40.出会えて良かったよ
いつしか戦場は陸も海も
リベルギントが、刃こぼれのした両の大太刀を捨てた。
残っている腰の二振りから、一太刀を抜いて、両腕で上段に構える。
左腕の
パルサヴァールも、ほぼ損壊した大剣と斧槍を捨てた。
腰の、翼のような
小さな音がして、基部が外れる。左右それぞれの双腕が、
武術に、一足一刀の間合い、という定義がある。一度の踏み込み、一振りの攻撃で相手にとどく距離だ。
機体の体格も武器の大きさも、パルサヴァールがまさっている。順当な間合いでは、リベルギントの攻撃がとどく前に、パルサヴァールの攻撃がとどく。
ジゼルが、リベルギントの両腕を、さらに高く上げた。
大太刀の
左半身を前にした横構え、
『とても……幸せな時間でした。ありがとうございます、イザックさま』
「終わらせるのは惜しいけれど、どっちかの最後の瞬間まで、一緒に行こう。つき合ってくれるよな、ジル?」
『こちらこそ、離しませんよ』
それが世界大戦の、歴史の特異点の、本当の
古い時代の終わり、新しい時代の始まり、秩序と秩序の
どんな形であっても、
風も、雲も、波も、鉄も炎も、音を消した。
長かったのか、短かったのか。動いた時、リベルギントは静かだった。
認識をすり抜けて、リベルギントが一足一刀の間合いのさらに先、
リベルギントの大太刀と、パルサヴァールの翼状の大剣が、同時に動いた。
リベルギントの大太刀は、天を突いた構えから、ほとんど真下に落ちた。
左腕の動きだ。
合わせて右腕を前に出す。肩ではなく左手首を支点に、右腕の直線運動が
大太刀は、右腕出力が生んだ斬撃の円周速度に、左腕出力が生んだ落下速度を上乗せして、
パルサヴァールが
その腕に、大太刀が触れた。
大太刀の引く閃光が、
********************
戦線は、
イスハバート王国軍も、マリネシア皇国軍も、ペルジャハル帝国軍も、東フラガナ共和国軍も、ロセリア帝国軍も、フェルネラント帝国軍も戦闘を停止して、
歴史の
そして決着して、
仰向けに倒れたパルサヴァールの
胸部装甲を開放して、ジゼルが黒髪を陽光に遊ばせた。汗で濡れた将校服を脱ぎ捨てて、上半身の
パルサヴァールの胸部に飛び降りて、
断ち割られた
「
「私もです。お別れは言いませんよ……あなたと私も、もう生命が結びついています。死んで、一つになって、別れて、生まれて……またどこかで、
「また敵ってのは、切ないな……」
「あなたと私の、愛の形です。決して、おろそかにはしませんよ」
ジゼルがバララエフを抱いて、口付けをした。
バララエフが自分の血に
ジゼルはバララエフの唇を強く吸って、血を飲み下した。
バララエフの体温が失われて、二人が離れた時、どちらも同じ血に濡れていた。
リベルギントが右腕をゆっくりと動かして、大太刀を高く
白銀の
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