第44話 でも、それってご褒美じゃん

「ヒロユキのことは置いておいて」


 コホンと女神様が咳払いする。


「そういうことですから、これをお渡しいたします。二十四金、ゴールドのワイヤーと、大小様々な真珠です」


 うぇぇえっ!? 気軽に差し出されて、はいありがとうございますと手が出せないほど高価なものをどうしろとおっしゃる!?


「これを使って、ミミーにおわびの品を作ってあげなさい。そしてもし、材料があまるようなことがありましたら、それでわたくしになにかこしらえてください」

「……はい、わかりました」


 だが、最後の一文が妙に力がこもっていたような気もするが。うん、ありがたくいただいておきましょう。うやうやしく材料を受け取るおれを見て、案の定ヒロユキがごね始める。


「えーっ!? おれにもなにか、くださいよぅ!!」

「だめです。あなたは都度都度ミミーの身を危険にさらしました。ですから――」

「あざーっすっ!!」


 どうやら女神様の否定の言葉は、ヒロユキにとってはご褒美になったらしい。こりゃ厄介だな。


 話の腰を折られた女神様は、一瞬だけ闇の顔を見せたが、すぐに持ち直す。さすがは女神様だぜ。でもなんか、前に見た時よりやつれた?


「それではマローン、素敵な作品を期待していますよ。ごきげんよう」


 まさにごきげんな顔を貼り付けた女神様は、一瞬だけヒロユキをにらみつけて消えてしまった。なんだ、気のせいだったのかな?


 おれの手の中で光る大小、色もそれぞれ違うパールを女性陣がめずらしそうに手に取る。


「はぁー、素敵だわ。あたしにもなにか作ってくださる?」


 マリン、この際材料には限度がある。なにしろあまらせた材料で女神様にアクセサリーをプレゼントしなきゃならん。さすがにおまえの分はない。そう言うと、マリンは口を尖らせた。


「なによう。あたしだって、ちょっとぐらいはマローンがおとりになるのは荷が重いんじゃないかしら、ぐらいのことは考えたのよ? 感謝しなさい?」

「おかしいな」


 マリンの言葉をぶった切って、カレンがささやいた。ハスキーでよく通る声は、おれたちの頭をさまさせるには充分だ。


「女神様は、どうしてあんなにミミーにこだわるのだろう? ミミー、きみはなにか知っているのかい?」


 お、おい。カレン。でも、少なからずおれも、ミミーと女神様の関係性は気になっていた。一同の視線がミミーに集まる中、ミミーは猫耳をふにゃふにゃと動かしているのだった。


 つづく





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