第10話 弾作り

 “ふむ。つまりお前は地球というところにいた人間でつい昨日機械の魔物に転生したということか? ”


 まあ、大体そんな感じですね。


 “にわかには信じがたいが、どうやら事実のようだな。まあ、それは置いておこう。それよりあの竜をこの森へ連れてきたのがキサマだという話だ”


 そう言いながら俺をギロッと睨む。


 あ、やっぱ怒ってますよね。


 “当然だ。この森は我の縄張りだぞ”


 なるほど通りで『森の覇者』なんて称号があったのか。


 そ、それでどうしたら許してくださいます? 


 “1つ頼みごとを聞いてもらおうか。それで手を打ってやる”


 え〜、あのステータスで俺の手助けなんか必要なのか? 


 “個ではどうにもならぬこともあるのだ”


 さいでっか。頼みごとの内容は? 


 “後で話してやる。な〜にキサマにもメリットのある話だ。さあ、背中に乗れ。我の住処に案内してやろう”


 ……なんか嫌な予感がしなくもないけどまあ、拒否権はないよな。

 でもまず、俺の目的を果たしてからにしたいんだけど。


 “む? 目的とはなんだ? ”


 弾丸を作りに来たんだよ。


 俺は『射撃』スキルの話をする。


 “そうか。ならばさっさと済ませよ。さあ、背中に乗れ”


 ……背中に乗せたいの? 


 “そうか歩きたいのか。では我はキサマがノロノロ歩いている様を空から眺めさせてもらおうか”


 いや〜、さすが森の覇者さま! 

 私のような虫けらを背中にお乗せくださるとはなんと慈悲深い。

 ささ、お行きましょう! 


 そそくさと狼に近づいた俺をジト目で睨んでくるが、それでも座り、乗りやすくしてくれるあいつはツンデレなのかもしれないな。


 “ツンデレという言葉は知らんがバカにされている気がするぞ”


 やべ、心読まれてる。

 これ、防ぐ手段ないの? 


 “心を閉じる練習をすればできたはずだ。『念話』のスキルがあれば簡単だが持ってないのだろう? ”


 残念ながら持ってないな。

 心を閉じるってどうやるんだよ? 


 “さてな。試行錯誤するがよいわ”


 ……なんかちょっと怒ってない? 


 俺の呟きには答えず、狼は立ち上がり、跳び上がった。10m程上がると空中を走り出した。


 凄まじいスピードだ。

 これがステ4桁の世界か。

 機械の残骸の山まで100mはあったのに一瞬で駆け抜けた。

 山に到着したら、ゆっくりと降下していく。


 “さあ、さっさと用を済ませよ”


 俺を下ろすと、座りながらそう言う。


 俺は足元の用途不明な機械を掴む。

 念じると手に淡い光が灯り、掴んでいた機械が徐々に変形していく。


 …………。


 うん。めっちゃ遅い。

 やはりスキルレベル1だとこんなものか。

 ってそういえば、弾の大きさってどのくらいなんだ? 


 俺は銃口や弾を入れる部分を見ながら考える。


 …………。


 教えて『演算』先生! 


 というわけで『演算』スキルを使ってみた。


 やや、間があって頭に文字が浮かんで来た。


*******************

直径15mm。長さ50mm

*******************


 ふむ。銃に詳しくないからよく分からんな。

 ヤバイのか大した事ないのか。

 まあ、どっちでもいいか。

 さっさと作っちまおう。


 ステータスを確認しながら『金属変形』スキルを使うと、だいたい1秒で1減っている。


 ……あれ? これ22秒しか使えなくない? 


 そして、たっぷり10秒かけて一個の弾丸ができた。


 ……あれ? 2個しか作れなくない? 


 そして、俺の予想通り、3個目を作っている途中でMPが尽きた。


 なんてこったい! 


 “どうした終わったのか? ”


 い、いや、MPが尽きたみたいだ。

 MPを渡すみたいなスキルは持ってないよな? 


 “残念ながらないな。ではそれは諦めて我の住処へ来てもらおうか”


 う〜ん、できればもっと作りたかったんだけどな。

 MPの回復方法が時間経過と進化だけなのはキツイな。


 “生物なら寝るだけでHPMPは回復するのだがな”


 なに!? そうなのか!? 羨ましい! 


 “キサマはそのかわり、飯を食う必要も寝る必要も状態異常の大半も無効にするではないか。贅沢な言うな”


 そ、そうだけどさ〜、HPMPの回復が遅いのは致命的だろ。


 “言っても変わらん。いいから乗れ”


 俺は渋々、狼の背中に乗る。


 ちなみにマナリスや弾丸は『格納庫』のスキルでしまった。

『格納庫』は胸に蓋があってそこを開けて中に入れるみたいだ。

 よく小説にあるインベントリみたいのを想像していた俺は思わず、「そこぉ!」と心の中で叫んでしまった。

 口は進化してもないままだった。

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