第10話 仲良し、三バカ、女子高生 その2

「タマちゃん、タマちゃん。それでクリスマスがどうしたの……?」


 珍しく美琴が話の続きを促してきた。

 暑い時期にミスマッチな冬の話題で、気持ちだけでも涼しくなりたいのかもしれない。わたしはもったいぶって咲子をからかうのをやめた。


「あ、うん。じゃあ質問。クリスマスで本当に偉いのは、誰? 二人とも、答えて」

「むう。アレだろう、子どもの夢を壊さぬよう玩具をそっと用意する親御さんだ」

「わたしは、大量の玩具をたった一晩で宅配できる足を持つトナカイさんかと……」

「なるほど、なるほど」


 わたしは頷いた。それをじっと見る四つの目。二人は回答を待っていた。


「どちらも正解。現実リアルだとサキ姉ちゃんが正しいし、幻想ファンタジーだとミコトが正しい」

「で、お前はどうなんだ」

「タマちゃん自身の答えは何かな……?」

「わたし?」

「うむ。われらに聞くだけ聞いて自分は答えないのは良くない」

「うん……」

「わたしは、ときと場合による」


 なんだそりゃ、と二人は互いに顔を見合わせた。


「モノの見方ってやつでさ、AにはAなりの理屈と正解があって、BにはBのね」

「学力が基本的に足りぬ頭で何か考えていたんだな? 内容は訊かんが」

「でもそんな感じのタマちゃん、可愛いね……」


「可愛いのは良いとして頭が足りないのは余計。だいたいうちのガッコの学力って並盛りだよ。つまりわたしみたく美少女で頭が残念な娘がいても、ヘーキヘーキ」

「自分自身を美少女などとのたまう時点でかなり脳みそがアレだと思うが」

「うわー、ひでえやー」


 少々ややこしいが、手記を書く以上はちゃんと要点を押さえるべきだろう。


 わたしたちの通う高校は、奈良県葛城市の北部に陣取る超難関進学校、私立桐生学園、ミスカトニック大学付属高等学校とはまったくの別口に当たる――、


 口さがない人に言わせればオマケの分派的存在に位置する私立桐生学園、ミスカトニック『女子』大学付属『女子』高等学校だった。


 前者は男女共学で学力は国内トップクラスの超エリート進学校だが、わたしたちの通う女子高は偏差値的に言えば中の下から中の中。

 利点はエスカレーター式で、本体の女子大学まで簡単に進学できること。あとは桐生系列の企業に、就職活動でわずかながら有利に働くこと、か。


 とはいえ学園の立地場所も葛城市の東の端、隣町の大和高田市の境目で、大元となる超難関進学校と比べると本当にオマケのていを表しているのは納得できよう。

 さらに追記すれば、私立なので、公立と併願ではなく専願で受験すると多少学力が足りなくてもお情けで入学できる場合がある。……わたしのように。





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