25.努力します
ゴードウィンが提案したのは、
トゥベトゥルとランベラを拠点にして、
そして
「大量輸送のできる
「可能な限り、ですよね?」
「ま、やってみましょ」
「努力します」
マリリとユッティ、ジゼルが、あまり誠実ではない返事をする。
港街の制圧と言っても、ランベラに対するトゥベトゥルのように、
実働戦力は、もって
並行してニジュカには、原住民族からなる国軍を組織してもらう。
当面の装備は、各国駐屯軍から
「弾薬類の仕様を開示してもらおう。ペルジャハル帝国でも、フェルネラント帝国からの技術支援を受けて、内製化を進めている。重要資材の
「ちゃっかりしてるなあ。うちからの資金援助なんだから、少しは
「長期的な投資と考えろ」
バララエフの
他にも、近代型の
「そんなにいろいろ言われても、難しいことはわからねえって!」
「さっきは
「た、助かったよ……っ!」
ワンディルが、胸をなで下ろす。ゴードウィンが一呼吸置いたが、バララエフはなにも言わなかった。
旧王国と同じような王侯貴族を設定するのは、感覚的に、富と権力の独占を想像させる。利害の
だが、共産主義などという外来の価値観を全面的に取り入れるのは、未知数の危険がある。
ゴードウィンは自分を知識的、指導的な
そしてバララエフも、現状では、それを良しとした。カザロフスキーも、口をはさまなかった。
「では最後に、国名だ。こればかりは、私からの提案はない。体制上、国号は人民共和国となるが、地名でも民族名でも良い、なにかを頭につけろ。
ジゼル、ユッティ、マリリ、ゴードウィン、バララエフ、カザロフスキー、リントとメルル、ついでにウルリッヒと、応接広間の全員がワンディルを見た。
ワンディルが、一安心した直後に
********************
ウルリッヒを通した認識共有は、リントに比べて視点が高く、
ワンディルとユッティに同行して、王宮の門前広場に出る。
夕刻、まだ明るいが、戻ってきたニジュカとワンディルの仲間連中が、
ジゼルとマリリは、リントとメルルを連れて、なにやら含みのある笑顔で先にシュトレムキントに帰って行った。
「……なによ、クロっちは一緒じゃなかったの?」
「あいつなら、仲間の指揮に戻ったぜ。ああ見えて、まじめで面倒見の良いところ、あるんだよな」
「あんたはどうなのさ。最初っから会議すっぽかして、
「こいつらみたいなのを、できるだけ死なねえように引っぱっていけば良いんだろ? 任せとけって。それしかできねえんだから、きっちりやるさ」
立ち上がり、ユッティの肩に手を回そうとしたニジュカの足元に、ウルリッヒがするりと割り込んだ。
彼の自由意志だ。ユッティとニジュカが、どちらともなく苦笑する。
「悪かったわね。いきなり、こんなところまで連れてきちゃって」
「ユッティ達の頼みなら、世界中どこまでだってお安い御用さ。ラージャも今頃、のけものにされたって、
「ペルジャハルの皇帝までついてきたら、立派な侵略よ」
「なあ……あんた、ペルジャハルの生まれなのか?」
二人の雰囲気に、どこか居心地の悪そうなワンディルが、口をはさんだ。ニジュカが笑って、同じ黒色人種の少年の髪を、大きな手でかき混ぜる。
「そうだなあ。覚えている限り昔から、ペルジャハルで奴隷やってたぜ。親はどうか知らねえが、そもそも会ったこともねえしなあ」
「いてて、子供扱いするなって! けど……そうか。あんた、苦労してるんだな」
「いや? 物好きな友達もいたし、なんかめでたいことがあったみたいで、奴隷からも解放されたしな。軍に入ったら飯も食えて、少ない稼ぎでも、それなりに酒も女も楽しんだよ。死んだ奴らも多いけど、そんなのどこでも同じだろ? 悪くなかったぜ」
「すげえなあ。俺も姉ちゃんから、馬鹿だ馬鹿だって言われてるけど、あんた、俺より馬鹿なんだな」
「今さら
過酷な身分制度の最下層から、終わりの見えない内乱に身を投じ、数知れない
なるほど、ユッティからの評価も、ワンディルからの評価も、ニジュカの自己評価も適切だ。
「ああ、まったく! 俺だってそうだよ! 考えたって仕方がねえ! 始めちまったんだから、死ぬまでやるだけだ! 戦争だろうが
ワンディルが仲間の
マリネシアの
ユッティが肩をすくめて、その肩に、今度こそニジュカが手を置いた。
二人の目には、ほんの少しの
戦争が終わる時、この中の何人が生き残っているか。確かに、気にしても仕方のないことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます