4.おまえ次第だな
皇都エルナクラームの
庭木の手入れも、衛兵もまばらで、リントにとっては潜入するのに造作もなかった。
皇宮に至る皇都の街路は、薄汚れて、疲れ切ったような人間達が
税が重いのだ。港町の
延々と続く内乱で、売買される物の総量自体も減少しているだろう。
国民はなけなしの金で生活をつなぎ、先の見えない不安感が、生産と流通をさらに
皇宮の中も
さすがに広く、見事な
年齢も、30歳を超えてはいないように見えた。
中央廊下の突き当たりの、両開きの大扉を開く。中の広間の先、円形の
「
「ニジュカ=シンガを
「
「ラークジャート……父、ムルディーン先帝はそなたを、息子と思って頼りにしていた。それゆえ私も兄と
「恐れ多いお言葉、
「だから、もう良い……そなたは充分に
「皇帝陛下が地上に
「私は……帝国はそなたに、なにもしてやれぬ!」
「すでに
ラークジャートは
もう、かける言葉もなく見送ったハシュトルの横に、女が影のように寄り
青い
こちらの背景も情報価値がありそうだが、まずはラークジャートの動向を見極めなければならない。
軍勢を整えて
せめて騎乗する、あるいは
ラークジャートは中央廊下を抜けると、一度立ち止まり、
再び歩き出そうとした瞬間、
「よお、ラージャ。しばらく見ねえ内に将軍様とは、出世したもんじゃねえか」
「おまえ……クジロイ、か?」
ラークジャートが、呆然と目を丸くした後、涙を流さんばかりに
そして今しがたとは比べ物にならない鋭さで、
「ちょっ……おい! 今のは危なかっただろ!」
「うるさい。イスハバートがあんなことになって、セラフィアナがどれだけ心配したと思っている? 生きているのなら、なぜ
「他人の女に、
「ならば、私に出せば良いだろう」
「その女の男になんざ、もっと出せるか!」
わめくクジロイと、にらみ
「ロセリア帝国の占領軍が撃破されたと聞いて、もしかしたらと思っていた。イスハリを一つにまとめて、戦うことができたんだな」
「自慢したいところだが、俺の腕じゃねえ。俺も今じゃ、おまえと同じ
「フェルネラント帝国か。
「まあ、少なくとも、うちの大将は
「できない相談だ。ペルジャハル帝国は、エスペランダ帝国と共に
クジロイの軽口を、ラークジャートが切り捨てた。背中を向けて、一歩離れる。
「セラフィアナに会ってやってくれ。きっと喜ぶ」
「そいつは、おまえ
クジロイも頭をかきながら、背中を向けた。
「ニジュカを殺すのか?」
「殺すよ。ハシュトル陛下とセラフィアナ以外なら、私は誰だって殺す」
ラークジャートの返答は明確だった。
だが、続く言葉は、隠れたクジロイの姿を追って、
「私がニジュカを殺したら……クジロイ、君が私を……殺してくれるかい?」
クジロイは答えなかった。
ラークジャートも背中の影を振り切るように、
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