第十一話 お菓子作り
デパートからの帰り道、ミリタリーショップへと寄った。
そこで、紅子はソヴィエト連邦の戦鬪機・
十三時を廻る頃、寮へと帰ってきた。
部屋へ向かいながら、一冴は語りかける。
「それにしてもあのお店、色々な物があったねー。」
「おう。小さな店だったが、もう、一日中でも私はいたいぞ。」
「じゃあ、また行こっか。」
「うん!」
そうして一冴の部屋へと這入る。
テーブルの上へと箱を出し、一冴と紅子はプラモデルを作ろうとした。
そんな二人を梨恵が制止する。
「こらこらこら! まずはお菓子作りだら!」
「あ――そうだった。」
とりあえず、食材を持って梨恵と食堂へ移動する。
食堂には数人の寮生がいた。窓辺にいるのは、長い三つ編みの少女――彩芽だ。新聞を読みながら珈琲を飲んでいる。その姿を一冴は少し気にかけた。食堂では、新聞を読んでいる彩芽をよく見かける。
必要な食材以外は冷蔵庫へと入れ、エプロンと三角巾をつけた。
スマートフォンの画面を見つつ、チョコレートプリンを作り始める。
チョコレートを細かく刻み、牛乳・沙糖と共に鍋に入れて加熱する。続いて、電子レンジで加熱したゼラチン加え、さらに生クリームを加えた。それを硝子の容器に入れ、ひとまず冷蔵庫へ入れて冷やす。
――あとはちゃんと固まってくれるのを待つだけか。
ふっと、食堂の窓辺へと目を遣る。
彩芽が
「気になるん? 高島先輩のこと。」
「少し。新聞読んでたり、占ってたり、変わった人だなって思って。」
「ああ。新聞読んどるのは、占いの練習のためだが。高島先輩、高島家の跡取りだけえ。社会の出来事を色々と占って、それで練習しとるだって。」
「――へえ。」
「どうせなら、いちごちゃんも占ってもらいない。よく当たるらしいで?」
一冴は少し躊躇する。正直なところ、少し気にはなる。
「いいの?」
「まあ――簡単には占ってくれんらしいけど。でも、高島先輩にお菓子の差し入れなんかをして、占ってもらっとる人は多いみたいだで。」
「なるほど。」
それから数時間後――冷蔵庫からプリンを取り出した。
初めてのお菓子作りは失敗した。レシピ通りに作ったにも拘わらず、半分程度しか固まっていなかったのだ。中央部分はどろどろのままである。
しょげ返る一冴を梨恵がなぐさめた。
「まあ――最初は上手くいかんわいな。レシピ通りに作って固まらんかったなら、何で固まらんかったか調べ直して、ちゃんと固まるまで作り直すまでだで。」
「うん。」
そして、プリンを固める方法を調べ直し、再び作りだした。
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