第89話 家族が増えるよ、やったね! その11
わたしたち三人は屠殺現場から離れ、支流へ少し遡ったところで水浴びをした。
もはや語るべくもなく、予想通りの展開だろうが少しだけ書き込んでおこう。
わたしは美琴に汗を濯ぐ名分で全身をくまなく手で触れられてしまった。しかもそんな自分たちに興奮でもしたのか、咲子まで混ざってきたので大変な痴態が繰り広げられたのだった。サキ姉ちゃん、アンタ仏マインドな悟りの境地はどうしたの。
まあ、同性間の交歓は、自分の身体でどこが気持ち良いか知っているので、それはもうハッスルハッスル、次回もサービスサービスゥなのである。そういうものと思って羞恥心を遮断しよう。どうせ、わたしたち以外、誰も見ていないのだから。
ちなみにどさくさに紛れてわたしは二人の乳首を吸って堪能していた。
おっぱい大好き百合星人。わたしこと時雨環なのであった。
タオルで水気を拭い、制服を着直す。緩やかな疲労感。わたしたちは川べりの岩に腰かけて、裸足のまま、互いに背中を預け合ってぼんやりと休憩を愉しむ。
「夕飯は罠魚籠の魚かな。焼く? それともセリとクレソンと一緒に鍋にする?」
「それもいいが、帰りにウサギの罠を見てから考えても良かろう」
「獲れてたらウサギ鍋に焼き魚だね。美琴が作る料理が好きだけど、こういう野趣あふれる食生活も悪くない。気をつけるべきは野菜をいかに摂取すること、かな」
「果物も獲れないかな……?」
「この時期だとアケビ、イチジク、梨、桃、ザクロか。ああ待てよ、イチジクは」
「……ううむ」
「あの果実の原産は確か――どうした、タマキよ」
「ところであそこに生えてる、あの木の実を見てくれ。あいつをどう思う?」
わたしはクスノキやブナの合間にさり気なく生えている一本の木を指差した。
「凄く、浣腸の形をしています……って言わすな! まごうなき、イチジクだ!」
「イチジクカンチョー。ウホッ、いい形」
「や、め、ん、か!」
「タマちゃんって、男の子同士も興味のある女の子なの……?」
「なんで『も』がついちゃうのかなぁー? どうしてなのかなぁー?」
それはともかく。
「せっかくだし取れるだけとっておこう。おやつ兼食後のデザートを確保だよ」
ちなみに咲子が言いかけてやめてしまった内容は、次のようなものだと推察する。
イチジクの歴史はとても古い。原産はアラビア南部。
不老長寿の伝説を持ち、六千年前のメソポタミアでは既に栽培されていた果物ではあれど、日本に伝来したのは、実は、江戸時代。
つまり、この可能性世界に存在するのはいささか不自然な果物である、と。
「イチジクは豊富にミネラルを含むため血や骨を作る助けになる。さらには水溶性ペクチンが胃腸の働きを活発にして通事を良くする。まさに女性のための果物だ」
「伊達にアレのモデルになるだけあるね。いやホント優秀だわ、お世話になります」
「真面目な話を、さらっとそっち系へ持ってゆくのはやめろというに……」
わたしたちはイチジクの木に群がり、持参した蔓のトートバッグに入るだけ実をもいで入れた。ついでに二、三個を別途にもいで、これは今食べるおやつにする。
「結構甘いね。野生産だし、もっと水っぽくてスカスカした味かと思ってたよ」
「川の水で冷やすともっとおいしくなるかも……?」
「それは良い考えだが、ミコトよ、おそらく川魚が突いて餌にしてしまうぞ」
それぞれに感想を述べつつ、三人はぺろりと食べてしまう。ごちそうさまでした。
一休みも済んで、僅かに陽の傾きを感じつつ移動を開始する。時計の針は十五時半を回っていた。あとは、ウサギの罠を確認して拠点へ帰るばかりだった。
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