26話 別れの足音

ハァ時間ばかり気になる。

早く帰りたいが俺が抜けると

しらけてしまう。


羽奈に何かあった事はわかる。

羽奈の嘘が分かる。

最近疲れていて冷たくしたかも知れない。


和花が妙に近い。何なんだ?

やたらと手を繋いで来る。

振り払う勇気もなく、そのままに

みんないるし、恥かかせたく

無かったから。


期待させたくないし、なんなん?


和花が誤解しないように

今朝、伝えた。

俺には好きな女がいるし、お前とは、幼なじみ以上は無いと、

なのにベタベタして来る。


確かに可愛らしいが羽奈とは違う

羽奈が1番だ。


抜け出してやっと電話できた。

  

「はい、龍祐まだ帰れない?

 なんで帰れないの?浮気か?

ハハハ

上等じゃん。」


「は?冗談きついぞ。無理だ 

羽奈 寝とけよ、今日も遅くなる。」

     


    「忙しいんだね。」


「ハアムカッ!帰れないんだよ。

忙しく無いし!

飲んでるし‼

帰りたくても帰れないんだよ!」



  「もう少し、早く帰れんの?」

      

「カンベンしてくれ

大事なのは羽奈だ、でも本当に

帰れないんだよ勘弁してくれよ。」



「フフン大丈夫だよ。

分かってるからね。

ちょっと…言ってみたかっただけ。 

龍祐が居ないことにも

慣れなくちゃね~

今から、忙しくなるもん

ね。

 あ~ぃり!頑張って👋」


静かな羽奈の口調に、理解して

もらったと誤解した。

だから・・・だから油断した。


昼間の冗談は カマ かけたのか?

その手にはのるか…

帰ったら、押さえ込んで、

お仕置きしてやる。

龍祐は、アチコチ連れまわされ

夜中3時に開放された。


マンションにつくと羽奈は

寝ていて抱きかかえて、

羽奈を引き寄せたとき

シーツが濡れていた。

毛布も湿ってるっぽい。



さっきは本心だったのか?

羽奈に何がおきてるんだよ。

隠れて泣くほどのことなのか?


羽奈を心配しつつも疲れには勝て

ず眠ってしまった。




朝起きると羽奈はもう出勤していた。

昨日の涙の訳は聞かずじまいだ。



午後から会議で新店舗の

スイーツはクリスマス商戦だ‼


スイーツもケーキも売りまくる

勝負の時だ。

今日からCMも流れる。


羽奈に、相手役が俺だとバレたら、

また妙な心配をするだろう。


それにクリスマスイブの

パーティーの案内状が、俺名義で

出された事を知った。



もう半分以上の返信があり

俺目当ての顧客もいる。

ほんっとカンベンしてほしい。



イブは羽奈と過ごしそのまま羽奈の

誕生日を祝う流れなのに。

しかもそのまま出張ってナニ?


羽奈は今ブルーなのに言えないだ

ろう。誰が言うんだよ!

おれかよ。


デスクの上で自問自答‼

パーティの後出張って・・・

誕生日は祝えないって

無理無理無理、羽奈の誕生日だぞ

かなりヤバいだろう。


しかもパーティーのパートナーは

和花って‥益々言えない。

なんて言って誤魔化せばいい?

続きまくる自問自答



       


羽奈は、

子供を産むから格安の

アパートとはいかず

家賃8万の部屋を借りた。


1DKではあるが家賃のわりには

綺麗だし公園も近いし。


何せ双子ちゃんだから大変だ。

羽奈の服も二、三着龍祐の部屋に

残しただけになった。



クリスマスイブまであと3日


只今3ヶ月つわりも軽く、

覚悟していたけどふつうの生活が

できる。



他県に通い、押し入れは1ヶ月

二人分の紙おむつと、ミルクと

ベビー服や、下着で埋まった。


お産して、1ヶ月安静なので、

非常、ミルクなど、乾燥野菜、

冷食などそろえたら、

何とかなるし通販や宅配便もある。

肌着や何やらかんやら,便利な

世の中とは言え、先が思いやられる。




今日は龍祐の好きな、炊き込み

御飯とスキヤキにしょう。

寒いから生姜の漬物を開けよう。



10月に沢山仕込んだから、

食べ時だ。そんな事考えながら

マンションに帰る。



一日、一日を宝物のよう

に過ごした。


ただいま~龍祐が帰って来た。

ドタバタ玄関までカメラでパチリ

今日の龍祐、不機嫌のタイトルを

つける。


龍祐は、疲れてるのかあまり

喋らない。

彼の父親に合ってから、

毎日携帯で撮って来た龍祐の

動画。

子供達に父親は?と聞かれたら


パパもママを愛してくれて

たんだよって教える為に。

父親がどんな性格で 

どんなに暖かい人かを

伝えたいから。



「龍祐?龍祐の好きな人は

誰ですか?」

 

 「教え無い‼

         (怒)ゴラァ」


キャア~ごめんなさいキャア~


ガシッと捕まり、

そのままベッドイン

開放されたのは二時間後



クタクタになり鍋に火をっける。


龍祐は、何事もなかったように

パクパク食べている。


食事が終わり、ウイスキーを

用意すると龍祐は、パーティーの

事とそのまま出張先へ出向く事で

誕生日が祝ってあげられ無い

ことを悔しがって話してくれた。



ただ笑って、残念そうに話す

龍祐の話を聞いていた。

だけど羽奈にはピンときた。

彼の父親が、動き始めた。


私に龍祐を通してメツセージを

送ったんだ



「早く出て行きなさい。 

 龍祐を跡取りを返してもらうぞ。」

って羽奈に、約束を守れと

警告している。



「ゴメンな、初めて羽奈の誕生日

 祝えたのに、ほんっとゴメン

 帰って来たら北海道へ行って蟹

食べよう。

 それで許してくれないか?」



珍しく早く帰って来た龍祐は、

羽奈に謝り続けた。


 「ヤダ、ヤダ-ヤダ」

 「龍祐といたい。駄目なの?」


「親父の名前じゃなく、俺の名前で

招待状が出てたんだよ。

仕方ないだろ💢💢。」


「ん〜

 イヤイヤ

一緒がいい💢💢。」


龍祐は頭をかかえてあ”あ”あ”

とか

う”う”う”とかウネリ出した!


『本当はパーティに

出たいんでしょ。』

羽奈の心の声は少し冷めていた。


でもそれは許してあげよう。

クリスマスを好きな女性といるのは

男として当然か‼ 

   

「 北海道?ホント〃忘れないでよ。

 楽しみにしてるからね!!」


「え?・・・え?

いいのか?ありがとう。」


 ««ふふっ»»「うん、」


龍祐は大龍のあととり、今の

ところ私と関係ない。困った顔

見たかっただけ。

今のところ ・・・ううん違う。


これから先も・・・って言わなきゃ

  いけないのに・・・。


 


龍祐は、優しい奴だから困らせると

本当に因ってしまう。


まず、黙り込んでモグモグしながら

考える。



凄い可哀想になるから

CMの話もきけずじまいだ。


きっと和花さんと、羽奈の間中で

悩んでるんだろう。


まだ、もう少しだけ龍祐と、

お腹の子供と

家族ごっこを楽しみたい。


そう私と龍祐は家族にはなれない。

ごっこ・・・だ。


親の事情で巻き込んでしまった

子供達の将来を思うと、せっかくの

決心もぐらついてしまう。


目を瞑ると不安しか浮かばない。

女手一つで、

とか

食べさせて行けるか?

とか

入学式、卒業式は大丈夫か?

とか、

イジメ

とか

対応出来るのか?

とか‥。


そんな不安な時は、龍祐の脇から手

を回しギュッとギュッとしがみつく。


暖かい背中、広い背中、安心する。

まだ、日にちはある。

そして言い聞かせる。大丈夫!! 

大龍龍祐の子供だもん。

絶対彼にそっくりな男の子だろう。

しかも、彼の父親も俺様気質だし

イジメは多分大丈夫。!


今はまだ、先の話だ 

まだちょっと先・・・ちょっとだけ。


寝るときは龍祐が寝込んだのを

見計らい怒られないように

寝息を確かめて

龍祐にうんと甘えて龍祐の体温に

包まれて眠りに落ちる。


だけど、必ず直ぐ目が覚めて

ぐっすり寝ている龍祐を眺めてしまう。



「龍祐、私と和花さん

どちらを取るか、悩んでいるなら

親に選んで貰いなよ。

龍祐のお父さんは和花さんを望ん

でいるとこたえてくれるよ

悩まないで

私は恨んだりしない。」


毎日呪文のように呟いている。

「皆が、幸せに成る方法は

     これしかないよ。」



羽奈もあの龍祐にソックリの

父親といがみ合いながら、

文句いわれながら


昭和のような生活は出来ない。


だって平成生まれだもん。

我慢出来なくて、喧嘩しちゃいそうだし。

無理だ。


しかも龍祐と同じタイプだし

傲慢そうだし。

子供も事ある事に虐められそう。


マイナスばかり出してみて龍祐と

離れ離れがいいと自分を納得させる。


妊娠したことを話さなくて正解だった。

あの龍祐の事だ、子供を取り上げて

和香さんと育てるかも知れない。


絶対いやだ

この子達は私の子だ。


あんなに可愛らしい彼女いるのに

何でマンションに私を

入れたんだろう。


   イ、ミ、フ。


あの日、自分を戒める為に彼の

父親からハンカチを頂戴した。

5百万と引き換えたハンカチ。


彼は和花さんのだと羽奈に

グレーの絹の光が、訴えてくる‥。


甘い羽奈が

「子供達の為に負けるな!

龍祐を取り上げちゃえば

いいじゃん。

龍祐も迷ってるなら、子供出来た

って押し切ればいい。」


たまにそう思う。

そしたら今の悩みは吹き飛んで

仕舞う。

「子供で龍祐を縛るつもりですか?」


彼の父親の声がする。


龍祐に神様が縁を結ばれたのは

和花さんだ。

人のものを取れば、自分に用意

された縁とは、あえずじまいだ、

お婆ちゃんの口癖だったなぁ。


ブンブンと首を振り

「駄目駄目!人の不幸にあぐら

かいた幸せなんて、

直ぐダメになる、龍祐の気持ちが

和花さんにあるのなら惨めだ。

子供達とたのしく生きて行きたい。


まだ弱い、強くならなけり

ゃ一人でなんて育てられない。」


早くマンションを出ないと、

彼の父親が、言うみたいに、龍祐に

依存してしまう。


龍祐は優しい。

そして男らしい。

子供がいると知れば

何を捨ててでも羽奈を取る

だろう。

あのCMの撮影を見なければ羽奈は

誰の言葉も信用しなかった。


だけどあまりにも自然で、楽しそう

な龍祐を見たら、納得せざるおえない。


二人を離してはいけない。

離れるのは私、あの日龍祐に合わ

なければ良かった?

違う会えて良かった。

そう思わなければ子供達が可哀想だ。


龍祐は私のモノじゃないけど、

お腹の子は私の宝物だ。

龍祐の分迄、大事にして

彼以上に愛していこう。

そう自分に言い聞かせ一歩

ふみだそう。




今日はベビー服を買う為に隣の県に

やって来た。赤ちゃんの服って

結構高い、でも生まれて

初めて着る服は、やはり新しい服を

着せてあげたい。


大型モールで

ベビー服を選んでいると女の子達が

キャーッキャーッキャーッ

と叫んでいた。


今日は広瀬和花の初出演の映画の

試写会があるらしく、それに

大龍龍祐も新店舗のスィーツの

宣伝も兼ねての来店だったようだ。


羽奈は、何も聞かされていない。

『あーついてない‼』


2人はやはり腕を組み仲むつましく

手を振りながら登場した。


龍祐がエスコートして入ってくる

だけでも大ショック!!


モールの二階から見下ろした

だけだが

彼の父親の言葉が甦った。


《《二人は本当に仲がいいんです。

二人を引き離すような事は止めて

もらえませんか?》》


誰が見ても仲がよく見える。


羽奈は彼を和花からもぎ取るような

事はしない。そう誓った。


龍祐が幸せなら良いじゃないか、

しばしの夢だったけど自分も愛され

ていた、そう呟くとまたベビー

服売り場へと向かった。


その後ろ姿は寂しくも見え

母になりシングルマザーとして

生きる決意を

強く秘めたようで、逞しくも

見えた。




その日龍祐は遅い帰りだった。

羽奈は龍祐が何をしていたのか

予想着いていたので、

何も聞かなかった。


疲れて先に眠った龍祐の背中に

くっっいて眠ろうとしたが昼間の

二人が、目蓋に浮かび眠れない。


これが嫉妬と言うものだと今更

ながらに、やるせない気持ちと

自分も嫉妬深いただの女だったと

残念な気持になった。


段々と見苦しい女になりそうだ。

かえって泣き叫び、彼を責めて

自分のものでいてと言えるなら

可愛いかも知れない。

羽奈にはそれをする勇気さえない。


ただじっと耐える

羨ましそうにしながら、それは

とてもとても辛い。


次の日の週刊誌に載っていた内容と

同じ、龍祐と和花さんの

ツーショットがTVで報道されていた。

高級和牛で有名な料亭に

2人で入っていった。


もう龍祐に諦め以外無い!羽奈は

和牛と聞いただけでよだれが出て

きて、すき焼きが無性に食べたく

なった。


お肉屋さんで、たっかーいお肉を

買い込んで歩いて帰っていると

ウナギの店の前を通った。


一度通り過ぎたが引き返した。

無性に食べたくて食べたくて仕方

ない。


さすが龍祐の子供だ、


高級なのを食べたがる

こんな贅沢な、身持ち癖は

予想外の出費だった。


一日一日、クリスマスイブが

近づいてくる。

また街にはクリスマスソングが流

れて白い初雪が降り始めるだろう。


クリスマスが近づいたと言うことは

別れの日も近づいたと言う事だ。

そしたら私達は赤の他人、

淋しいけど

龍祐もその方が楽でしょう。


最近龍祐は帰りが遅い。

これでいい。

龍祐の居ない夜もずいぶん

慣れて来たし。


もうあの逞しい胸も暖かな腕枕も

今はきっと和花さんのものだ。

毎日毎日ふたりは、

合っているようで今はフアン公認の

仲らしい・・・。


何してたの、何処にいたの、だれと

いたのどうして、何故、

どこがいけなかったの


聞いてみたい。

聞いてどうなる。


今更、心変わりした愛情は帰らない。

私に彼を繋ぎ止める魅力が無かっただけ!すっぱりと離れてあげる事が

彼を自由にしてあげる私の最後の愛情。


羽奈は見苦しく泣き叫んで彼に

すがりたかった。

しかし既になくなった龍祐の愛情は

どんなに縋っても、返って来ない。


もう良いじゃないか

龍祐はこの子達の父親であり私の

生涯の夫である事実は誰にも

変えられない。


私が子供達を守る。

龍祐が愛してくれた証拠として

子供がいる。


もうそれ以上を求めるのは、

沢山の人を巻き込んで

悲しませる事になる。


子供達には謝るしかない。


今はその選択がベストだし‥

それに従わざるおえない。

また

クリスマスソングの賑やかな

街のリズムに乗れず、わざと元気な

笑顔で龍祐の帰らないマンションに

足を向ける。


       



最近、龍ちゃんに好きな女が

いるから和花とは幼なじみ以上には

ならないからな!!

そう宣告された。


「は!!」なにいってんの!昔から

龍ちゃんが遊んでるのは知っていた。

だから結婚まではお互い自由に

遊ぼうと決めて気ままに

暮らして来た。

今更じゃない。

許せると思ってんの!!

おじ様に有ること無いこと

チクって女との交際を止めさせた。


「女は理解してくれたよ。」と

おじ様は言われたのに、肝心の

龍ちゃんは

まだ、彼女が好きみたい。


「クリスマスで片が付くから、

其れまで大人しくしてなさい。」


おじ様は父とお酒を飲みながら

「和花は本当に龍祐が

好きだったんだな。」

父と笑いながら冷やかして来る…


「女と別れるにはタイミングが

必要なんだよ。」


父もそう言うから、信じて大人しく

していよう。


私の龍ちゃんは昔から私のなのに。

返して貰わないとプライドも

傷ついたままだ!


もし別れてくれないなら、

私にも考えあるし

その手の友達も沢山いるし!…

まだ、彼女も若い4にたく

ないでしょう。



絶対別れてもらうから


鋭い眼差しで2人の写る、

報告書を投げ捨て足で踏み潰した。


相場羽奈、別れていなかったら

明日は無いわよ。

泥棒猫め覚悟しろ‼


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