12月25日0;00

そう言って指輪は動かなくなった。



龍が目覚めると15年時代が

戻ります。


その時、誰がどう動くか、

わからない。

つまり時が戻ると言う事は龍の

指輪に関連した人物!



正確には15年前から今日の一秒前の

時間の間を狙って戻りたい時間に

三時間龍の指輪に関わった人物だけ戻れると言う事なのです。




龍の指輪に携わったものなら

失敗したことをやり直せる。


未来が、変わると言うことです。

いそぎなさい。


最後に結んだ縁が、過去に戻り

違う者と結ばれるかもしれない。



それを見届けなければならない。

三体のお地蔵様はまた、

三角、丸、四角の頭をなで上げて、

ただただ祈りました。



最後に娘が選んだ男との縁が

間違わないようにと…


お地蔵様が願いをかけるのは

やはり

神様しかおられまい。


急げ急げ聖夜の夜は明ける。

長い長い龍の夜も明ける。


龍王はもう直ぐ目覚める。



DVDはここで終わっていた。



二人はタヌキに負かされた

ような顔をしていたが

羽奈が突然青い顔をして思い出した。

大学1年の7日10日

今日の奏に合った。


今思えば、あれは確かに今日合った

奏だった…。

服装、髪型、寂しそうな顔。

何より、頬を撫でる仕草!

間違いない。

あれは奏だった。


カフェのエレベーターの前で



「相変わらずきれいだな。

愛してるって言ってくれた。」



そして奏にロパクで


「頼んだぞ、俺はお前だ‼

って言っていた。」


「マジで。」


「うん。どうしょう。あの時が

今なんだわ。

龍祐と結婚したのに

無しって事になっちゃう。


記憶も無くなる のよね。龍太郎と

龍乃祐、琴音、桃乃を守 らないと。」



「じゃあ15年前にもどろう。

羽奈をまず俺達で、

俺に合わせよう。」



「多分奏は羽奈の言うカフェに帰っ

ている。御宮司は羽奈と出合った

場所に帰るだろう。

 その前の羽奈と俺を合せよう。」



「待って‼7月10日じゃ遅すぎる。

15年前の秋、陽太とあった日

なら間に合うかも!」



今日の奏に合ったのなら龍が

起きるのは1日ずれて

24日の0;00だ、


多分時間にズレがおきている、


龍がどの国で眠りについたかだ。

空間の歪みかもしれない。

原因は分からないぞ!!」



「ママ、ママ」桃乃が起きてきた。



「あの時は何か分からなかったから

 どうしょう龍祐!!」


携帯持って行こう。

そしたら俺達も信用すると

思うから、桃!乃も連れて

行きましょう

寝かせている時間はないから。」



「その日は奏、陽太に会っ

たんだよな。

 いっかわかるか?」


「うん。15年前の11月25日、

パパとママの給料日


だった・・・と思う。」



ガタガタガタと地面が揺れて、

突き上げて来た。


\ボーン/


🐲⚡⚡⚡⚡

《《指輪を持っているのは

おまえかぁぁぁ》》》》

ミシミシミシと土地を割るような

音がする。

二体の龍が現れたシュルシユルシュルと高くあがり窓の外から睨んで来る。



羽奈はひるまず答えた。


「私よ。」

羽奈は思いきり大きな声で言つた。


龍は太くばかでかい、

顔を近ずけ金色の目をギヨロリと

右に左に動かした。


》》⚡⚡⚡


羽奈を守ろうと龍祐が前に出る。

「俺だ 大龍龍祐 だ !! 」


「お前から預かった、指輪は、

 大事に持っている。」


こんなに風が吹いて、荒れて

要るのに羽奈や龍祐、桃乃は

飛ばされない。`


まるでスクリーンを見ている

かのようだ。


⚡《《《《《世話になったなああ

お前達にはぁ、⚡やり残した事は⚡

ないかあああ》⚡》⚡》⚡》


ゴオオオオーォォと、

けたたましい

音と供に稲妻が走り龍は、


《《《お前達に指輪を守った⚡

礼をするー⚡15年遡る事を許そう。

何年に帰りたいか🐲⚡ーそこで

やり残した事をしろー⚡⚡》》》




のぶとく地をはうような地引声で

龍は睨みつけるよう顔をして

叫んだ。



15


龍祐が叫ぶ



🐲🐲


願えばその日に戻れるぞー⚡︎

願えーぇぇ⛈️⚡💦

そうすればぁー時間は回り

お前達の時間はぁ☆…☆…☆…☆⚡️

・・・も・・ど━━━━━━・・・る⚡️





一緒に現れたメスの龍と、

絡み合うように⚡天へと登って

行った。⚡


渦巻きは止まら無かったが目をすこし⚡明けると風景が動いていた。


初めは早くそしてグルグル

回るよう・・・に・・


何回か回転して足に感触を感じ

ボヤけた風景が鮮明になった。


羽奈達はゲーセンにいた。


「2人とも大丈夫か?」

龍祐は2人を抱きしめ怪我して

いないか確認した。


「うん大丈夫よ龍祐。」



「パパ面白かったー

遊園地みたいー💓」


桃乃は無邪気に笑った。

桃乃の手をにぎると龍祐は言った。

「俺は荒れていた陽太を探して、

良くこのゲーセンに来ていた

んだ陽太が心配で。」


龍祐はキョロキョロと龍祐を探した。

向こうから高校生の集団が

やってくる。

紺色の、ブレザーに茶色と青の

横斜めの交互に入った模様の

ュルュルなネクタイ!


だらしなく見せてカッコイイ

腰パン‼


むっつりと不機嫌さを醸し出す姿は

キャバクラで出合った時の龍祐を

思わせる。


「いた。俺だ!」

龍祐は直ぐ飛び出した。


「ゴラァ、龍祐顔かせや!」

突然声かけられ、高校生龍祐は


「んだあとお!! もういっぺん

いってみろおや!! オッサン!」


「ん、だとぉガキの癖に

 粋がるんじゃねーよ。」


と龍祐の胸ぐらをつかんできたが

羽奈を見た高校生の龍祐は止まった。

目がハート印になっていた。


「ママァ~」

 桃乃を見て高校生龍祐は

「チッ!」

 と舌打ちした。


後ろから女の子が顔を出して

「龍ちゃん。」

と腕にしがみついていた。



きっと花香さんだ


「ウゼエよ。離れろ!」

高校生龍祐は腕を払いのけた。


龍祐が無理やり、高校生龍祐の

雁首をひっぱり、近くのカフェに

連れてきた。


龍祐の当時すきだったもの

カルボナーラと

フレンチトースト

(フルーツと生クリームたっぷりに

チョコ)がまぶしてある甘々な奴。


当時毎日のように食べていた。

高校生龍祐は


「何で?何で俺の食べたい物が

分かるんだ?」



「ふん。俺はお前だからだ。」



 桃乃はミルクとサンドイッチ

私達もコーヒーをたのみ

フレンチトーストを食べた。


龍祐は事細かに

高校生龍祐に私達が未来から、

来た事を話した。


この子は龍祐の4番目の子供である

こと、桃乃は羽奈のパンケーキの

バナナをホイップクリームにタップリ付けて口一杯にぱくついている。


桃乃の、口に付いたホイップを

ペロンと人差し指ですくい上げ

パクッと龍祐は自分の口に入れた。


この子は、お前の4番目の

未来の子供だ。

そしてその未来が危うい事を

話した。


そして,高校生羽奈に早く

合わないと陽太が先に合って

しまう事

その未来も壮絶だと説明して

携帯のアルバムを見せた。


初めは信じられなくて

怪しんでいたが

最終的には信用してくれた。


あの日、陽太と教室に来たのは

蘢祐だった。

日本的な美男子、

荒い髪を撫でつけた不機嫌そうな

彼。


あの日、マジマジと眺め実帆と

歌音がカッコイイと叫んだ大龍先輩


今は夫となり4人の父となった龍祐

学生の頃はわからなかったけど

不機嫌さの中に暖かさが溢れて

いる事を今は良く知ってる

モテモテだったはずだと

羽奈は思った。

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