第280話 竜巻。
ここは灼熱の砂漠が広がる場所に岩が積まれた岩場。
「うー」
「……」
その岩場にできた日陰ではガルパラとルルマの二人と馬に似た動物とが休んでいた。
日陰で横になって休んでいる二人は疲れきった表情を浮かべている。
その表情から、彼らが目的としているオアシスを探すと言う目的が上手くいっていないことがうかがい知れた。
ガルパラが目元を手で覆って口を開く。
「休んでいる場合ではないのはわかっているんだが」
「う、体が動いてくれない。喉が渇いた……」
ルルマは懐から水筒を取り出すと蓋を開けて……水筒の中に入っているものを飲もうとした。
しかし、水筒からは数滴の水が流れ出てルルマの口内に落ちるだけでほとんど水が入っていなかった。
「残り三本の水筒だ。大切に飲もう」
ガルパラが鞄から水筒を取り出すと、ルルマに渡した。ルルマは水筒の蓋を開けて、中に入っていた水を飲もうとしたところでピタリと止まる。
「……一度戻ろう」
「ダメだ。皆、俺達の帰りを待っている」
「私、目が良いから分かる……この辺りにオアシスない。それに先言ったけど今日は大きな竜巻がいくつも見えた。魔物の姿も見えた。また迂回しないと」
「……」
「このままだと私達死ぬだけ」
「………わかった。一旦帰ろう」
少しの沈黙の後、ガルパラはコクンと小さく頷た。
それからガルパラとルルマはひと時、その場で休むと、重くなった体を引きずるように砂漠を歩き出すのだった。
アレン達が切り取られた土地と共に砂漠に飛ばされ十二日目の昼前。
「ぐあー暑いぃ」
「ぎゃあああ」
アレンが赤をカチンと音をたてて鞘にしまった。するとアレンの背後に居た蜘蛛を大きくした魔物が断末魔のような声を上げながら、バタンッと倒れた。
「それでもこの暑さに少しは慣れてきたか……ん?」
アレンが振り返り巨大な蜘蛛に視線を向けようとしたところで、何かに気付いて止まった。
そして、目を細めて遠くを見つめる。
「アレ? あの大きな竜巻……こっちに近づいてきてない?」
確かにアレンの言う通り、遠くからでもよく見えるほどに大きな竜巻があった。そして、その竜巻は徐々に大きくなっているように見えた。
「こっちに来られるのは厄介だな。んーどうしようもない規模の竜巻に見える。大切な物を持って避難するか。井戸は……良いとして。移動しようのない……切り取られた土地の木々が吹き飛んでしまう事態になるのは困るな。あぁーこんなことなら地下に住居スペースを作るのを急いだ方がよかったな。とりあえず、カトレアと……兵士達の荷物とか運び出して竜巻の動線から離れないと」
アレンはそうつぶやくや、カトレアの方へと走り出したのだった。
竜巻……いや、もはやサイクロンと呼んでいいレベルの竜巻が生活の拠点としていた切り取られた土地を掠めるように通過していた。
竜巻はゴーッと重々しい風の音を響かせながら、切り取られた土地にあった木々や暮らしていた小屋がまるで紙のように吹き飛んでいた。
少し離れた場所で……アレンとカトレアがその様子を黙ってみていた。
「……」
「……」
アレンは兵士達から集めた荷物が山ほどに詰められた……カトレアが作っていた可動できる風呂に視線を向けて呟く。
「はぁー竜巻って早く来るもんだな。遠くにあったし、もっと余裕があるかと思っていた」
「ギリギリでしたね」
「うん。しかし、こんな凄い竜巻を見るのは初めてだな」
「はい。やばいですね」
「ここまでの凄い竜巻を見てしまうと、地面を掘って住居を作った方がいいように思える」
「今後起こらないとも限りませんからね」
「だな。じゃ魔物を狩るのは……カトレアに任せることになるな。罠でも何でも使って頑張ってみてくれ」
「分かりました。一つ思ったんですが、こんなレベルの竜巻が頻繁にくると仮定したら、この地域に人が住んでいないのではと思えてしまいますね」
「うむ。コニーに捜索範囲を広げてもいまだに成果はないしな。これは海や森へと行く準備を進めるか」
「それが良いですけね。しかし、かなりの準備がいりますよね?」
「あぁ、かなり距離があるからなぁ」
「そういえば……前に話していた巨大な建造物の周りにあったと言う廃墟は徒歩で二、三日の距離にあるんですよね? まずはそちらに行ってみませんか? とりあえず、ここがどこなのか手がかりがあるかも知れませんよ?」
「……この辺りで何かしらの行動に出るべきか」
アレンとカトレアは竜巻が過ぎ去るのを待ちながら、今後のことについて話すのだった。
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