第290話 んがー。
「んがーっ!」
アレンはジェスチャーが上手くできないことに頭を抱えて、そのまま木のベッドへゴロンと横になった。
んージェスチャーでの会話は面倒くさいなぁ。
だけど、これに時間が掛かるのは仕方ないことか。
こういうのを中途半端にすると、後々厄介なことになったりするから。
うん、少し進歩はあったか?
ルルマとジェスチャー会話を繰り返すうちに、ルルマの喋る言葉で『はい』、『いいえ』、『あれ』、『それ』、『ある』、『ない』、『水』、『大地』、『剣』、『金』、『使う』、『現在』などなど聞き取れる言葉が出てきた。
それは進歩だろう。
ただ、発音が特徴的だから……自分から話せるかって言うと微妙だが。
はぁ、五十歳になって新しい言語を一つ覚えることになるとなぁ。
アレンがしばらく考えを巡らせながら、ベッドの上でゴロゴロしていた。
すると、少し不安げな表情を浮かべたルルマが声を掛けてくる。
『あのすみません』
「んー急いでも仕方ないな……っとそろそろ昼食か」
ルルマの不安をよそにアレンは立ち上がった。そして、ルルマと視線を合わせてニコリと笑い、続けて口を開く。
「さ、昼食にしよう」
アレンはルルマの頭をポンポンと軽く叩くと、部屋から出て行った。
アレンの後ろ姿を見送ったルルマは頭に手をあてて、俯く。
な、何とかなったのかな?
分からない。けど、笑っていた。
たぶん、大丈夫。
もう……ガルパラはいつまで風呂に入っているの?
馬鹿なの?
風呂が気持ちいいのはわかるけど。
確かに私が交渉すると言っていたけど……ガルパラも隣で話を黙って聞いていて欲しかった。
……いや、なんか面倒になりそうだから、居なくてよかった?
それよりも、また交渉することになるのかな?
けどお金も宝剣も女もいらないみたい?
ただ……私達に対して何か欲しいモノがあるようだけど、何が欲しいのか……よくわからい。
なんなんだろう?
私達としては成功するにしても失敗するにしても早く交渉を終わらせたいところなんだけど……困ったなぁ。
ルルマは、ゴロンとベッドへと横になる。
『んがー』
この日からアレンとルルマによるジェスチャーでの交渉が続くことになるのだった。
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