41.生き死にを楽しみたいものですね
大戦中に死亡した人間は
個人的な感想だが、実に都合が良かった。
帝国主義を
フェルネラント皇国は、海外保護領の全ての
皇族の権利剥奪、国体の解体、連名三国の
最後の最後でロセリア帝国の陸海軍さえ正面から粉砕したフェルネラント皇国軍の底力と、マリネシア皇国とイスハバート王国、やはり国号を改めて参加を表明したペルジャハル皇国、新興の東フラガナ人民共和国が推進する
人種平等、民族自主独立の正義が、白色人種と帝国主義の
そうこうしている間に、ロセリアではコミンテルンが主導する共産主義革命が、エスペランダでは海外植民地の独立による国内経済の大崩壊が、アルメキアでは奴隷解放紛争に
結局、ただ一人、戦争遂行責任者であったエトヴァルト第三皇子の
罪状は、国際法はおろか過去のいかなる
世界大戦は、全ての直接手順を終えた。
偽装貨物船シュトレムキントの甲板から
黄金色の
「不満が顔に出ている」
「これが出さずにいられますか」
ジゼルの足元で、リントが、にゃあ、と鳴いた。
この距離感がやはり落ち着く、と、
「せっかくあなたと一心同体になれたのに、どうしてまた、個の境界が戻ってしまったのでしょうか。心外の
じろりと、ジゼルが
「当然、あなたもそう思っていますよね」
「仮説ではあるが、ヤハクィーネの言葉から推定できる。意思の形が影響したのだろう」
ジゼルの
「互いが強く自我を持ち、同等に相手を認識する。両者の意思が変わらず形を与え合うならば、一つに同化した後も個であり続け、もっとも安定した状態に終着する可能性が考えられた。以前と完全に同一の個ではないが、部分的な同化を
「つまり」
「ジゼルと私の、愛の形だ」
ジゼルが一度、
「それなら、仕方ありませんね」
朝の潮風に、長い黒髪が広がった。魔女の翼は、今は
「あなたも、ずいぶんと口が
「努力しよう」
ジゼルがリントを抱き上げて、
一羽の
船内への通用扉が開いて、白衣のような
後ろに、水兵姿のシュシュも続いている。シュシュは、心なしか浮き立っているようだ。
「ジゼル様、神霊様、申し訳ありません。
ジゼルが口を開くより先に、発動機の音を響かせて、一台の自動車が
車輪を横すべりさせて、
モニカが運転席から降りて、ジゼルに軽く一礼する。ジゼルが敬礼しかけて、苦笑して
別の道の曲がり角に、もう一台の自動車と、自動二輪車も隠れて見送っていた。
「良かった、間に合った! ああ、もう。二度も三度も置いてきぼりにされたら、たまんないわよ!」
「ありがとー、シュシュ。あんただけよ、あたしを気にかけてくれるのは! ジゼルもネーさんも、薄情なんだから!」
ジゼルとヤハクィーネが、あきれたような顔を見合わせた。
「戦争は終わりました。軍属を
「シュトレムキントは引き続き、
「それが、その……帝都にも、いづらい理由ができちゃって……」
ユッティが短い金髪をかき混ぜて、眼鏡の向こうの目を泳がせる。
ジゼルが小首を
「あー、うん。なんて言うか……皇位継承問題に巻き込まれそうな予感が、ね」
「エトヴァルトとの生殖行為による
「確認しなくても良いのよっ? ……って、あれ? なに、あんた達、また元に戻っちゃってるの?」
「不本意ながら」
ジゼルが答えて、
「ですが……そういうことでしたら、やぶさかではありません。また、私達で始めましょう。猫魔女隊の再結成ですね」
昨日、フェルネラントの
「まずは、マリネシア皇国に向かいますわ。軍港を拡張整備して、拠点と致します。その間は、まあ、お休みいただいても構いませんわ。ラスマリリ王女にも、御一報差し上げましょう」
「いいね、いいね! またみんなで、おそろいの水着を新調しようよ! 新しい
ヤハクィーネの珍しくのんきな言葉に、ユッティがいつもの調子で賛同し、シュシュまでが無表情の
ジゼルが
空は青く澄んで、潮風は
リントが、ジゼルの肩で、にゃあ、と鳴いた。
「フェルネラントは、時代の
「私達もその誇りを胸に、生き死にを楽しみたいものですね」
世界にあまねく、
今が一瞬であっても、永遠のつながりの一側面であるのなら、怖れるものはない。
ジゼルの心が、同じ安らぎを感じていた。それがわかる。伝わるのではなく、つながった生命が感じ合う。
これが幸福と定義されるなら、私とジゼルは、永遠に幸福であり続けるだろう。
〜 最終章 フェルネラント落日編 完 〜
<後書き>
猫大戦シリーズ、完結です!
ここまでおつき合いいただきました皆さまに、とにかくお礼申し上げます!
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
好きなものをありったけ注ぎ込んで、ちっとも薄めなかった本作、これだけの長編に書き上げられたことが嬉しくて、もう感無量です。
いろいろ至らない所もありますが、キャラクター達は、全員が魅力的に活躍してくれたと思います。
御意見や御感想など、ぜひぜひ、お聞かせいただければ嬉しいです!
また、十四年をさかのぼった平和なパラレル世界で、多感なツンデレ少女のユッティ、足長イケメンなクロイツェル、ちびっこ戦闘マシーンのジゼルに、最終章のゲストキャラ達も活躍する『いわく『大変』女性にもてる侯爵さまに、全力でもてあそばれてるよ!』も掲載しております!
こちらもよろしくお願いします!
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