第11話 仲良し、三バカ、女子高生 その3

「そういえばミコト、あんた夏休み中に宗家に出向いていたんでしょう? 分家筋筆頭の、白露家としての顔合わせ、上手くいったんだよね?」


 宗家は宗家である。わたしのような分家筋の小娘がその名を軽々しく口にしていいものではない。ゆえに今後もこの呼び方で通す。


 もっとも、四国――主に土佐地方に行けば、古い世代の人たちならばたいていの人が知るはずの家名ではあるのだが。


「顔合わせは、うん、大丈夫だったんだけど……」

「言葉に含みを持たせるわね。どうしたの、何かあった?」

「大伯母さまは、いずれ宗家の家督を継ぐだろうわたしに、試練を課すって……」

「試練? 要するにテスト? うっわー、わたしテスト大っ嫌い」


 とある理由によって、わたしたちの一族は、基本的に女性が家を継いでいた。


 しかし、宗家は長男次男三男と、子が男ばかりだった。これでは家の存続に支障をきたす。繰り返すが、わたしたち一族の家の継承権は、女性にこそあった。


 他方では珍しいかもしれない、女権の一族である。


 なので血縁の比較的遠い傍系より宗家へ嫁を迎え――というのも直近の家系では生物学的以上に一族の血が濃くなりすぎては困る神話技能的理由があるためで、そこで白羽が立ったのが傍系筆頭たる白露家の長女、白露美琴なのだった。


 彼女は、将来、宗家当主となる。


 なんとなくわたしは両手に下げた荷物袋を、サッカーボールのリフティングのようにして、太ももの辺りでポンポン跳ねさせつつ歩いた。

 足の動きに合わせてひらひらと舞うプリーツスカートの絶対領域に、咲子は一瞬だけ眉間にしわを寄せる。見えそうで見えない健康美の良さがわからないらしい。


 ちなみに、このリフティング袋の中身は万能包丁および多用途ナイフ、銅鍋、フライパン、焼成用の網、ボウルにフライ返し、ちょっと使った小麦粉と缶詰が五個、各種調味料、諸々の調理具一式である。重量もさることながら、とにかくかさばる。


「それでミコトよ。試練とはどんなものを? 助力して問題ないなら手伝おう」

「わたしも、もちろん手伝うよ」

「うん、ありがとう。それがね、……」


「ん? すまない。意味が今しばらく、飲み込めなかった」

「わたしもよくわからないの。試練が訪れるって、どういう意味だろう……?」





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