第78話 家族が増えるよ、やったね! その2

「メイン装備はサキ姉ちゃんは弓矢、わたしは軍用シャベル、ミコトはレーベくんを筆頭としたイヌガミね。サブ装備はナイフ。あと、コンパスの針はちゃんと携行ね」


「お前はそのシャベルがお気に入りなのか?」


「そりゃあもう塹壕戦の二割はこれでブッコロという実績があるから。あっと、そうだサキ姉ちゃん。竹で水筒を作らない? 江戸時代の旅人とかが持つアレをさ」


「ああ、アレか。確かに探索するのなら必要になるな」

「わたし、こないだ、雑貨屋さんで一本三千五百円で売っているのを見たよ……」

「マジで? こないだ父さんが買ってた、密林ロゴ入り水筒より千円も高いじゃん」


 食糧事情よりも水分補給を第一に。その、竹水筒の作り方は非常に簡単だ。


一、まず節を両方に残して切り取り、呑み口側は竹面を五センチほど残しておく。

二、次に呑み口側の竹面を、節の辺りでノコギリで半分ほど切れ込みを入れる。

三、ナイフで上部から刃を打ち込む。竹の筋に沿っているので容易に刃は入るはず。

四、後は適当に飲みやすいくらいの呑み口を残してバリをナイフで綺麗に整える。

五、呑み口側の、節の面の部分に穴を開ける。ここから水を入れたり飲んだりする。

六、蓋となる部分も竹を削って作る。多少雑でも、呑み口穴を押さえられれば良い。

七、仕上げに呑み口側の節に紐を引っかけてくるりと縛る。携行は腰か肩でどうぞ。


「ついでに余った蔓でトートバッグ風のものを作ってみたぞ。どうだ、使えそうか」

「凄いやサキ姉ちゃん。これで採取物を持ち運びするのがとても楽になるよ」


 さっそくわたしは缶詰の空き缶の一つをそこに入れた。


「松脂があったらこの空き缶に採取ね。接着剤とか松明の燃料にしたいから」

「うむ。ついでにその松にスネアートラップを仕かけよう。少々時期が早いが、もしかしたら早生の松ぼっくりを狙ってやってくるリスが獲れるかもしれん」


「リスって美味しいの? ペットショップで二千九百八十円で売ってたけど」

「値段はともかく、ウサギは淡白だがリスは結構濃厚だぞ。楽しみにするがいい」


「うっひょー。脳みそも食べてみたいけど、どうしようかなー?」

「あの漫画だな。まあ好きにするがいい。ぬたっとした食感でなかなか美味いぞ」


「うふふ、獲れたらいいなぁー」

「えぇー。咲子お姉ちゃん、リスの脳みそ食べちゃったの……?」


 引いてる美琴はともかく、わたしたちは探索の準備をテキパキと行なう。


 最初に行動予定を話し合ったように、罠魚籠を小川に仕掛けに行く。

 設置ポイントは草影がある場所がベストとなる。が、適当に流れのある場所を選んでも問題ないとのことなので、その辺りも踏まえて設置場所を選ぶとする。


 蔓で岩に引っかけて流されないように気をつける。裸足で入る川は冷たくて気持ちがいい。ついでなので先に設置した二個の罠魚籠の確認もしておこう。


「うおっ。魚だけにっ!」

「オヤジギャグか。タマキよ、どうした?」


「うん、サキ姉ちゃん。もう魚がかかってる。三匹も入ってるよ!」


「なんと。入れ食いではないか。ならば蔓を渡すので魚籠の口をそれで閉じてくれ」

「あいあいさー。さてさてこっちは……やった、二匹いるよ! 大漁大漁ぉ!」


 魚が罠に警戒心がないのか咲子に川魚の罠漁の才能があるのか、そのどちらでもあるのかは知らないが食料確保は喜ばしい。わたしは勇んで罠魚籠の口を蔓で閉じた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る