第43話 女神様のお説教
「マローン、あなたはまちがったやり方で、みなを守ろうとしていたのです。今日は、その罰をあたえるためにまいりました。と、その前に。なんですか、あなたは。先ほどから下品な目でわたくしを眺め回すだなんて」
ああ、やっぱりそうなるよな。ヒロユキはいやらしい目で女神様を眺め回していたんだから。
「ちぃーっす。ヒロユキって呼んでください。おねえさん、おきれいですね。どうです? 今日おわったら、一杯飲みません?」
そしてなんという口説き文句。おまえさ、おれのことを好きだとかなんとか言ってなかったっけ? あれってやっぱり、おれに対するただの嫌がらせだったのか?
「冗談でもそんな言葉を使わないでください。縛りますよ?」
「よろこんでー!!」
だめだ。こいつ、別の方角に目覚めちまったらしい。女神様はあきれてるし。
「とにかくです。マローン、あなたはその機転でミミーの心を深く傷つけてしまったのですよ? 反省しなさい」
ミミーにピンポイント? なんでだ? おれは不思議そうにミミーを見るが、目を合わせてくれない。そりゃそうだよ。おれみたいなおっさんと目を合わせるなんて、そりゃ気持ち悪いだろうさ。
「反省をしましたか?」
「はい。反省しました」
おれたちはバッファローの死体からだいぶ離れたところで足を止めた。女神様はめずらしく本気でお怒りモードだ。
「では、その気持ちが本当ならば、ミミーのためにアクセサリーを作ってあげなさい。それも、とびきり上等なやつを」
「へ? なんでまた?」
「いいわけはゆるしませんよ? そうして、これからは、ミミーを決して泣かせないことを胸に誓いなさい。いいですか? もう何時も、ミミーを悲しませるような行動は慎むのですよ?」
「……はい。わかりました。ごめんな、ミミー。こわい思いをさせちまったよな? 軽率な行動で、みんなに不快な思いをさせるところだった。みんなも、すまない」
おれはそう言って、素直にみんなに頭を下げた。するとすぐにヒロユキがおれの背中を軽い調子で叩いた。
「まぁおれ様も? 似たようなことをしようとしたんだし? 逆に言うと、なんでおれはお説教されないわけ?」
ああ、ヒロユキよ。完全にそっちの世界に目覚めて全開かよ。勘弁してくれよ。
「あなたはああ言えば、マローンが自身を差し出すことを見越していたのでしょう!?」
「てへっ。ばれてましたぁ?」
悪びれもせず頭をかじるヒロユキに、かける言葉が見つからない。おまえはどうしていつもいつもおれのことをおとしいれようと全力で立ち向かうんだ? おちゃらけたままの態度のヒロユキの肩を、ジョージが強めに叩いた。
「まぁ、そういうことだから。今後はでしゃばらないでくれるかな? きみ、剣士でもないみたいだし」
そうだった。ヒロユキはへっぽこ冒険者で、自分の身があぶなくなったら、盗賊に有り金渡して、注意をおれに引きつけていたことが、これまでに何度もある。別行動になっても、それは変わらなかった。要するにヒロユキの腰の剣はただのかざりってわけだ。
だが、当のヒロユキはこまったもので。もっと言って!! などと気持ちの悪い甘え方をするのだった。
つづく
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