第12話 仲良し、三バカ、女子高生 その4

「あー。ミコト、それなら考えない方がいいわ。三人そろえば文殊の知恵っていうけど、わたしらが考えても良くて三バカ、悪くて六バカになりかねないわ」


 わたしは口を挟む。


「う、うん。そうなる……のかな? でもタマちゃんが言うなら、そうかも……?」

「いやいや。ミコトよ、そこで得心するな。わたしとしては納得がいかん」

「あはは、そこは頷くところさね。大体サキ姉ちゃんもその武士めいた喋りで煙に巻いているけど、案外、アレよ? 特上の、アレ。わたしと同類のアレ」


「わたしのどこが、特上のアレなのだ!」

「この調理セット、夏休みの登校日に学校で鍋物が食べたいって、サキ姉ちゃんの提案じゃんか。くっそ暑い中、はぁはぁ言いながら部室で熱々鍋とかマジありえん」


 咲子が食材担当で、わたしは調理器具担当だった。

 ちなみに一度目はお好み焼きで、二度目がうどんすきときたものだ。クソ暑くて死ぬところだった……。美琴は夏休みの間、宗家へ出ずっぱりで会えなかった。


「とか言いながら、わたしよりノリノリだったのはタマキではないか」

「当ったり前でしょう。学生時分でしかこんな無意味なこと胸を張ってできないし」

「無い胸を張られてもだな……」


「むっ、わたしのは成長中なんですー、サキ姉ちゃんみたいに完了してませんー」

「まるでこっちまで無いように聞こえるぞ。なんならとくと揉んで確かめるか」

「揉む。揉んで揉んで揉みしだく。このうらやまけしからんデカ乳め!」


「よし、来い! 存分に揉むが良い!」

「しかし両手がふさがっているのだった!」

「まったく、持ってきた日にきちんと持って帰れ!」


「洗って乾かすの、時間かかるじゃん。なら、洗って部室に置いておいて、気が向いたときにでもまとめて持って帰った方が手間が一度で済んで楽じゃん?」

「……気持ちはわからんでもないが、それ、本当に楽か?」

「めっちゃしんどい。だから、この片方持ってちょうだい。愛してる、結婚しよう」


「ふっ、もうすぐ近鉄尺土駅だ。がんばれ」

「いけずぅ。ミコトぉ、助けてぇ」


「じゃあわたしが、タマちゃんの胸を揉んであげるね。大きくなあれって……」

「この流れでなんでわたしの胸なの! ちょ、両手が塞がってるのにっ!」

「はーい、モミモミー」

「にゃははっ、うふふっ、ダメっ、汗でべっちょりなのに、くすぐったいーっ」


 クスクス笑う美琴。つられて笑うわたしと、咲子。

 仲の良い、おバカが三人。


 このすぐ後に、ちょっとどころではない受難が控えていることも知らずに。





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