第5話⁂おもいで⁂
父の賢伍はふと幼い頃に思いを馳せます。
賢伍の母は賢伍を産んで間も無く産後の肥立ちが悪く25歳の若さでこの世を去っているのです。
物心付いた頃には後妻の栄子が家を取り仕切っており、実の母親と思って疑いもしなかったのです。
義母栄子も「賢ボウ!賢ボウ!」と漫勉の笑顔で可愛がってくれたのですが、妹真弓が産まれてからは、まるで人が変わったように継子いじめが始まったのです。
妹の世話をしていると「チッ触らないでおくれ!」
「ママどうしたの急に?僕たちは兄妹だから!」
「お前はあの女に似てどうしようもない性悪だねぇ~!お前は鬼っ子だ!真弓に触らないでおくれ!」
「一体何を言ってるんだよ~?」
「フン」
まだ4歳の賢伍は悲しくて!悲しくて!「ワァワァ~~ン😭」泣きはらしています。
ある日義母栄子が里帰りをして留守の時に父育三郎に全てを打ち明けたのです。
その日の夜父がリビングルームで栄子を怒鳴り散らしています。
「お前みたいな女出て行け!」
「あなた許してワァワァ~~ン😭あなたがいつまでも雪乃を…………ワァ~~~~ン😭」」
実は実母雪乃は田所家が代々懇意にしている都内に5店舗構える老舗うどん店山田屋のお嬢さん。
育三郎と栄子は家が近所という事もあり幼い頃からの幼馴染。
1つ年上の育三郎はスポーツ万能であの当時一世を風靡した名優阪東妻三郎に何処となく似ている優男。
両親が阪東妻三郎の大ファンで父親育衛の一文字【育】と阪東妻三郎の【三郎】を取って育三郎と命名したのです。
栄子が思いを寄せるのも無理はありません。
そんな栄子の思いとは裏腹に育三郎は家族でよく行く山田屋の看板娘雪乃の余りの可愛らしさに無我夢中です。
そして育三郎の押しの一手でやっとの事結婚にこぎつけたのです。
育三郎は雪乃を心の底から愛しています。
ですが?結婚してたったの2年であっけなくこの世を去ったのです。
あんなにも愛した妻との別れに憔悴しきっています。
それでも跡継ぎの長男がいつまでも独り身では会社が回って行きません。
そんな時にそばで寄り添ってくれたのが栄子なのです。
まだ傷も癒えない育三郎ですが、親の矢継ぎ早の催促に仕方なく栄子と結婚したのです。
栄子だって愛する育三郎の忘れ形見。
慈しみの心で賢伍に愛情を注いでいたのですが、最近とみに雪乃に生き写しのように似てきているのです。
{忘れよう!雪乃の事は忘れよう!}とすればする程あの美しい雪乃を思い出してしまうのです。
又育三郎も結婚して2年経つにも拘らず、時間が空くと何時間でも仏壇で意味不明な独り言の繰り返し、未だ育三郎の心の中は雪乃で一杯なのです。
栄子の入る隙間など・・・
余りにも雪乃に似ている賢伍を見ていると苦しくて苦しくて気が狂いそうな栄子なのです。
そして賢伍を虐待する事で{やっと雪乃を抹殺出来た!}といっときの平穏を保つことができるのです。
ですが?その後は物凄い嫌悪感が襲うのです。{何でこんな事を?バカな!}
こんな過去のトラウマが原因で大人の女性を愛する事が出来なくなってしまった賢伍。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます