26.戦争は向こうから追いかけてくる
これは充分な海軍力の育成に長い時間が必要なことから、海洋大国フェルネラント帝国の海軍による支援をあてにしたものだ。
現状の最大の
だが、エスペランダ、アルメキア両国の連合艦隊は、マリエラ群島の東方面、アルティカ大陸の西方面にあたる
フラガナ大陸方面に派兵する余力はないだろう。
この
そして長期的な観点で見れば、
地下資源の
フラガナ大陸沿岸にしぼっても、ゴードウィンの意図した海上流通と
大陸北方の陸路で退却する駐屯軍は逃げるに任せ、ジゼル達が次々に制圧する港街を新たな拠点にして、
戦術的には
お互いに軍事機密の集合であることから、
ロセリア帝国からの物資調達はカザロフスキーが取り仕切り、ニジュカの国軍編成も、同じ黒色人種であるワンディル
うねりのような
弟達のすることには口出しせず、かつての戦闘の
それは戦争そのものへの、無言の抵抗に思われた。
中庭に居住するウルリッヒは、最初こそ誰からも警戒されたが、今では皆に愛される友人の地位を勝ち得ている。
ティシャもまた、ウルリッヒに食事を世話する時だけは、深い心痛の影を隠さなかった。
ウルリッヒが、
笑おうとしたティシャの後ろの
その
「白人で、軍人で、
カザロフスキーが無言で、背中をすりながら、通り抜けようとする。
「あなたは、戦いに行かないの?
「当たり前だ」
カザロフスキーは、ティシャではなくウルリッヒを
「こんな地の果ての戦争で、死んでたまるか。
「そう。嬉しいわ。あなた、まともなのね」
「……おまえなんかと、一緒にするな」
ティシャの
「俺はおまえら有色人種の国を、いくつもつぶしてきた。男は殺して、女は
ティシャが振り返って、カザロフスキーを見た。ウルリッヒからは、どんな顔をしているのか、わからなかった。
「戦うのも、戦わないのも勝手だ。だが、戦争は向こうから追いかけてくる。生き残りたいのなら、逃げる準備くらいはしておけ。俺達白人は悪党だからな、
巧妙に、
カザロフスキーは
ティシャは、その場を動かなかった。
********************
しばらくの後、本会議場の応接広間に、今度こそ全員が集まった。
ジゼル、ユッティ、マリリ、クジロイ、ニジュカとワンディル、バララエフは各国軍の野戦服、カザロフスキーはくたびれた
リントとメルルは、ウルリッヒと一緒に、
「
「では、会議が終わったら
「いいわね、それ! 人間の男は昼から一晩、出入り禁止ね!」
「魔女の姉ちゃん達は、緊張感がねえなあ。いつもこんな感じなのか?」
「まあ、こんなもんだ。だからって甘く見てると、大将も小っせえ大将も、いつ刃物すっぱ抜いて暴れるかわからねえぞ」
「そう言えばユッティも、すぐ殴ってくるしなあ」
「心外です」
「心外だ」
「心外ね!」
バララエフとカザロフスキーは、首をすくめてなにも言わなかった。
ゴードウィンが、重々しく
「時間制限ができたようだ。
「と、言うと、内陸部の調整でしょうか」
「
ゴードウィンが
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