第277話 マッサージ再び。
「え、えーっと」
仰向けになったカトレアが顔を赤くした。それを隠すように両手で口元を覆った。
その様子を目にしたアレンは首を傾げて問いかける。
「どうした?」
「あの……アレン様は軍人ですがゴリラじゃなく、可愛い系のイケメン……お金だって……いや、ま、待ってください。待ってください。わ、私、お恥ずかしながら……初めてで……こ、心の準備が……」
カトレアは顔を更に赤くした。更に動揺しているのか、口ごもりながらブツブツと口走っていた。
「ん? 何を言っているんだ?」
「へ?」
「ちょっとマッサージするだけだぞ?」
「え?」
「いやいや、疲れているだろうーからマッサージをしてやると言っている」
「……むううう」
少し黙ったカトレアはムスッとした表情を浮かべて、起き上がる。そしてアレンの鼻をギュッと摘まんだ。
突然に鼻を摘ままれたアレンは戸惑いの表情を浮かべる。
「んあ、なんだよ? どうした?」
「なんでもないです。マッサージよろしくお願いします」
「どうした急に……なんか怒っている?」
「怒っていません」
「そ、そうか? うつ伏せになってくれ」
アレンに促されてカトレアはうつ伏せになった。
腕まくりをしたアレンはカトレアにマッサージを開始するのだった。
「んご……いたたっ」
「だいぶ、こっているようようだな」
「ふひ……あんっ」
「大丈夫か?」
「うご……んっんっ何だろう痛、気持ちいいような」
「そうかぁーこれは筋肉がこり固まっていて……明日から一か月くらい続けた方がいいかものなぁ(棒読み)」
「ぐぎゃ……あん。そうですか? なんか悪いようなぁあ!」
「いいから。いいから」
アレンがカトレアに三十分ほどマッサージを施した。そして、カトレアのマッサージが終わると、すぐにお酒を飲み直していた。
カトレアは体の動きを確認するように腰や腕を動かしている。
「気持ち悪いくらいに体が動きやすくなっていますね」
「そうか? それはよかったな。人によっては爪や肌を剥がされるような激痛があるとか?」
「むむむ、マッサージを行った後に……怖いこと言ってくれますね」
「ハハ、悪い悪い。まぁ酒を飲めよ」
アレンが酒瓶を手に取ると、カトレアへと突き出した。ムッとした表情を浮かべていたカトレアはアレンに突き出された酒瓶を受け取った。
そして、カトレアは酒瓶に直接口を付けてゴクゴクと飲み始める。
「ゴクゴク」
「あ、いきなり……」
「ぷはぁー。お、このワインはなかなかですね」
「そうか。それはよかった」
「あ、なんの話をしていましたかねぇ? あ……風呂の話でしたっけ?」
「あぁ、そうだな。木で作るんだっけ? しかし大工作業なんてできるのか?」
「んー素人に毛が生えたくらいですが……風呂のためです。頑張らせてください」
「ハハ、そうか? じゃ頼んだ」
「了解です。しかし、お風呂は楽しみですね」
「ここくそ暑いからな」
「暑いですね。さっぱりしたい……昼間は水風呂でもいいかも知れません」
「それも良いな。あ、そうだ。暑いと言えば……あの井戸を掘っていた時に気付いたんだが、地面を深く掘ったらずいぶんと涼しかった。コニーの捜索に時間がかかるなら地面を掘って住居とするのもありかも知れんな」
「なるほど、地下は気温が安定すると聞きます。しかし、それは」
「そう。穴を掘るのも大変だしな。そうする前にコニーが何か見つけてくれることを願いたいね」
「そう……ですね」
カトレアは苦々しい表情を浮かべた。
「おいおい、辛気臭い表情を浮かべても状況が好転する訳じゃないぞ」
「はい……そうですね。飲みましょう。飲める時に……ゴクゴク」
「ハハ、そう意味じゃないんだが。まぁ、暗くなられるよりもいいか、飲み過ぎて体壊さないようにな」
アレンとカトレアは、それから談笑しながら酒を飲み交わしたのだった。
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