13.泡沫の夢にございます
「本当に、お
ヴィルシャから直接会話をするほどには、同調を進めていない。メルデキントを介して反応を返すこともできるが、マリリのそれは
メルルも、
「お邪魔をして申し訳ありません。少しだけ、ここで休息させて下さいませ」
ネクシャラが、
黒髪と
マリリはゆっくりと座り直し、
「ネクシャラ様……こんなことを聞くのは失礼だと、わかっているのですが……その……」
「私どもに失礼などございません。お
「こういうことが……時には、お
マリリの消え入るような声に、一呼吸置いて、ネクシャラが
「
「そんな、
「ペルジャハルは内乱が続いており、また
ネクシャラが少女のように、恥じる
「明日には
「私は……正直に言うと、怖いんです。以前、ジゼル様が私のせいで、進んで身を捨てられるようなことがあって……とても、怖かったんです。その時のことが、多分、忘れられていないんです」
苦笑がもれた。
「ごちゃごちゃなんです。戦って死ぬのは怖くないのに、こんなことは怖いだなんて……ユッティ様だって、ネクシャラ様だってこんなに堂々としてるのに、私だけ子供みたいで、情けないです」
ゆがんだマリリの
「本当なら今だって、私が身を
「……男女のことは、心の奥の、また奥にございます。傷が痛むうちに、御無理をなさるものではありません」
「ですが……」
マリリの言葉を、ネクシャラの口づけが吸い取った。
「今、
「あ、あの……私、そんな……」
「
「夢……ですか……」
もう一度、
ヴィルシャが慣れた様子で、また静かに外に出た。
今度こそ
そして人間達を
********************
あちこちに
「ごめん、やっぱり駄目だったわ。あいつ、馬鹿だもん。説得以前に、話もできやしなかったわ」
民族衣装のまま
マリリは野戦服に短刀と拳銃も装備して、メルルを肩に乗せている。ヴィルシャは一段高いところで、西の地平から近付いて来る、ラークジャートの部隊を
「後は、クジロイ
「聞いた限りじゃ、あっちはもっと駄目そうよ。こりゃいよいよ、どうにもならないかもね」
「ジゼル様は、どうお考えなのでしょう?」
「あの子は全部、承知の上よ。だから最後の
「
「
ユッティが
エスペランダ帝国貿易商会の下に完全な植民地となるか、他の
「ネクシャラさん達は
「それが……私達を待つ、と」
「戦闘が始まってから逃げるのは、危ないんだけど……まあ、しょうがないわね。なんにせよ、運命の分かれ道だし。ここを見逃す手もない、か」
「私が守ります。ユッティ様も、ネクシャラ様も……一座の人達も。必ず守ります」
「……」
「な、なんですか?」
「んー、肩の力が抜けたって言うか、やわらかくって良い感じよ! 朝帰りのことだって、ぶっちゃけ、もっと白い目で見られると思ってたわ」
「そんな」
ユッティの照れ笑いに、マリリも
「夢を見たんです。あたたかくて、優しい夢でした……。きっと、ここにいる人達みんな、同じ夢を見てたと思うんです。ですから……本当は、なんとかしてあげたいんです」
「そうね。あたしも多分、同じ気持ちだわ」
充分な距離を離れて、銃列が広がっていく。旧式小銃の射程の外だ。前列と後列の二段構えになり、さらに後方に砲が並ぶ。
反乱軍からは手の出しようがない。だが、地上の
圧倒的な射程距離と精度を持つ新式小銃による射撃も、
どこかの段階で、必ず白兵戦になる。その機をつかんだ方が、
布陣が終わり、静かになった。
その砂漠に、
「な……っ?」
ユッティが、
「なにやってんのよ、あの底抜けの馬鹿っ!」
叫んで、
小銃弾より速く、などといくわけもないが、とにかく、他にはどうしようもなかった。
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