最終章 フェルネラント落日編
31.いろいろ咲いていますね
フェルネラント帝国の
夕刻、薄白い
港湾作業員の姿はない。
代わりに、戦争責任追及、独裁打倒、殺人集団解体、などの横断幕をかかげた、叫び声も騒々しい集団が
シュトレムキントの甲板から集団を見下ろして、ジゼルが
「頭の花が、いろいろ咲いていますね。ああいう皆さまを見ると、戦争が終わったのだと、実感できます」
長い黒髪に、黄色人種にしては白い肌、引き締まった身体を白い将校用の礼装に包んで、左腰に
足元に、薄灰色の
「まあ、本国に直接の
ジゼルの隣で、ユッティが頭をかいた。
短い金髪に
ジゼルは18歳、ユッティは29歳を、戦場で迎えていた。
美女二人と猫一匹に、冷たい
「それにしても、動きが早いわね。こっちの船もばれてるし。
「でしょうね。おじさまのこともあります。コミンテルンとやらは、本国にも、相当深く根をはっているようですね……新しい形の戦争が、もう始まっているのかも知れません」
リントが、にゃあ、と鳴く。
ジゼルが抱き上げて、
「まあ、私達の仕事ではありませんよ」
「そりゃ、そうだけどさ。この場はどうしようか? 話すのも面倒そうだけど、こそこそ隠れるのも
「四、五人斬れば、後は逃げ散ると思いますが」
「ちょっと、
「冗談です」
ジゼルが口元に手をあてて笑ったが、ユッティは
ジゼルとユッティは、フェルネラント帝国の
現在はイスハバート王国、マリネシア皇国、東フラガナ共和国を加えた
ジゼルがもう一度、
反応が遅かった何人かをひっかけて、一台の自動車が
車輪を横すべりさせて
「ジゼリエル=フリード様! ユーディット=ノンナートン様! お迎えに上がりました、こちらへ!」
運転席から降りたのは、
三十歳ほどで、上品な若葉色の
集団が、混乱で浮き足立った。
「……誰かしら? あれはあれで、
「まあ、民間人を
「それより悪い選択肢、そうそうないわ」
ジゼルとユッティが
リントを入れた二人と一匹が後部座席に転がり込むのを確認して、物騒な美女も運転席に戻る。
車輪を空転させる勢いで自動車が走り出し、また集団を
「思い切りの良い運転ですね」
「いや、もう、この
後部座席でひっくり返りながら、ジゼルとユッティが苦笑する。運転席で、美女が器用に一礼した。
「私は従軍の機会がありませんでしたが、お二人のことは戦地の
「げっ、ばあちゃんとこの嫁?」
「ヒューゲルデン様のお孫さん、ですか」
モニカの言葉を、それぞれ別角度で受け止める。
「ごめん、あたし一抜け! 降りるわ、停めて!」
「先生」
「本家の屋敷に御案内するよう、夫から言いつかっております。情けない次第ですが、現在、帝都では先ほどのような思想団体が力をつけており、
「なによ、もう!
ユッティが物騒な
三人と一匹を乗せた自動車は、
<御挨拶>
黄昏の帝国を舞台に、最後の戦いに赴く完結編です。
猫魔女隊の戦争もいよいよ終局。
なんのために生きて、死ぬのか、時代の転換点となる最終決戦が見どころです!
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