第二話 見知らぬ教師
三時間目と四時間目の間の休み時間のことである。
実習棟へと移動し、ついでにトイレへ這入る。
女子トイレを使うことにも、今はもう慣れてしまった。
トイレから出て、理科室へと向かう。
何者かから呼び止められたのはそのときだ。
「上原さん。」
振り向くと、見知らぬ女性教師が立っていた。二十代半ばほどか。灰色がかった髪が胸まで伸びている。口元の紅が大人びた印象を与えた。
一冴は首をかしげる。
「何でしょう?」
「スカートのファスナーが下りてる。直して。」
言われて、自分の左腰へと目をやる。
確かに開いていた。
慌ててファスナーを上げる。
同時に、そっと彼女は近寄ってきた。一冴の手元へ一枚の紙を差し出し、耳打ちをする。
「受け取って。誰にも見られては駄目よ。」
何だろうと思いつつ、紙を受け取る。
紙から手を放すなり、彼女は立ち去った。
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