第56話 寝床の作成。愛の巣の作成? その8
「ミコトのおっぱいはまた今度。わたしがアレになったら、ねぶって転がして吸いまくる。胸元には強くキスをしちゃう。わたしの刻印をきっちり残してあげる」
「あ、う、うん。えっ、本当に……? 信じてもいいの……?」
「トラスト・ミー。んで、ミコト。わたしのお腹とか胸を嗅いでみて」
「うん、喜んで嗅いじゃう……」
わたしは起き上がり、美琴の頭を胸に抱いた。彼女の熱い息を感じる。どうやら嗅ぐというよりは深呼吸をしているらしい。ちょっと恥ずかしいが、我慢である。
「あれ、タマちゃんの匂いが。思ったほど……」
「感じないよね」
「うん。それよりいつ見てもおっぱい、可愛いね。大好き」
「お、おう」
辛いところだが、わたしの胸はAカップだった。母からの遺伝である。
貧乳で良いところなど、巨乳と違って肩が凝りにくくて、下を向けば足元が確実に見えて、走る際は胸の反動をほとんど気にせず全力で駆けられるくらいだった。
やはり女性的な魅力を得るには、ある程度の乳房はあったほうがいいと思う。
ちなみに母は、見た目が完璧にロリっ娘なので、アレはアレで良かった。
母の胸のサイズは、自称A。実質はAAA。ぺたんこである。
「サキ姉ちゃん、思い立ったが吉日。ボウルに入った予備の水を使うけどいいよね」
「うん? どうするのだ?」
「コンロにかけて湯を作って、スポーツタオル、持ってきているでしょう。あれを投入して身体を拭こう。五日間とはいえサバイバル状況下で不衛生なのは良くない」
「言わんとすることはわかる。しかし藪から棒に、なぜだ?」
「藪からスティックじゃないよサキ姉ちゃん。病気は、体力の低下と劣悪な衛生状態からやってくる。順当に全員が全員、それ相応に若さのニオイを発散させているってコトよ。汗かいてるし、やっぱほら、異世界に飛ばされてストレスも感じてるし」
「ああ、なるほど。嗅覚疲労か。臭っているのに気づかなくなっていると」
「そういうこと。下着は明日の朝にでも川で洗って干すとして、まずは身体をね」
わたしたちは各自のタオルを湯で満たされたボウルに投入し、下着姿になって身体を拭いた。女の目しかないので裸にまったく抵抗はない。バッと脱いじゃう。
美琴がこちらの背中を拭いてくれるというので厚意に甘えたら、なんと脇のニオイを嗅がれた上でぺろりと舐められてしまった。ひゃんっ、と乙女っぽい声が出た。
身体を無事(?)に拭き終えて、三人は制服を着直した。
タオルは天井部から張り出した神木の根にロープを一本渡して、そこに陰干しにする。この洞穴は常に奥から緩い風が流れてきている。明日には乾いているだろう。
現在、十九時半を回ったところだった。
太陽もさすがに落ちて、だいぶ薄暗くなっていた。
身体を拭ったわたしたちは、少し休憩を取って再び作業にかかっている。
トイレ用に竹を床縛りにした目隠しは、わたしの身長分の、幅百六十センチのものを二枚用意することにした。これを横と後方に差し込むつもりでいる。
余談になるがトイレはある程度排泄物を溜めたら、その穴は埋め立てて別の場所へ移動させる心づもりでいる。衛生に気を払い、身の安全を守るのである。
残るは出入口用の一枚なのだが、あれはかなり幅を取るため明日に回した。ここで作ってしまうと外に持ち出せなくなってしまうのと、何より材料が少々足りない。
「む? 犬の遠吠えが、聞こえなかったか?」
弓の制作にとりかかっていた咲子が、ふと、ナイフで木を削る手を止めた。
「ごめん、思った以上に真剣に取り組んでいたのでさっぱり。ミコトはどう?」
「遠くの方で、おおおーんって聞こえたよ……」
「マジか。と言うか実は犬じゃなくてニホンオオカミだったりして」
咲子に教わり、わたしはロープを紐から糸になるまでほどいてその上で細手の紐へと編み直していたのだった。
目を閉じて、耳を澄ます。
うん、聞こえる。
どこかで犬らしきものが遠吠えをしている。
冗談で狼と言ったが、さて、この声の正体は如何に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます