第150話 燻製熟成・狩猟罠の見回り・新たな獲物 その3

 無事イノシシの内臓を抜き取り、川の深場に蔓と枝と岩を使って流れないよう漬け込む。ふう、と一息をつく。良い仕事をした。自己満足に愉悦をプラスする。

 にしても水浴びで汗を流したと思った矢先の思わぬ出来事でまた汗をかいた。持参した竹の水筒で水分を補給、全裸をいいことに三人して少し上流の川に飛び込む。


 美琴がどういうわけか上気した顔で抱きついてきた。


 イノシシの襲来をものともせず対処してほっとしたのだという。それで、なんだかわたしの裸体にムラムラしたきたそうな。いや、さすがにそれはないわ。引くわ。


 ああ、でも、美少女から一身に好意を向けられると、弱い。特に美琴には。


 口づけを求めてきたのでその通りにした。どうせ見ているのはわたしたちの他に義姉の咲子しかいない。ズギュンとやっちゃう。放置プレイも案に浮かんだが、放っておくとどんどん悪化しそうな気がしたのでその予防的措置にも唇を重ねるべきだ。


 ちらり、義姉の方へ視線を送る。咲子はそれに気づいてツイっと目を逸らした。


「サキ姉ちゃんもご一緒に?」

「わたしは、遠慮する。その、アレだ、美琴を愛でてやれ」


「そう? 昨晩のサキ姉ちゃん、凄かったのに?」

「言わんでくれ……」 


「タマちゃんの汗の味、うふふ、うふふふふ……っ」


 キスから移行して美琴は首筋に舌を這わせてきた。この子、隙あらばペロリしてくるな。見事なペロリストぶり。前世はわんこだったのかもしれない。


「そのままでいいから聞くのだ。先ほど突進してきて返り討ちにしたイノシシの一件は、おそらく、シンちゃんへの報復行動と見ていいだろう」


「だから、もう。シンちゃんじゃないってば。……それで?」


「厳密にはこの子が元いたウルフパックへの報復。シンちゃんと初めに出会ったときに、彼は後ろ足を怪我していただろう。あれはこのイノシシとやり合った影響だと考える。それを踏まえ、先ほどの襲撃時の行動を思い出してくれ。この子、いや、震電はまずアルファたるお前の方へ逃げた。自分では絶対に勝てぬ相手だと知っていたためだ。この辺りをさらに踏まえるに、あの突進は、わたしたちではなくこの狼が元いたパックへの憎悪がそうさせたと考えるのが一番自然だと思うのだよ」


「狼ファミリーに襲われての報復? 狩る狩られるなんて野生の常じゃないの?」


「あくまで推測に過ぎないが、可能性の話として聞くといい。わたしが思うにあのイノシシの子、ウリ坊たちが狙われたものと見ている。もう少し具体的に言おう。イノシシは基本的に春に出産する。それに失敗すると秋に産む。大体一度に四、五匹。あの伸び切った乳首はごく最近まで授乳していた証拠。それが今や単体。つまるところわが子を狙われた。もちろん、母親たるそいつは、懸命にわが子を守ろうとしたはずだ。が、守り切れず、すべて喰われ、自身も全身に傷を負った。その治りかけの傷はその苛烈な防衛戦のなごり。そうして幾日か傷を癒して――言っておくが、野生動物の治癒力は侮れんからな。明らかに重傷を負っているのに、傷を舐めるだけの処置で数日後には治っていたりするのだ。そうして復讐の機会を伺った。折よく、いや、結果的には最悪だが、この子――シンちゃん、否、震電を見つけた」


「人間じゃあるまいし、そんなことあり得るの?」


「うむ。元来イノシシはとても慎重な性格をしている。その慎重さがわが子を獲ることで失われ、しかも手負いの獣となったすれば、決して有り得ぬ話ではない」


「それで狙われたのはわたしたちではなく、震電だったというのね」

「うむ」


「このイノシシも食べてあげないとね。それで供養になるかどうかはともかく」

「うむ」


「わたしはミコトに、現在進行形で性的に食べられかけてるけどね」

「……う、うむ」


 美琴はこちらの首筋に舌を這わせるだけでは飽き足らず、シンデレラバストと表現すると羞恥心もいくばくか隠せるだろうか、とにかく胸の両ぽっちり周辺に指を這わせて熱い吐息を零していた。これ、昨日わたしが教えた乳首オナニーではないか。


「はい、ミコト、そこまで……っ。変な声出ちゃうから、ダメよ……っ」

「ええー、最後はタマちゃんのオンナノコをぺろぺろするつもりだったのに……」


「やめてください、イッてしまいます」

「二人で、とっても気持ちよくなりたいよお……」


 まっ昼間からそこまで身体を許すつもりはない。 

 わたしは美琴の頬に軽く唇を当て、続きは夜にしようね、と囁いた。

 ぱあっと彼女は目にハートマークを浮かべて、うんっ、と頷いた。


 いやあ、美琴の発情っぷりはヤバいわ。ずるずると深みに嵌る。


 その後、水浴びを済ませたわたしたちは下着だけつけて、拠点へと戻った。





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