第29話 弱いからこそ強い。

その日から、羽奈のアパートと

マンションを行き来し3ヶ月が

過ぎた。


龍祐はずっと説得を続けやっと

決心してくれた羽奈と、子供を

つれて大龍本社へと乗り込んだ。


下から見上げる本社は子供達には

デカい怪物のように見えたかも

しれない。


しばらく

「おー、おー、しゅごい。」

「うわぁ~ヤバいれす。」

の連発。



一歩会社に入ると社員達は

道をあけ

両際により、頭をさげた。


それを見たチビ達もペコペコ

ペコペコと

両端の社員に、頭を下げながら

歩いている。

プフフ


俺は笑いを我慢しながら噴き出し

そうなのを社員の手前我慢つつ

気難しい顔になっていた。


目の前に広がる1本道を右に

龍太郎、左に龍乃祐、小さな

丸っこい手を握り

エレベーターへ進む。


チビたちに歩幅を合わせ

ゆっくりと歩く。

物珍しく、好奇心満載で

キョロキョロ、キョロキョロと

顔が忙しそうだ。


「フッ、可愛すぎる。」

龍祐の呟きに双子は顔を上げて

龍祐を見る。


社長室の秘書に、二人を預け

会長室へ向かう。



木目の磨かれたドアに指紋認証して

開ける。




最初龍祐を迎える笑顔が羽奈を

見て凍りついた。急に不機嫌になり


「何のご用ですか?」と

ぶっきわらぼうな挨拶に変わる。



「用があるのは俺だ。」

父親に向かい声をあらげる。


「親父! いい加減、

俺等の事認めろ!! 」


龍祐の父親、龍馬は呆れた顔をして、


「あなたは確か出て行くと仰った。

 なぜ今頃?


和花は龍祐を待っているし


二人は結婚します。

あんな純情な娘をいっまで

待たせるんだ。」



「は?純情?? オヤジこれみろよ。」



バサバサバサとデスクの上に

和花の男がらみの写貢をぶり巻いた



「しらなかったなぁ~俺は、

ゴメンだ、

親父はこんなのが、好みなのか?

成程‼」



オヤジは慌てて、そして驚いていた。

AVに負けず劣らずの艶めかしい

写真の数々だ!!


「金目当てはこっちだ!」


龍祐はDVDを父親に投げた。


「激しいから気を付けて

見たがいい。」



「‥ポカーン」


「それと和花に伝えてください。

 羽奈と子供達に何かしたら、

潰すと、俺を怒らせて

生きていられるか・・・

びみょうだな‼

 お前のやろうとしてる事は、

調べあげてあると。」



「と、兎に角 龍祐の相手は此方で

探しますお引き取り下さい。」


「なに言ってんだよ。」


「龍祐、騙されるな、金目当てだ!

 目を覚ませ。

 ふさわしい令嬢はまだいる。

 親の言う事を聞け!」

    

「はぁ~💢💢」

とびかかりそうな俺を羽奈が止める。


「全く32もなって、愛だの恋だの、

いい加減にしないか?

普通なら子供の

1人や2人いる年頃なんだぞ!! 」

不機嫌さを全開にして龍馬は俺達を

睨みつけた。


ドテンバタン

「コオラァ、パパを虐めるな、

       いじめるなぁ」


慌てて羽奈が子供等を止める。



秘書が

「お二人ともお元気過ぎて、

騒がれまして、手に負えませんで

お連れしました。

元気よすぎます。」


オヤジは目をひんむいて、チビら

を見て驚いていた。


元気全開な2人は龍祐を守ろうと

龍祐の前に、かばうように立った。


「ああっ、すみませんでした。💦」


羽奈は、申し訳なさそうな

顔をした。秘書は


「いえ‥さすがに大龍のお子ですね。

ハンパないですよ。血は争えませんね。」


「え、ええ‥でも。

ちがいますから・・」


羽奈は秘書に申し訳なさそうに頭を

下げた。


羽奈は、チビ2人に‥ニッコリ

微笑んで言った。


二人ともよく聞いてね。


「ママね・・・パパ欲しくて

間違っちゃった。」


「え?ママ・・・間違っちゃったの?

パパを・・・‼

パパはパパじゃないの?本当に?」


「うん、間違っちゃった。」


龍祐は驚いて、棒立ちのまま羽奈を

見据えた



「ママ慌てん坊さんじゃない。

 また、やっちゃったゴメンね。

此処にいる

 おじさん達に、謝らなきゃね。

 龍太郎も龍乃介も謝ってくれる?」


「‥う…ん、

 う‥ん、」


「おじさんが怒るのは、当たり前

なんだ。二人ともゴメン。

 ママが、パパの分まで頑張るから

・・・ねっ」


「前のお家に帰ろう。

 そこでパパをまとう。

パパが寂しくないように、

前みたいに、お菓子上げたり

  お煎餅あげたり・・・ねっ。ダメ?」


「ダメ?・・・」

羽奈は二人を覗き込み、また聞いた。



「うん、

 うん。わかっ一た。パパをまつよ。」


「強いお兄ちゃんだね!! 

ありがとう龍太郎。!! 」


「うんわかたよ」

「うん龍乃祐もありがとう。」


龍太郎と龍乃祐はトコトコ歩み寄って


「悪い事したら、謝んなきゃ

いけないんだょお。」


龍太郎は龍乃祐と顔を見合わせて

合図するようにコクコク首を上下に

振った。


   「うん、謝ろう。」


2人は口いっぱい広げて


「おじちゃん、おじちゃんは、

パパのパパ?

ママがパパ間違えて


ぇぇえーんうわああぁん💦

😭😭💦 しゅみましえんでした。」


「帰ったらママ叱っておくので

 ゆるゆして、くらしゃい。」


一度声をあげた2人は肩を揺らし

ヒックヒックと涙を飲みながら

泣き止んだ!


「泣いたら天国のパパが

寂しくなるんだよね!

我慢しないと、ね。

龍乃祐‼」


「う、うん。」

龍太郎は龍乃祐の涙を

自分の服の袖で拭きながら

口をしっかり噛み締めていた。


「パ、おじちゃんは、

かえしましゅからぁ

 ごめんなしゃ~い。」ペコペコ

           ペコペコ


床屋さんにいったばかりの

タラちゃんカットの2人は

力一杯謝った。その後


しょんぼりと肩をおとして手を

繋いだ。やっと手にいれた宝物を

壊してしまったような、

パパが欲しかったのに

違った。

諦めきれない気持ちを、我慢する

ような、そんなつらそうな、

しかたなさそうな顔だった。


目に溜まった涙を堪え2人は今にも

泣き出したいのを母親の為

がまんしていた。

口を膨らませ、声を出さないように

プクプクと精一杯我慢していた。





「帰ろう龍ちゃん。」

「うん龍くん。パパがお家の写真

のなかれ待ってるね。」


「ママ、パパの «グスッ» 好きな

 おしゃけ、買って帰ろう。«グスッ»」

 そう言ってポケットから百円を

 羽奈にわたした。


龍太郎に続いて龍乃祐も百円を

小さな可愛らしい手に乗せて、

「ママ買える?«グスッ»

足りる?コップに入ったおしゃけ。

パパしか飲まないから、«グスッ»足りる?」


そう龍祐にワンカップをかって

悪い事をしたときはお酒をあげて

ごめんなさい!もうしません。

と謝らせていた。


「ありがと、これはお婆ちゃんから

 もらったお金だね。

 今日はママが パパにごめんなさい 

 言うから、お金はいらないよ」


「いいよ。ママにあげる!」


そう言って二百円を羽奈に渡した。


「お騒がせしました。」


龍太郎も龍乃祐も振り返り

龍祐を見てペコリと頭をさげた。

羽奈の手を握りしめ頭を傾け

腕で溢れる涙を歯を食いしばり

拭いていた。


羽奈と龍太郎と龍乃祐は

会長室を出ようとした


「待て‼

羽奈、俺も一緒だ‼」




 俺は震える声で親父に言った。


「まだ‥‥」


「まだ三歳なんです。

こんな小さい子に、

しかも孫ですよ。


 大龍龍馬の孫なんですよ。

 孫に頭下げさせて平気なんですか?


 なんて人だ。」

バタバタバタと母が飛び込んで来て

龍乃祐、龍太郎


お婆ちゃん

お婆ちゃん


「おばあちゃん━━━‼」

母に2人は飛び付いた!


「お婆ちゃんは僕のお婆ちゃん?」

「ほんもの?」


「間違ってない?

僕のおばあちゃんなの?

ウエーン💦」



「え?当たり前でしょう。」

 母は吃驚した。


「だってぇ、パっパパがっ

パパじゃなかったんだょお

««ウウウワーン»»

 ««マ、ママがぁ、ま、まちがえ

たんだょおう


 ««だぁかだかぁらあ、

お婆ちゃんが»»


 ««お婆ちゃんじゃないならどおう

しょう»»


ウウウワーン、ウウウワーン

小さな口をいっぱい開けて泣き止ま

ない二人に、溜め息をつきながら

羽奈が言った。



「コラコラ、天国のパパ、

が泣いてる よ。

二人が泣くとね、パパが、

なくんだよ。

そして、パパはね、涙の海で

龍乃祐と龍 太郎に、ごめんなさい!

ごめんなさいって

泣くの。そして、お病気するの。

天国だから、パパの看病出来ないの

よ。 


パパの、お熱が下がらなくなったら,

どおするの?


神様はちょっと夢をくれたんだよ。

ママが間違っちゃったから、

おじさん達が間違ってるよって

・・・教え・・てくれたんだよ。」



父親を恋しがる二人に羽奈は、

こうやって接してきたんだろう。



「泣きやんだから、

パパ元気になる?」

          


「うん。なるよ。」


「パパ、寒くない?」

      「うん。寒くないよ。」


回りからは、鼻をすする声がした。



「さあ、おじさんに、御礼を

いって帰り ましょう。

 ほら急いで笑わないと、3,2,1」


二人はとりあえずニッコリした。

服の袖で涙をゴシゴシふくと



トコトコと俺の前に来て

「パ,おじちゃん、ありがとう。

 パ・おじちゃん、あの

おじいちゃんと

 仲良くしないと、だめだょお。」


俺はたまらず、2人を抱きしめて


「ママは嘘ついて、パパを泣かす

んだ、意地悪なんだよ。

 ママはパパをたまにイジメる

んだよ。


 パパは二人のパパだ!! 

似てるだろう。

 パパなんだから。」


2人は声を震わせながら


「パパーほんとう?

 ほんとう?ママにイジメられたの?」


俺は愛しい我が子を抱きながら

 ウンウン

と頷いた。



「だって!お家にパパの写真

いっぱいあったろう。

 パパと、同じ顔だろう。」



2人は顔を見合わせて

キョロキョロした。


「ばあちゃんに聞いてみろ!!それに

 お前たち二人はお兄ちゃんだ!!

 ママ赤ちゃんができたんだ。」



「えっ!!えええ」


突然の龍祐の発表に、父を含めて

全員が驚きの声をあげた。



「羽奈ちゃん本当なの?」



「多分、でも御迷惑かけません!

1人で育てますから。

認知もいりません。


私ひとりの子達です。

それにお兄ちゃん達もいますし。


お父様安心して下さい何も

望みません。

今日帰りますから、安心して

下さい。

弁護士さん入れて証書に

しますから信用して下さい。」



母が怒りながら

「なに言ってるの、あの人の、

孫じゃない と言いはるなら、

私の愛する孫なのよ。

わ・た・し・の孫よ‼

龍太郎、龍乃祐本当に可愛いわ。



一緒に頑張るわよ羽奈ちゃん。

悪阻はまだ無いわね。

お婆ちゃんに任せなさい。」


少し不安だったのか義母の頼もしい

言葉にチビたちは

歓声をあげた。


「お婆ちゃん大好き。」

「ぼくもー。」


「龍ちゃん龍くん。ウナギ好き?」

««食べたことないよー»»

《僕もー》

「そうなの!! お婆ちゃんは、パパが

お腹にいた頃は牛肉とウナギばっかり

食べてたのよ。

じゃあ、みんなで行きましょうね。

あなた達は、私の孫なのよ。

絶対に忘れちゃだめよ。

お婆ちゃんの大事な可愛い孫よ。」



「うん。わかったー。 」

「うん。孫だよぉ、おばあちゃん。」


2人の頭を撫でて、幸せそうに笑った母を見て母は今幸せなんだと

実感した。


「お婆ちゃん、だいすきー

 僕もだいすきー」


あんなに活き活きした母を

     見たことがないな。


右に孫、左に孫、羽奈が母の

バッグをもち、追いかける。


これが幸せなんだよ。


俺は手放さない。

握る拳に力が入る。



オヤジが俺の親父なら

俺だって、あの子達の父親だ。

子供を思う気持ちはアンタには

負けない‼


オヤジは孫の存在を知らなかったのか?。

何故、母さんは,黙ってたんだろう。



楽しそうな母を父はポカーンと

見送っていた。

母は変った。逞しくなった。

あんなに笑う人だったんだと

初めて知った。

そして、強くなった。


前より若々しく綺麗に

なった。

父の後ろに引いて父に従う母は

もういない

母も守るものが出来たんだ。

羽奈のおかげだな!!



小さな手は母を頼り母を求めそして

幸せそうな母をみた。



女性が笑うと、平和になる。



家族第1の会社を立ち上げたい。


父親は窓際に立ち、スーツの

ポケットに手をっっこみ横断歩道を

渡る母達を見ていた。


きちんと整えられた髪が企業戦士を

象徴している。


そんな父親の後ろ姿に言った。




「親父、俺もあんたと同じ親なんだ、

小さなかけがえの

ない物を守る為に

俺も強くなる。たとえ敵が‥


  あんただとしても‥な !! 」


父は、ゆっくりと振り返り俺を見た。


もう春も近いがまだまだ寒い、

この季節には

まれな春を思わせる、

麗らかな日だった。





十月十日が過ぎた頃の八月20日

の事だった。




立ち上げた会社も順調に進んだ。


しかし羽荼はまだ婚姻届にサイン

をしない。


羽奈の頑固者は父親以上だ。


しかし

母は何も言わず出来る事をして

あげなさいとゆう。

4歳を迎えた双子は普通の幼稚園に

通っている。羽奈の預金じゃ

それが精一杯らしい。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る