第八話 上原いちごの消失
翌々日の日曜日――午後から梨恵は登校していた。
最近は雨が続いている。テニス部の活動は、体育館でのトレーニングばかりだ。ゆえに、晴れている日曜日に練習しようということになった。
練習は十六時に終わり、梨恵は寮へ帰って来た。部屋に
同居人のことが気にかかったのはそんな時だ。
――いちごちゃんが男の子だなんて。
だが、もしもそう考えると、ばらばらの違和感が一つに繋がる。女性に恋をするのも、
更衣室にトランクスが落ちていた件も、下着泥棒も――ひょっとしたら。
いや、トランクスの件は関係がないのかもしれない。それこそ
――では、なぜ落ちていた?
妙なことが一冴の周りで起きているのはなぜだ。
気になりだしたら止まらなかった。
同時に、魔が差す。
当然、気は咎める。
事実、常識的に考えればあり得ないではないか。周りには女子しかいない、恋の一つも咲かない。だからそんな想像をするのではないか。
何かを盗むわけではない――
クローゼットを開け、下にある小型の
――やっぱり、私の箪笥の中と変わりない。
当然の事実に安心すると同時に落胆する。
もちろん、盗まれたショーツなどあるわけがないのだ。
そう思っていた矢先であった。
箪笥の最奥部に、見たことがない物を見た。
それは、ビニール袋に入れられた女性の胸だった。当然、作り物なのだが、リアルな乳首までついている。明らかに、ない胸を盛るための物だ。
――あの貧乳のいちごちゃんに?
そこまで考え、箪笥の奥に偽乳を戻した。元と同じように下着も整え、箪笥を閉める。見てはいけない物を見てしまったからだ。
それに、
だが、梨恵は引っかかる。
――誰が?
この部屋へ帰ってくるのは「誰」なのだろう。
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