14.どうなっても知らねえぞ
ラークジャートが
「小銃を
クジロイも
ラークジャートはクジロイに笑いかけて、銃列から一人、
戦場の真ん中で、二十歩ほどの距離を置いて、ラークジャートとニジュカが向かい合った。
銃列の前にクジロイが、リントが、
誰も、
「少し
「君もだ、ニジュカ!
同じ、砂色の野戦服で笑い合う。ペルジャハル帝国軍同士なのだから、当然だ。ニジュカがラークジャートの目の奥を、
「セラフィアナは元気か? ますます
「ニジュカ……」
「ラージャ。おまえが、セラフィアナと皇帝のためだけに戦ってるってのは、わかってる。頭が良いくせに
「人のことを言えた義理か。なにも考えていないくせにまっすぐで、気がつけば周囲をまとめ上げている。手に
「そう思ってくれているんなら、話が
ニジュカが一度、
「セラフィアナと皇帝を捨ててくれ。エスペランダと戦ってくれ、ラージャ!」
ニジュカの声が、風さえ
「おまえじゃなきゃ駄目なんだ! おまえになら、みんなついて行く! 皇帝じゃなく、おまえになら……」
「言うな、ニジュカ!」
ラークジャートが、振り
「私の
「
ニジュカのまっすぐな目に、ラークジャートが
ニジュカが笑って、
「おまえだけに捨てろとは言わねえさ。今ここで、俺の首を持って行け」
「ニジュカ……おまえ……」
「それで俺の部隊も全員、おまえのものだ。おまえの命令で戦って、おまえの命令で死ぬ。おまえが……俺達の王だ」
「俺達のために、セラフィアナと皇帝を殺してくれ。二人には、俺が向こうで
ラークジャートが、
ニジュカも動かない。兵士達も誰一人、動けなかった。
張りつめた
ラークジャートの
「ちょっと! いきなりなにしてくれてんのよ、この
「
「
「うるさいっ! 危うく、最短記録を更新するところだったわよっ!」
追加で
座り込むような格好で呆然とするラークジャートに、クジロイが左手を差し出した。
「ちょっとは目が覚めたかよ? この馬鹿に言い負かされてりゃ、世話ないぜ」
「……ああ……そう、だな……まったくだ……」
ラークジャートの目に、涙が浮かんだ。
「わかっている……わかっているんだ……。それでも、私には……」
「難しく考えすぎだぜ。捨てることなんかねえさ……どれだけあるか知らねえが、おまえ達が
「な……」
「おまえ、なにを……」
今度はニジュカに、右手を差し出した。無理やりひっつかむように、クジロイが二人を立ち上がらせる。
そして、この戦場にいる全員の、腹の底まで響き渡る
「
クジロイの叫びに、リントとメルル、ヴィルシャが声を重ねて、高らかに鳴いた。
少し
私達もついている、任せておけ、と、
一呼吸、
そして小さな笑い声が波のように広がって、
誰もが笑った。小銃を放り出し、肩を叩き合って笑った。
ラークジャートとニジュカが、クジロイが、ユッティとマリリが、リントとメルルとヴィルシャも、駆け集まって来た兵士達の真ん中で、互いの目を見合わせた。
笑い声はいつしか、
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