#アトリエ文芸展「鞄」

「傍ら」


何もない荷台に揺られている。

くたくたの 

過去や未来を、

くすねた飴玉の味はそれでも甘く

見上げた空は意地が悪いほど限りなく青く


いつかこの手には、

小さなポシェットだけ

棄てられずに連れていくという。


記憶の片側が溶けかかる 


ジャムクッキーとサイダーと、

秘蜜で口を封じて、

投函する

そこからなにがみえているの


ねえ、


ピクニックバックを広げ、

サンドイッチされた、

トマトとチーズをのせただけの 

日常ごとでも、


ないのかしら


小高い丘の上で、

味気なくていつもどおりの 

真昼の月でも


その日は永遠に絵になるでしょう


わたしが おとなになったときには、


紅い口紅で唾を吐いて 

着飾った黒猫が、

かけたベンチに寄り添うように。


同じくして。


詰め込まれた夢も希望も、

閉じたままでいて。

騙されないよう 奥底にしまい込み 

想像を孕ませて。羽ばたいて魅せるのでしょ


今はもう

記憶だけが確かな軌跡が のぞいている

口を封じて 大事にこの胸に抱いて いきます。

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