男装令嬢の答え合わせ
その後、ラースと手をつないだまま、私は知りたかったことを確認した。その結果分かったのは、このふたつ。
ひとつめは、ラースが好きになる
コレは、どうやら魔力が、ある程度多い女の子限定らしい。
これは、森に入り込んだ庶民が対象外になってることからの推測だ。
基本的に貴族のご令嬢は魔力もちだけど、庶民の中には多くない。その上で『ある程度』の基準が高めなら、庶民の魔力もちはひっかからないんじゃないかと思う。
――ただ、分からないのが保護対象の
このふたつめというのが、好みじゃない相手を好きになるタイミングで、どうやら相手の態度が耐えられないと思う前後が多いらしい。コレを聞いてやっと、私も呪いっぽいと思ったんだけど……コレに私は違和感を感じる。
「なんか……保護するように仕向けてるみたいだよね」
「保護っていえば、まぁ、保護はしてたけど……」
「いや。捨てられてた状態を保護するのとはまた別で、ね。だってさ、嫌いな相手とは口も利きたくないと思うけど、好きな相手なら喜んでもらえることをしたくなるよね」
ラースは人がいいから、拾った相手が嫌な人でも最低限の面倒はみてあげそう。
「まあ……そうかも」
「だよね」
ただし、『呪い』が私の元婚約者みたいな行動や言動を抑止するためのものだとしたら、ある意味納得もできる。元婚約者は暴力をふるうことはなかったけれど、言葉の暴力はひどかったので……私も、最初の頃は精神的に病んでしまいそうだったもの。『こういう人』だと諦めたら、気にもならなくなったけど。
ちなみにラースいわく、『魔力持ち』で『暴力・暴言』をふるう人は本来いないはずらしい。理由はモニョっていたから、きっと『呪い』関連かな??
「『呪いの森に捨てられた女の子』は明確に
この認識。ちょっと引っかかるのは、『俺のもの』的なイメージで分かるってことなんだけど……女の子はモノじゃありません!
私がプンプンしながらそう指摘したら、ラースもゲンナリ顔で頷いた。
「メルが言うとおりでさ。分かってるのに、『モノ』扱いなイメージなのは結構微妙な気分。なのに、そう言うふうに感じちゃうんだ」
「むぅ……その時点では、『好き』とかもないんだよね?」
「『俺の』だとは思うけど『好き』ではないかな。ただ、経験則的に『好き』になるんだろうとは思う。けど――次なんて、ほしくない……」
私の手を握る指に、力がこもる。
それが、私から離れたくないと言ってくれてるみたいで、なんだか嬉しい。
「あのねぇ、ラース。私、ラースをお持ち帰りする方法。もしかしたら、分かっちゃったかも……」
彼は、自分の気持ちに自信をもてない理由を説明するために、『呪い』で『好意』の強制が行われるってことを話してくれた。
「ラースは、森のどこにでも移動できるけど、外には出れないんだよね。一人では」
きっと『保護対象』にも、『呪い』による『好意』の強制にも理由があって――
「『保護対象』に関しての理由は、この際どうでもいいけど……『好意』の方は、答えが見えるような気がする」
「メル、ソレ以上は――」
「ラースは、自分の気持ちに自信を持っていいと思います。以前の保護対象との関係がどうだったとかは、私にとっては些細な話だから」
正確には、『今のラース』になるために必要な経験を積ませてくれた人たちではあると思うけれど――そこを話すと長くなるので割愛だ。
私に答えを言わせまいと声を上げる彼を無視して、自分の気持ちを伝える。
――正解で、ありますように……
「私、今のラースが好き。――ラースは?」
目を合わせて口に出してから、ひどく恥ずかしくなって俯いた。
私の手を握る力は変わらぬまま、返事をくれない彼の方をチラッと見上げると、泣きそうな顔でコッチを見てる。
「ねぇ、ラース。『森の主』は心を通じ合わせた『保護対象』と二人でなら、呪いの森を出られるんでしょう」
ラースだけじゃいけなくて、『保護対象』の気持ちが友愛や親愛でもダメ。互いに同じベクトルで想い合うことが必要だから、事前にその方法を知ってはいけないんじゃないかと思う。
だって『恋』は、しようとするのは難しい。
気がついたら、その人でないといけなくなってるものなんじゃないかと思うから。
「俺が……本当に、メルのことを好きでもいいの?」
「むしろ、それは嬉しいです」
「森から出れたら――」
「お嫁さんにしてくれる?」
この期に及んで言い淀むラースに変わってそういえば、「喜んで」と、涙混じりの返事が返ってきた。
さてさて。ここで問題です。
この話が終わった時点で、未だに呪いの森から出られる兆候はないんだけど……二人で手と手を取り合って歩いていくしかないのかな?
――てっきり、森の外に強制送還されるんじゃないかと思ってたんだけど……
一人で外に送られてしまうことはなさそうで一安心だけど、私、ちょっぴり肩透かしを食らった気分です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます