第45話 女神様とミミー
「あたし――」
言いよどむミミーの背中を、カレンがやさしくさすってあげる。ミミーは力なく頭を左右に振ると、どうすればいいのかわからないというようにわっと泣き出した。
ちょっと待った。おれ今、絶賛女神様からミミーを泣かせるなと釘を刺されたばかりなのだが。
「マローンはだまっていてくれたまえ。うるさいから」
ちょっと待て、カレン。それじゃあまるで、本当におれがミミーを泣かせたみたいじゃないかっ。
って、最後のうるさいってなんだよ。
「待って、今話すから、少しの間、待っていて」
ミミーはなんとか気持ちを安定させようと涙をこらえ、なお、涙は滝のように流れるのだった。
しかたなく、そのまま言葉をつづけることにしたミミーは、つっかえながらも一生懸命説明してくれた。
「あの女神様は、お城で殺されたお母様にそっくりなの」
「殺された?」
こっくりとミミーはうなずく。
「魔族が突然あらわれて、そしてお父様がおかしな術をかけられて、みなが混乱している最中、お母様はあたしをかばって剣で刺されて――」
そしてまた、わっと泣き始める。無理もない。そんな悲しい出来事があったんじゃ、わすれることすらできないさ。カレンは、もういいからと言って、ミミーを落ち着かせようとこころみる。
今、このおれごときにできることはただ一つ。女神様から預かったこの高級素材で、ミミーにふさわしいアクセサリーを作ることだ。一同がミミーを気づかうそのかたわらで作業を始めたおれを、みんなの視線が痛いくらいに刺さる。だが、おれにできるのはこれしかないんだ。
やがて、あきらめたかのように泣き止んだミミーは、鼻をすすりながらごめんなさいとささやく。
「あたしのせいで、たのしい旅が台無しね」
「そんなことないよ、ミミー。そんなことない」
そう言うと、カレンはおもむろにミミーの頭を自分の胸に抱いた。
「つらかったね。思い出させてしまってごめんね」
「そんなことない。だってあたし、ずっと後ろめたかったから。お母様にごめんなさいって、ずっと言いたかった」
つらかったろうな。それにしても魔族はひどい連中だな。おれは、できあがったばかりの真珠のピアスと二十四金のワイヤーを贅沢にあしらった真珠のネックレス、それに腕輪と迷ったけれど指輪を、プレゼントした。
それらを一つずつ、丁寧にミミーにつけてゆくカレン。指輪は、迷った挙句、右手の薬指におさまった。すべてのアクセサリーに防御魔法をかけてもらって、完成だ。
うん、女神様のお見立てどうり、ミミーには健康的な二十四金ゴールドと、可憐な真珠がよく似合う。ミミーも思わずわぁっとよろこびの歓声をあげたもんだ。
「ありがとう、マローン。これ、大切にするね」
すっかり泣き止んだミミーは、そう言って雨上がりの空を思わせる微笑みを向けてくれたのだった。
つづく
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