第53話 激戦!!
ヒロユキの死因は、首をつけるのが遅かったからではなく、賊の親分に胸を刺されていたせいだった。この戦闘嫌いの男が、盗賊の親分と刺し違えたんだ。
あれだけの激戦の中で刺し違えていただなんて、さすがのおれでも見抜けていなかった。
だけど、時間がない。おれたちは簡単にヒロユキを埋めてやると、森の先へと急いだ。あんな場所で、無駄な戦いをしてしまった。
「あれは、しかたがなかったんだよ、マローン」
めずらしくジョージがおれの肩を叩く。
「ヒロユキがおれたちを裏切ったことに間違いはなかった。だから彼は、どちらにしてもこうなる運命だったんだ」
おれはヒロユキに何回首を斬られた? 最初はあわてて頭をつけて、後ろ前が逆だった。そうだ、おれがもっと早く首をつけてやればよかったんだ。
今となってはもう遅いけれども。
「行けるか? マローン」
馬上でカレンが厳しく聞いてきた。おれはヒロユキの遺体を埋めた場所に名前も知らない小さな花をそえて、立ち上がった。
そう、今はミミーを助けに行かなければならない。ヒロユキのことをいつまでも考えていても仕方がない。
おれは両手で頰を叩き、気合いを入れた。
「ああ。だが、ひとつだけいいかな?」
そう言うと、おれは最初にあずかった魔剣をジョージにたくした。おれからヒロユキへ、そして今はジョージの元へと。
「大切に使ってくれ」
ジョージはひとつうなずくと、ありがとうと言ってさやをなでた。
それでも魔王城への道なき道はつづく。そしてついに、魔族があらわれた。動物に対してはあんなに戦うことを拒否していた一同が、一気に警戒心を見せる。これも、ミミーをさらわれたことと、ヒロユキを殺された効果なのかもしれない。
「人間ノ分際デ、ノコノコアラワレヤガッテ」
魔族を統率しているらしいひときわ大きい魔人は、灰色の体を震わせた。おれたちはなんの躊躇もなく、武器を構える。
「オレタチの邪魔ハ、サセナイ!!」
イタチ頭の獣人が炎を吐く。すかさずダイヤモンドシールドでみんなを守ることができた。まずはおれの肩から飛び立ったワッシャンが口からビームを出して魔族をなぎ払う。
その隙に、カレンの矢がイタチ頭に突き刺さった。
「ゆうべ、矢じりに毒を仕込んでおいた。だから、効くはずだよ」
カレン、やっぱかっこいいや。
「あたしも負けないわよ。地獄の業火で焼き尽くせっ!! ヘル・ボーン!!」
「てやっ!! とりゃあっ!!」
カレンの炎が魔族を焼き払うが、隙間を縫って追いついた魔獣をジョージが次々と斬り刻む。
おれも火がついたようにダイヤモンドソードを振るった。
ヒロユキが死んだのは、おれの覚悟が甘かったせいだ。だから、今度は迷わない。
キラキラと輝くダイヤモンドの結晶に、魔族の紫色の血がべったりと張り付く。それを一振りして、また魔族を斬る。
永遠につづくかと思われたその戦いに、散らばっていた冒険者たちがかけつけてきてくれた。
「ここはおれたちにまかせて、あんたたちは先に行きなっ」
昔、顔見知りだった男がウィンクしてくる。
「けど、宝物は山分けでよろしくな?」
「ああ。なんなら全部くれてやる」
他方から、鍬を持った男が魔族に飛びかかっている。
「娘が魔族にさらわれたんだ。あんたたち、助け出してはくれないか?」
「もちろんだっ!!」
こうして、激戦をくぐり抜けたおれたちは、ついに魔王城の前までたどり着いた。
つづく
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