ワイヤーアートで一攫千金!? 編

第15話 一度あることは二度ある

 ってなわけで、ゆるゆると魔王城奪還に向けて歩き続けるおれたち一行。中心にいるのはミミーとカレンなんだがな。


 で、歩き疲れたらジョージに剣の手ほどきを受けたり、ワイヤーでアクセサリーを作ったり。


 そうそう、ミミーのピンキーリングは意外にも好評だった。


「マローン、ずいぶんと繊細なものを作るんだな」


 ジョージにいたっては、失礼発言をかまされたが気にするもんか。すぐカレンに守護魔法をかけてもらった。


 そうしてカレンがひざまずき、うやうやしくミミーの薬指に指輪をはめる姿と言ったらっ!! まるで絵画を見ているようだったぜ。だけどその後、なぜかミミーは機嫌を悪くしちまった。


 なんか、おれのせいだってみんなに責められたから、おわびのネックレスを製作中。


「しかし、本当ににぶい男だな?」


 すぐそばにカレン。やだよう。ほめてくれるなって。


「ま、にぶくないとやってられないっしょ。前世では妻に不倫された過去があるからな」

「それがおまえのトラウマなのか? ミミーのことは、どう思っている?」

「うん? なんでミミー? いや、かわいいお嬢ちゃんだよ。もっと剣の腕を磨いて、守ってやらなきゃって思ってる。おまえさんもおなじだろ? カレン」


 おれが聞くと、カレンはプイッとそっぽを向いちまった。


「ぼくのときみのそれとは、意味が違うんだ、たぶん」


 たぶん? そりゃそうよ。おれのミミーに対する保護欲は保護者のそれだからな。それのなにが悪いってんだ? うん? するってぇと、カレンの保護欲は保護者のではないってことか?


「だからにぶいんだよ、きみは」

「はいはい。なんだかカレンと話してると、元妻のことを思い出すな。いつもそうやって罵倒されてたっけ」


 おれがけらけらと笑っていたせいかもしれない。油断があったのはまちがいない。草葉の陰から突然ヒロユキがあらわれて、あっという間におれの首をはねて逃げた。瞬間的にヒールの魔法をかけて、首をつけたものの、今度は右向きにくっついちまったんだ。


「はぁー。まったく、手のかかるおっさんだなぁ」


 おれたちから少し離れたところでマリンといちゃついていたジョージは、おもむろにそう言うと、なんの合図もなしにおれの首をはねた。


 おかげで首は元に戻ったけどさ。なんなの、ヒロユキ。なにがしたいの!? そんでジョージもはねる前になにか言わんかいっ!? あっさり自分に浄化魔法を使ってるカレン、あんたもおれに浄化魔法をかけてくださいっ!!


 ただ、その中でミミーだけは顔色を悪くして震えていた。


「ミミーごめんな。こわがらせちまって」

「ううん、いいの。それよりマローンは、大丈夫?」

「ああ。四十肩なのはしかたないけど、基本頑丈にできてるからな」

「マローンもそう言ってるし。あっちに行こう、ミミー。服が汚れる」


 ついと進み出たカレンの手を振り払ったミミーは、なぜかおれの前から動かない。それから肩をぷるぷる震わせて泣きじゃくった。


「よかっ、よかったぁー!!」

「本当、なんていうか、ごめんな。心配かけちまって」


 そりゃまぁ、うら若き乙女の目の前で首はねたりしたら、びっくりするってもんよ。ほんっとうにヒロユキのやつ、なにがしたいんだ?


 そんなおれのかたわらで、ジョージがクソ真面目な顔をしてこう言った。


「いいかい? マローン。戦闘で緊張した時は、手のひらに肉って書いて飲み込むといいんだぜ!!」


 人じゃないんかいっ! いや。あんたには負けます。本当に。


 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る