第六話 謎受信

一方――こちらは一冴である。


スマートフォンが鳴ったので、鞄から取り出した。壁紙は「だいふくねこ」のイラストだ。


LIИEにメッセージが入っていた。送信相手は「東條麦彦」である。


――何であいつ俺のアドレス知ってんだよ。


ともかくも開いてみる。


「おまえ、筆坂紅子と一緒に図書館へなんぞ行って大丈夫なのかの🤪

初めて図書館へ行くという設定なのに図書カードはどうするんじゃい😁

ま、それを誤魔化すのは簡単かもしれんがな、

筆坂紅子はどうなるかの?ww

図書カードを作るためには、身分証明書が必要ぞい💩

つまりは学生証じゃなw

筆坂紅子は持って来とるかの?💩

あと、鈴宮蘭なら今、菊花の部屋におるぞい🤪

色々と愉しい光景が見られるんじゃないかのうwww😂」


図書カードの件は確かに気にかかった。だが、「上原いちご」の学生証を一冴は持っている。寮の住所を書けば、新しい図書カードを作ることもできるだろう。


だが、そんなことより気になることがある。


――蘭先輩が菊花の部屋に?


なぜいるのだろう。


それを考えると、胸騒ぎがした。


あれだけ蘭を避けていたのに、部屋に上げたのか。


昨晩は、つきあえないと蘭に言うことでさえ菊花は渋った。それは――なぜだ。


そうでなくとも麦彦のことである。ろくでもないことを考えているに違いない。


そんな一冴の様子を紅子は気にかける。


「どうしたの、いちごちゃん?」


「いや――別に。」


気にかかりだしたら、居ても立ってもいられない。


とりあえず、言葉を選んで説明する。


「あの――今、知り合いのお爺さんからメッセージが来たんだけどさ――図書カードを作るためには、学生証が必要なんだって。――紅子ちゃん、持ってる?」


紅子は少し考え、困ったような顔となる。


「あー、持ってない。」


「そう。」


「いちごちゃんは?」


「持ってるよ? 校則だもん。」


紅子はさらに困った顔をする。


「うーん、じゃあ、どうしよ? 図書館で本借りるかもしれないし――一旦、戻って、取りに帰った方がいいかな?」


「まあ、そっちのほうが間違いはないよね。」


「そっか――」


「幸い、学校からまだあんま離れてないし、一旦戻ろうか。」


うん――と紅子はうなづく。


それから、二人で元来た道を戻りだした。

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