第26話 隠し砦の三少女 その2
わたしたちは洞穴に入って太陽光の届くギリギリのところに拠点を敷いた。
荷物を降ろし、ふうと息をつく。
洞穴道は当然ながら傾斜してはいたが、中は最初だけ狭く――と言っても入口は男を三人並べて立たせても余裕があるのだけれども、そこからすぐに内部はぐっと広がっていた。少し思いつくものがあり、わたしは咲子に耳打ちする。
「この神木の中、色々と開発した肛門と直腸の構造に似ていない?」
「……お前と言うやつは。それだとこの心地よい風の正体が屁になるではないか」
「茶色い固形物が噴き出すような珍事は、ないよね?」
「それはウン――あああっ、もう、知らんわっ」
「サキ姉ちゃんそこまで言って寸止めとかマジウケるっ。痛ぁッ、ごぉめんてー!」
咲子に頬っぺたを両方摘ままれてグリグリと引っ張られた。
女子高ではこの程度の話、普通である。むしろ咲子が精神的に潔癖過ぎる。
いずれにせよほっぺたが痛いのでミスカトニック女子高で存分に鍛えた、品のない発想はこの辺りでよしておこうと思う。……またやるかもだけど。
さて、この神木の内部構造は基本的に奥へ繋がる傾斜坂になるのだが、描写の通り思った以上に広く、場所を選びさえすれば比較的平らな部分も見つけられた。
「あ、そうだ。ちょうど良いモノがあるんだった」
思い出して、スクールバッグの底からあるものを取り出した。
それは百均で購入したものの活躍の場に恵まれず、さりとていつかは使うだろうと入れっぱなしにしていたレジャーシートだった。
ばさりと塩化ビニールシートを広げてみる。
両手いっぱい、それ以上に、大きい。
なるほど、説明書きでは180cm×180cmとある。
畳二枚分。おおむね一坪であるらしい。
しかも百均製品とは思えないほど丈夫で厚みがあった。アタリ商品だった。
「床面に藁や枯草でも重ねて、その上にシートを敷けば快適になりそうね」
言いながらわたしはビニールシートを地面に敷き、靴を脱いで寝転がる。これに倣い、咲子と美琴も靴を脱いで、わたしを真ん中にちょうど川の字に横になる。
「おなかすいたなー」
腹の虫が情けない音を立てた。菓子パン如きでは満たされないのだった。
「少し休んだら、缶詰を一個開けよっか。パインの缶詰とか」
「それ、とてもいい考えだと思う……っ」
「缶詰は何個あるのだ?」
「五個。パインとみかんと白桃。あとはシーチキンとコンビーフ」
「他に食料的なものは、あるか?」
「小麦粉と調味料くらいしか。あっ、バッグの中にカロリーメイトがあったかも」
「上々だな」
「サキ姉ちゃんとミコトは?」
「わたしは……すまん。必要なものしか持ってきてない。エチケットガムくらいだ」
「ごめんタマちゃん。レモン塩飴と、フェレット用のおやつクッキーしか……」
集計しよう。現在、自分たち三人が持つ食料は――、
缶詰が五個。うちフルーツ系が三個、惣菜系が二個。
なんとなくバッグに入れっぱなしになっていた未開封のカロリーメイトが二箱。
ボトルパックのエチケットガム、塩飴などのお菓子類が少量。
口に入れられる意味合いで、塩、コショウ、七味とうがらしなど、各種調味料。
お好み焼きを作るために購入した徳用一キロの小麦粉が、残量約三分の二。
これは数に入れていいのかためらうけれども、フェレット用のおやつが一袋。
以上であった。
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