22.悪さなんかしないよ
夜が明けて、旧王宮の
ワンディル達は緊張の限界を超えたのか、全員、しばらく
「
「ええと……とりあえず、旧ネメリク王国旗で良いのでしょうか? それなら、どこかの通路で見た気がします」
「新しい国にするんなら、今日のところは、適当な布で間に合わせといた方が良いんじゃねえか?」
「どちらも一理ありますね」
ジゼルとマリリ、クジロイが、平然と会話する。
旧王宮は
視界のあちこちに、アルメキア軍兵士の血塗れの死体が転がっているが、気にしてもいられない。
チルキス族の男達は臨戦体制のまま、運良く
「
ジゼルが、口元に手を当てて考え込む。
戦闘の勝敗が決した後は、降伏すれば
戦争というのは、法律無用の自由な殺し合いではないのだ。
「やあ、ジル! 相変わらず
陽気な声が響いて、
ロセリア軍の茶色の野戦服を着て、腰に、これも大きな
「誰も呼んでねえぞ、
「そう言うなって。もう内緒の仲間同士だろ? これからちゃんと、役に立って見せるからさ」
なれなれしくジゼルに歩み寄る先を、マリリが、ふんぞり返って邪魔をする。バララエフが苦笑して、
「安心して欲しいなあ。この状況で、悪さなんかしないよ」
「……そろそろ現れると思っていました。カザロフスキー
「いちいち腹立たしい呼び方をするなっ!」
いい加減、抜き打ちを警戒しているのだろう。中庭に入る手前の
ジゼルが、軽くため息をつく。
「役に立つ、とは、どういう御提案を頂けるのでしょう」
「
「フラガナ大陸からの
「そこで、次の取引きさ」
バララエフが、指を鳴らした。
「フラガナの旧王国は、言っちゃなんだが、古代文明の
バララエフの
「俺達の
「植民地支配の
「違う、違う。俺達にとっても、自主独立の
またしても、バララエフの持ち込んだ情報は、驚くべきものだった。
ロセリア帝国は、帝国主義の覇権時代が、終わると読んだ。
フェルネラント帝国の苦し
細分化された世界は、軍事力による階層支配ではなく、民族と政治理念、経済圏の結びつきを再構築するだろう。
ジゼル、マリリ、クジロイが、鋭い目をバララエフに向ける。
理屈ではなく、本能的に危険を
「受け入れてくれれば、軍事物資も資金援助も、ロセリアが全面的に
陽気なはずのバララエフの声が、魔性の重さを感じさせた。ジゼルが、恐らく無意識に
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