第14話 カレンのやきもち
「他には? どんなアクセサリーが欲しい? ネックレスでも腕輪でも、なんでもいいぞ。あ、でもブローチは石がないから今は無理だけど」
ほんの助け舟のつもりで繰り出したおれの言葉をうれしそうに復唱するミミーは、とても可憐だ。
「ネックレスは首につけるものでしょう? 腕輪は、腕につけるのかしら? それ全部に守護魔法をかけてもらえたら、とっても安心だわっ」
「もちろんだよ、ミミー」
まぁそりゃかわいいもんな、ミミーは。軽率に口説きたくもなるわな、カレンじゃなくても。だが、話は意外な方向に進む。
「あたしたちは、おそろいのものがいいわ」
そんな中で自己中発言をかましながら、ジョージと腕を組むマリン。いいぞ、ちょっと無理はあったが場が和む。
「じゃ、マリンはジョージとおそろいのアクセサリーっと。カレンはなにがいい?」
おい、そんな目でおれをにらむなって。どうしたんだよ、一体?
「ぼくは自分の身は自分で守れるし、アクセサリーは邪魔になるだけだからいらない」
「……わかった。いらないんだな。わかった」
わかった、を二度と言ったのは、あんまりきれいな目でにらまれちまったもんだから、どうしたものか戸惑ったせいだ。ふだんのおれなら、そんな無駄口は叩かない。たぶん。そのはず。
「ってことで、まずはおれからのお願いがある」
そう言うと、カレンはふんと顔を背けた。
「マローンの願いなど聞かないぞっ」
「そんな、カレン様〜!!」
なさけない声を上げるおれにけたけたと笑ってよこすミミーが愛らしい。耳が、ぴこぴこしてる。機嫌が直ったみたいだな。よかった。
「そんな意地悪言わないで、カレン。それで、マローンのお願いって、なぁに?」
「本当に個人的な理由なんだが、ヒロユキを探し出したいんだ」
「それは、おまえの首をはねた者のことだな?」
ワッシャンはミミーの細腕からおれの甲冑に舞い降りてそう言った。おお、わかってるじゃん。さすが大賢者様。
「そうなんだ。女神様がおっしゃるには、ヒロユキがおれの前世になんらかの関係があるとのことらしいんだが、おれにはうらまれるような記憶がないんだ」
「ぼさっとした態度のどこかがしゃくに触ったのではないか? 少なくともぼくはきみに対してそう感じることが多々あるが」
すまんな、カレン。おれのこのぼさっともさっと感は前世からなんだ。なんなら呪いの一種かもしれん。が、そうするとおれ自体がうらまれる元になっているってことになる? ふぅーむ? どこか腑に落ちない。
「だが、我々の目的は魔王城奪還にある。ヒロユキとやらが一方的におまえのことをにくんでいるとするならば、黙っていても勝手に近づいてくるのではないか?」
「たしかに!」
おれは単純な男だ。こうしてまんまとカレンに丸め込まれたところでなんのプライドもない。むしろ、教えてくれてサンキューな。
「それじゃ、このまま魔王城奪還に向かうかっ!!」
こうしてヒロユキ探索は始まることなく終わりを告げた。この時、草葉の陰でヒロユキが歯噛みしているなんて想像もせずに。
つづく
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